| 今ようやくその価値が正当に評価され、予想落札価格は最高で約6000万円 |
これだけの芸術性と高い品質、そして究極の走行性能を併せ持ったクルマは他にない
さて、ぼくが高く評価しているオランダの自動車メーカー「スパイカー(Spyker)」。
1997年に創業された直後から、非常に(デザイン面、エンジニアリング面において)完成度の高いクルマをリリースしていましたが、その後しばらくして経営危機を迎えるも外部からの出資を得て復活、そして2012年と2020年にも同様のケースを経験しています。
そういった不安定な状況にあるからか、数々のコンセプトカーを発表するもなかなか市販するには及ばず、現在も休眠状態にあると言われ、いいクルマを作るだけにちょっと残念でもありますね。
スパイカーの社是は「Nulla tenaci invia est via(やりとおせば、必ず道は開ける)」
参考までに、1997年に創業したのは「二代目」スパイカーで、実は100年ほど前にも「初代スパイカー」が存在しています。
この初代スパイカーは100年も前に「6気筒エンジン、全輪駆動、4輪独立ブレーキ」という、20世紀初頭としてはそうとうに画期的なハイスペックマシンを製造しており、1905年に開催された北京-パリ1万マイルレースなど、当時の最も過酷なレースで活躍したことで知られています(2016年に発表されたコンセプトカー、D12 Peking to Parisはこのレースへのオマージュでもある)。
そして現代に蘇ったのは二代目となるスパイカーであり、そのカンパニースローガンは「Nulla tenaci invia est via(やりとおせば、必ず道は開ける)」。
上述のとおり創業は1997年ですが、今回オークションに出品されるC8スパイダーは2000年にイギリスのバーミンガム・モーターショーでデビューしています。
なお、ちょっと面白いのは、そのルーツを示すためかエンブレムに「プロペラ」を用いていること。
このプロペラは至るところに採用され、前後エンブレムの他にオイルフィラーキャップや・・・。
ステアリングホイール、さらに・・・。
ホイールのスポークにも(2000年当時、ここまでブランディングが徹底されたクルマは他に類を見ない)。
なお、ホイールはセンターロック、そしてブレーキシステムはAPレーシング製という本格派。
C8スパイカーの中身は「レーシングカー」
そしてこのC8スパイカーは優雅な外観を持ちつつも、その中身はアルミ製スペースフレームに加えインボード式サスペンションを持つなど「ほぼレーシングカー」。
ペダルセットにもレーシングカーライクな高い剛性を持つビレットパーツが採用されています。
車体ミッドに搭載されるのは400馬力を発生するアウディ製V8エンジン。
トランスミッションはゲトラグ製の6速マニュアルです。
スパイカーの持つ芸術性は比類ない
そしてここまで見ておわかりのとおり、スパイカーのクルマは非常に高い芸術性を持っており、おそらくはそれが故に高価になってしまってなかなか売れず、そしてその高価な値付けをもってしても十分な利益を出せなかったのかもしれません。
たとえばルームミラーのステーひとつとっても完全にオーバークオリティな品質と芸術性を持っており、ミラーハウジングも「レザー張り」という豪華さです。
ドアミラーもイタリアの家具メーカーが発売するライトスタンドのような優雅さ。
テールパイプには「SPYKER」の文字、そしてスローガンである「Nulla tenaci invia est via」が刻まれます。
インテリアはレトロな雰囲気を持っており・・・。
パネルにはマシン仕上げの文様が刻まれます。
ステアリングコラム、ウインカーやワイパーレバーもまた削り出しの重厚な質感を持つパーツ。
メーターは航空機のそれを模しており、文字盤はアイボリー、バックライトはグリーンです。
ペダルボックス同様にシフトレバーのリンケージも「むき出し」。
カーペットにはキルティング仕上げが施されたレザーが用いられており、「これでもか」というくらいの独自の世界観が演出されているようですね。
ドアは「バタフライ」、そしてフロントフードはクラムシェル。
なお、スパイカーC8スパイダーは121台しか製造されておらず、しかもこの「イエローの外装とブラック内装」を持つのはわずか4台。
上述のルームミラーやオイルフィラーキャップをオプションにて装着しており、そのほかにも様々な装備が追加されている、とのこと。
ちなみにフロントウインドウのトップは「フレームレス」となっており、スピードスター的な雰囲気が感じられます。
残念ながら新車時には期待したほどのセールスを記録できなかったものの、現在では「時代がスパイカーに追いついた」といった感もあり、最高落札価格は6000万円程度だと見積もられていて、そのこだわりや高い品質がようやく時を経て評価されたということなのかもしれませんね。
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