| 今後、ポルシェがどう判断するのかはちょっとした見ものだ |
空飛ぶクルマは自社のみではどうやっても実現できず、法規やインフラに関わる課題も多い
さて、「空」に対して強い興味を持つとされるポルシェ。
今回、ポルシェの戦略調査機関であるポルシェコンサルティングが、空飛ぶタクシービジネスの状況に関するレポートを発表し、「魅力的な産業ではあるが、活動するには多額の資金と忍耐が必要」だと結論づけています。※画像はスター・ウォーズ/ルーカス・フィルムとのコラボプロジェクトより
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1.1兆円以上の初期投資が必要
ポルシェコンサルティングのシニアパートナーであり、この調査の著者でもあるグレゴール・グランドル氏によると、「垂直移動は儲かるニッチな分野に発展する可能性がある。しかし、エアタクシーを誰もが利用できるようにするためには、粘り強さと潤沢な資金、そして責任感を持った勇気あるパイオニアが必要で、安全性と社会的受容性も大きな役割を果たすことになる」とコメント。
現在多くの自動車メーカーが目指しているのは「長距離」ではなく、街中とくに都市部の渋滞を避けて空中を移動するという「エアタクシー」であり、つまり市街地の上を飛ぶということに。
よって、これには「法的な問題」「安全性」が大きく絡むことになり、そもそも、その国や地域がNOといえば絶対的にNO。
そしてもし認可されたとしても、事故が起きれば多額の賠償問題に発展するのは間違いなく、この事故が複数回起きればやがて飛行禁止となりそうです。
つまりはビジネスとして成り立つかどうかわからない、そして一瞬で今までの投資や利益がパーになってしまうビジネスに対してお金を出す勇気と根性があるのかということだと思われます。
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将来的に市場は拡大規模にあるようだが
そして同レポートによると、このエアタクシーの市場は2035年までに320億ドルに達すると言われ、しかしそこまでには少なくとも200億ドル、さらに商業飛行が始まるまでに100億ドルの投資が必要だとされ、この数字を見る限りでは「旨味がない」ようにも。
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加えて、エアタクシーが産業として成立するには世界の60もの都市に1,000〜2,500の離着陸場が必要とされ、これらの建設費用、機体の維持管理費用、パイロット(さすがに無人は無理だろう)の雇用にかかるコスト等を考慮するに、とても現実的ではなさそう。
そして動力源は「エレクトリック」になるかと思われますが、そうなるとパワーが限られ、つまりは運べる人数も多くはなく、これまでに発表された各社のコンセプトだとせいぜい1~2人+荷物といった程度で、家族での移動もちょっと難しいかと思います。
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つまり4人家族だと「2機必要」となる可能性もあって、おそらくは相当に高額になるであろう運賃をどれだけの家族が支払うかという疑問も。
さらに、視界不良、雨天荒天、強風時などは「飛ばない」可能性が高く、そうなると輸送機関としての信頼性(アテにできない)の問題も生じることになり、これが自動車にかわる移動手段になるというのはちょっと考えにくそう。
加えて「エアタクシーの空港にゆくために時間を使う」のは本末転倒でもあり、エアタクシーの空港は(郊外ではなく)都市部に建設しないと意味はなく、加えて公共交通機関との乗り入れも必須だとは思われます。
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現在はポルシェのみならずヒュンダイ、キャデラック、メルセデス・ベンツなどがこういった「空飛ぶ車」に対して興味を示していますが、この実現については様々な認可という「自分たちではどうにもならない」問題が絡んでおり、そのほかインフラなど「技術以外の」課題が山積していて、これらをすべて解決せねば成功はもちろん実用化もできない、ということになりますね。
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