| ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーはクーペよりも過激だ |
さて、ランボルギーニ大阪さんの厚意にて、ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーに試乗。
「ペルフォルマンテ」シリーズはウラカンの高性能シリーズですが、”クーペ”モデルの「ウラカン・ペルフォルマンテは昨年に発売されており、ポルシェ911GT2RSに破られはしたものの、クーペ版は「ニュルブルクリンク最速」タイムを叩き出したことは記憶に新しいかと思います。
そして今回登場したのが”オープン”モデルの「ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダー」。
そのクーペ版同様、アクティブエアロデバイス「ALA」を持つウラカンの高性能モデルで、クーペと同じく世界最速の一角をなす一台ということになります。
ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーのスペックは?
エンジンは自然吸気5.2リッターV10、出力は640馬力。
ベースとなる「ウラカン・スパイダー」の30馬力増しとなり、重量はウラカン・スパイダーに比較してマイナス35キロ。
その結果0-100キロ加速は3.4秒から3.1秒へと短縮されていますが、これはウラカン・ペルフォルマンテ・クーペの0.2秒遅れです。
ウラカン・ペルフォルマンテ・クーペ同様にトランスミッション(デュアルクラッチ)に再キャリブレーションが施されて変速スピードが速くなり、アンチロールバーも強化され、パワーステアリング/トラクションコントロール/4WDシステムも再調整済み。
ドライブモード(ANIMA)はこれまでと同じくストラーダ、スポーツ、コルサの3種。
日本での価格は35,613,532円に設定され、ウラカンでは「もっとも高価なモデル」です。
↓試乗車はビアンコ・イカルス、ヴェルデ・マンティスの二台
ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーの外観を見てみよう
ウラカン・スパイダーの外観は基本的にクーペと同じで、単純に「屋根がない(ソフトトップ)」だけ。
前後バンパーや最大の特徴である「ALA」も同一となっています。
ウラカンとの相違は前後バンパー、サイドステップとドアミラーが黒いこと、ホイール、サイドのイタリアントリコローレ、リアウイングといったところ。
ただしそれらの与える印象はウラカンとは全く異なるもので、とくに淡色系や明るい色のボディだと、これらブラックパーツやフォージドコンポジットとのコントラストが強く見え、いっそうエキゾチックな印象を受けることに。
とくにサイドステップをブラック化することによって視覚的に発生する「くびれ」はリアフェンダーをより広く見せ、まさにこれぞ「スーパーカー」という印象です。
ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーの内装を見てみよう
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーのインテリアは基本的にクーペモデルと共通。
単に「屋根がなく」「トップの開閉に必要な必要なスペースを確保するためにシート後方がクーペとちょっと違う」といったところです。
そして、ベースとなるウラカンとの差異は「フォージドコンポジットの使用」、そしてアルカンターラの採用にはじまり、カーボン製のバケットシートまで。
このカーボンシートは特筆モノで、カーボン製のシェル(というか板)に「なけなしのクッション」を貼っただけという超スパルタンなもの。
このシートは、ほぼレーシングカーのそれと言ってよく、正直、一瞬座ることがためらわれるほどです(さすがに日常の使用には適していないようで、ランボルギーニは無償で普通のシートに交換してくれる)。
なお、メーターの表示はウラカンとは異なり、ドライブモード「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」それぞれにおいて差異があります。
「ストラーダ」ではギアを示す数字が「白抜き」に、「スポーツ」ではメーターのカラーがイエローベースに、そして「コルサ」では完全にペルフォルマンテ専用にデザインされたグラフィックに。
ウラカン・ペルフォルマンテにインテリアについてはこちらに詳しくまとめており、参考にしていただければと思います。
ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーで走ってみよう
さて、ここで早速ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーで走ってみることに。
まずは乗り込んでドアを閉めますが、なんとなくドアのタッチ、音ともに通常のウラカンよりもソリッドな感じ。
もしかするとオープン化によってなされた補強の関係かもしれません。
エンジンスタートはセンターコンソールにあるフラップ(アイアンマンをイメージしたと言われている)を開き、その下にあるプッシュ式スターターを押すことで行いますが、フラップ付きのスターターを持つクルマはさほど多くなく、ほかに思い出せるのはメルセデス・ベンツSLSマクラーレンくらい。
このスターターはとにかく気分が盛り上がることこの上ないと考えていますが、それ以上に盛り上がるのがエンジン音とエキゾーストサウンド。
標準仕様のウラカンに比較しても一段と大きく太く、そして低い音ですね。
早速走り出してみる
右のパドルを引いてギアを1速に入れ、パーキングブレーキを解除していざスタート。
ウラカンのトランスミッションはデュアルクラッチで、そしてクリープあるため発進はかなり容易です。
このクルマがまさか640馬力もあるとは思えないほどのあっさりしたスタートですが、これを可能にした最近の技術には驚かされるばかり。
サウンドはクーペよりも大きく聞こえる?
