| 当時はかなり込み入った事情があったらしい |
1996年に発表された「ザガート・ラプター」が、アブダビにて開催されるRMサザビーズ・オークションに出品予定。
ザガート・ラプターは、当時現役だったランボルギーニ・ディアブロをベースとし、ザガートがカスタムを施したワンオフ車両。
正確に言うならば、ベースは4WDモデルの「ディアブロVT」をモトにしていて、ただしザガート・ラプターはマグネシウム製ホイールやカーボン製ボディパネル、車体の構造変更等により、ディアブロVTに比較して300kgも軽く仕上がっている、とのこと。
当時ディアブロはモデルライフ末期に差し掛かっていたためにモデルチェンジを計画しており、次期モデルである”カント”が登場するまでの橋渡しとして、このラプターを少量にて生産する行う予定であった、とも報じられています。
ただ、このラプター発表の2年後に、フォルクスワーゲングループがランボルギーニを買収したために計画が変更され、「カント」とともにラプターも消滅し、ディアブロの後継モデルは2001年に「ムルシエラゴ」として登場することに。
なお、ラプターについて、ボディ下部のカラーを変えているところ、リアクォーターウインドウの「切り上がった」形状がミウラを連想させますが、これを意識したのは「間違いない」と考えて良さそうですね。※ミウラをデザインしたのはベルトーネ
ラプターは「コンピューターを使用してデザインされた」初期のクルマ
このラプターは、それまでのアナログな方法ではなく、ザガートが当時導入した最新のコンピューターを駆使してデザインしたもので、「フルデジタル」で設計されたクルマの先駆けの一つ。
よって、スケールモデルを制作すること無く実車の製造に映ることができたといい、そのために4ヶ月という短期間にて「実働する」コンセプトカーをつくりあげることができた、と紹介されています。
このラプターにおいて、構造上の特徴は「ボディの上半分がガバっと開くということ。
イタリアではこういった構造が好まれるようで、マセラティ・バードケージ75th(ケン・オクヤマ氏のデザイン)も同様のストラクチャーを持っていますね。
なお、ルーフはザガートの伝統に則って「ダブルバブル」。
デザイン上では、フロントからリアまで続くラップアラウンドウインドウが特徴の一つ。
このデザインは、ザガートが後にランボルギーニ・ガヤルドをベースに製造した(こちらは販売された)クルマ、「ランボルギーニ5-95ザガート」にも通じるものがありますね。
ランボルギーニ・ガヤルドをベースに、ザガートがコンセプトカー「Lamborghini 5-95 Zagato」を発表
なお、サイドシルはかなり高く、これはボディ剛性を考慮したからなのかもしれません(ディアブロはモノコックではなくチューブラーフレームを採用しているが、ルーフを切り取ったために補強をサイドに入れていると思われる)。
テールランプは「1本」という、現代のトレンドを1996年の時点ですでに再現しています。
そしてテールランプには「RAPTOR」の文字。
ザガート・ラプターのインテリアはこうなっている
そしてこちらはザガート・ラプターのインテリア。
かなりシンプルな構造を採用しています。
シートはなかなかに面白い形状。
そして表皮はアルカンターラ(当時のことだから単にモケットなのかも)。
ちなみに当時はこういった素材感、分厚いパッドが人気だったのか、ベルトーネが1998年に発表した、「ランボルギーニ・カウンタックのコンポーネントを使用したミニバン」、ベルトーネ・ジェネシス(Bertone Genesis)ランボルギーニも同様の素材感を持っていますね。
こんなコンセプトカーもあった。カウンタックのエンジンとガルウイングドアを持つミニバン「ベルトーネ・ジェネシス・ランボルギーニ」
話をザガート・ラプターに戻すと、メーターやセンターコンソールも超シンプルで、これも計量化に貢献している要素だとされています。
なお、トランスミッションは5速MTですが、シフトノブはランボルギーニ伝統の「球」ではなく細長い形状に。
センターコンソールのスイッチ類はディアブロのパーツを移植したものが多いようです。
ザガート・ラプターのエンジンは5.7リッター、出力は492馬力。
0-100km/h加速は4秒以下、最高速は320km/h以上。
ブレーキはアルコン製を採用し、ストッピングパワーを大幅に強化しているようですね。
RMサザビーズによると予想落札価格は10万ドル~14万ドル、つまり邦貨換算では1090万円~1520万円程度、と見られています。
ディアブロには「ボツ」になった後継モデルがあった
そしてディアブロの後継モデルというと、いつも思い出すのが「ランボルギーニ・カント(通称スーパーディアブロ)」。
エンジンは6リッターV12(640馬力)、後輪駆動、6速トランスミッション、最高速度は350km/h、デザインは当時ザガートに在籍していた原田則彦氏。
ラプターと時期的には「同じタイミング」で製作されたと思われ、ランボルギーニのエンブレムが取り付けられているところからも、正当な「ディアブロ後継モデル」として開発されていたのだろうと推測できますが、折悪しくこの直後に親会社となったフォルクスワーゲングループの会長、フェルディナント・ピエヒ氏が「このデザインで発売してはならぬ」と断じたためにカントはボツになり、ディアブロはその間「ディアブロ6.0」へとフェイスリフトすることでモデルライフが延長され、その後にムルシエラゴが登場しています。