| あのとき、誰もがランボルギーニ・エストーケは市販されると信じて疑わなかった |
「リーマンショック」以外にも発売が見送られた理由があったようだ
さて、ランボルギーニ悲運のコンセプトカー、「エストーケ」。
2008年のパリ・モーターショーにて発表され、市販直前まで進んだものの、その後に起きたリーマンショックにて計画そのものが白紙に戻されたという経緯を持っています。
当時のランボルギーニは「最大5モデルまで」ラインナップを拡大する計画を持っていて、というのも「5モデルを揃え、それぞれのモデルライフが5年だとすると、毎年一回いずれかのモデルが新型に切り替わる(安定した販売を確保できる)」という理想的なサイクルを維持できるとしていたわけですね。
現在ランボルギーニは「ウラカン」「ウルス」「アヴェンタドール」というラインナップを持ちますが、常に「ブランニューモデル」が投入されるという憶測が出るのはこういった計画を(以前のランボルギーニが)持っていたためであり、しかしいずれかのタイミングで段階的にこの計画が実現されることになるのかもしれません。
エストーケは親会社があまり気に入っていなかった
そして今回、ドライブトライブが「エストーケに何が起きたのか」という動画を公開していますが、そこではまた別の観点から「なぜエストーケが実現されなかったのか」について言及。
これによると、パリ・モーターショーにて(エストーケが)発表されたのち、各メディアから絶賛されたものの、(ランボルギーニの親会社である)フォルクスワーゲンの取締役会はこの発売に対して消極的で、というのも「フォルクスワーゲンとしては、グループ内での”4人乗りスーパーカー”はポルシェ・パナメーラだけで十分だと考えていた」ため。
そこへ折悪しくリーマンショックが襲ってきて「これを口実に」エストーケが切られたということになりそうです。
なお、エストーケはこの後、ランボルギーニの販売が低迷していた2010年にその計画が解凍され、衝突規制や歩行者保護法に対応した試作車を製作し、2012年までに発売する予定であったものの、しかしここでも実現せず。※2008年には2430台だった販売台数が、2010年には1302台にまで落ち込んでいる
やはりこの際もフォルクスワーゲンが最終決済を下ろさなかったと言われますが、その理由としては2012年に北京で発表された「ウルス・コンセプト」の影響がありそうです。
というのも当時SUVの人気が非常に高まっていて、さらには(ウルスが北京で発表されたという事実からも分かる通り)中国の存在感が非常に大きなものとなっており、「台数を売ることを考えると、エストーケよりも断然ウルス」という風潮になったことは容易に想像できます。
ただ、このウルスも(フォルクスワーゲンが、ポルシェ・カイエンとの競合を気にしてなかなか許可しなかったのか)実際に発売されたのはずいぶん後の2107年で、その決め手となったのは、イタリア政府が「国内の雇用の確保が期待できるため、ウルスの生産を条件に、ランボルギーニに対して税制優遇措置をオファーしたため」。
もしこれがなければ、今でもウルスは発売されないままだったのかもしれませんね。
ランボルギーニ・エストーケはこんなクルマ
ランボルギーニ・エストーケはアウディA8のアルミスペースフレームに、ランボルギーニ・ガヤルドの556馬力(563PS/414kW)V10を搭載し、7速デュアルクラッチトランスミッションを介して4輪に駆動するというパッケージングを持つクルマ。
ボディサイズは全長5,105ミリ、全幅1,990ミリ、全高1,350ミリ、そして最高速度は305km/h(190mph)を達成する、文字通りの「スーパーセダン」となる予定だった4ドアグランツーリスモです。
なお、「エストーケ」とはスペイン語で「闘牛に使用する剣」を意味し、これは「エスパーダ(これもスペイン語で”剣”)」の流れをくむ、ということを意味します(闘牛由来のネーミングはランボルギーニの伝統)。
実際にこのクルマを目にすると、画像で見るよりもずっと立体的で格好良く、「2008年にエストーケを発売し、その後にウルスを発売していたら、今のランボルギーニはまた違った勢いを持っていたのかも」と思ったり。
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上述の通りエストーケの市販化こそ実現しなかったものの、ランボルギーニは「ディレッツォーネ・コル・タウリ」なる新しい今後の計画において、2025年以降には同社初のEVを「グランツーリスモ」として発売するとも示唆しており、エストーケの魂はまだランボルギーニの中に生き続けていると考えて良さそうですね。
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