| ただしこのロールス・ロイスは自動車ではなく航空宇宙産業のほうのロールス・ロイス |
ちなみにこのロールス・ロイスはジェットエンジンのシェアでは世界二位
さて、ロールスロイスとヒョンデとがパートナーシップ契約を締結した、と発表。
あまりに異色のコラボレーションであり、「えっ」という感じではありますが、このロールスロイスは自動車を製造するロールスロイス・モーターカーズとは(元は一緒ではありますが)全く別資本であるところには要注意。
ちなみに「もとは同じでも」現在は異なる会社となっている例としては、ほかに「(自動車の)ブガッティ・オトモビルと(航空機パーツメーカーの)ブガッティ」、「(自動車の)アウトモビリ・ランボルギーニと(トラクターの)ランボルギーニ」といったものもありますね。
今回ヒョンデとの提携を行ったロールス・ロイスとは?
そこで今回ヒョンデと提携を行った方のロールス・ロイスについて、もともとは自動車のほうのロールス・ロイスと同じルーツを持っていて、1906年にイギリスにて設立された一つの会社「ロールス・ロイス」に端を発します。
このロールス・ロイスは自動車用エンジンや航空機用エンジンを製造していますが、両者とも非常に信頼性が高く、レシプロエンジンだとイーグルVIIIエンジン(20.3リッター/350馬力、V12)が非常に有名で、1919年にはヴィッカース・ビミー(Vickers Vimy)爆撃機に搭載され、航空機史上初の大西洋横断無着陸飛行を成功させています(パイロットはジョン・オールコックとアーサー・ブラウン)。
ちなみにこの大西洋横断無着陸飛行においては、計器類はじめ爆撃機のあちこちが壊れたとされ、そんな中でも唯一壊れなかったのが「ロールス・ロイス製のエンジン」だったとも。
その後もロールス・ロイスはジェットエンジンの製造によって好調に業績を伸ばすことになるものの、世界初の3軸ジェットエンジン「RB211」の開発費がかさんだため1971年に経営破綻してしまい、しかしすでにジェットエンジン製造では重要な位置を占めていたロールス・ロイス社を倒産させると国益を損なうということからかmイギリス政府が国営化してこれを存続させています(他に買収されると軍事機密が漏れるという判断もあったのだと思う)。
その後1973年に英国政府はロールス・ロイスの自動車部門をヴィッカースに売却し、そしてヴィッカースがフォルクスワーゲンインロールス・ロイスを売却するものの、この際にBMWとフォルクスワーゲンとの間でイザコザが生じてしまい、(ロールス・ロイスが保有していた)ベントレーはフォルクスワーゲンに、そしてロールス・ロイスはBMWへと渡っています。
ただ、それまでロールス・ロイスが所有していた設備などはフォルクスワーゲンの手に渡ることとなり、よってBMWが設立したのが新しい「ロールス・ロイス・モーター・カーズ」。
一方、英国政府が保有していた「自動車以外の」ロールス・ロイスは1988年に民営化され、現在でもジェットエンジンや船舶用エンジン、航行システムの製造においては非常に重要なポジションを占める航空宇宙・防衛関連多国籍企業にまで成長していて、とくに航空機エンジンでは世界二位のシェアを誇ります(キャセイパシフィックの所有する機体の多くにはロールス・ロイス製エンジンが積まれている)。
ヒョンデとロールス・ロイスは一体何を?
そこで今回のロールス・ロイスとヒョンデとの提携についてですが、その目的は「全電気推進技術と水素燃料電池技術を航空機市場に導入すること」。
ヒョンデは水素技術のエキスパートであり、大きな産業化能力の可能性を(水素に)見出していますが、まずはロールス・ロイスの助けを得て、ヒョンデの展開する「アドバンスド・エア・モビリティ部門」向けの新しい動力システムを開発するとアナウンスされており、2025年には燃料電池電気飛行機の実証実験を行う、とも。※2028年には実用化すると述べている
ロールス・ロイスのロブ・ワトソン氏によれば、「ヒョンデグループとの提携は、航空宇宙と自動車の両分野で培われたそれぞれの能力を活用し、新しい世界を構築する貴重な機会を提供するものです。先進的なエアモビリティ市場は大きな商業的可能性を秘めており、この協力関係はエアモビリティ市場をリードするという我々の共同の野望をサポートするものとなります」とコメント。
ちなみに「空」を目指す自動車メーカーは少なくはなく、ポルシェも航空産業に対して強い興味を持っているとも言われ、そのほかメルセデス・ベンツもエアタクシー会社に出資しており、トヨタも「空」に未来を見ていると報じられています(一方、アウディは早々にエアタクシー事業から撤退した)。
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