走行しはじめてすぐに気づくのはエキゾーストサウンドの大きさ。
ウラカン・ペルフォルマンテ・クーペに比較しても大きいと感じられ、どうやらそれは背後の開け放ったウインドウ(リアウインドウは昇降できる)から入る音のようで、これは”スパイダー”が”クーペ”に勝る部分ですね。※この開閉でけっこう音質が変わる。ずっと開けて走りたい
ちょっと慣れてきたところで加速やシフトダウンを試みると、やはり心揺さぶられるのはそのサウンドとレスポンス。
↓ウラカン・ペルフォルマンテのサウンドはこちらで視聴が可能
もはやフェラーリやマクラーレン、アストンマーティンといったライバルたちはほとんどターボエンジンへと移行しており、それらに試乗してみると「ターボラグの小ささ」が体感できるのも事実。
しかしこうやって改めて大排気量自然吸気エンジンを持つウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーに乗ってみると、その(ターボエンジンでは実現できない)カミソリのようなレスポンスには驚かされることになり、そしてどの回転域からでも「踏めば前に出る」ダイレクトさには改めて衝撃を受けることに。
近年のターボエンジンはレスポンスにおいてNAと遜色ないのではという印象も持っていたものの、「やっぱりターボエンジンはどうしてもターボラグから逃れることはできない」と実感させられます。
なお、同じく5.2リッターV10エンジンを持つ車としてはアウディR8 V10プラス、ウラカン/ウラカンRWDがありますが、ウラカン・ペルフォルマンテのエンジンはこれらとは完全にレスポンスが異なるもので、そしてそのシャープさは比類なく、ターボラグゼロを謳い、「完璧」と評されたフェラーリのV8ターボエンジンよりも優れているんじゃないか、という感じ。
ハンドリングは正確無比
ハンドリングについても正確そのもので、4WDということもあって接地性も抜群。
ウラカン・ペルフォルマンテはアクセルを開けるとどこまでも矢のようにまっすぐ飛んでゆきますが、一般的なミドシップスポーツのように「フロントが浮く」こともなく、とにかく怒涛の加速を見せるのも特徴です。
4WD化における重量増加は「わずか31kg」で、31kgでこの安定性が手に入るのか、というのも驚きですね。
ミドシップなのにフロントの接地性が高く、4WDなのにフロントの重さを感じさせない回頭性を持ち、それでいてライトウエイトスポーツのような軽快かつ俊敏な身のこなしを見せるのがウラカン・ペルフォルマンテですが、いちばん評価すべきは、ぼくのような素人でもその性能の多くを無理なく引き出せる(であろう)こと。
世界最高峰の性能を持つのに街なかでの信号停止/そこからの発進にはまった苦労はなく(本当にこれだけ取ると普通のクルマと同じように扱える)、アクセルをガツン踏んでも、ホイールスピンによって車体が左右に振られることもなく、アクセルのオン/オフで姿勢が変化することもなく。
加速においても自然吸気ならではの「ドラマティックに盛り上がってゆく」もので、ターボのように突然爆発力を見せるものではなく、アクセルの踏み込み量に対して予期した通りの反応を見せてくれます。
これは非常に大事なところで、アクセルを踏み込んだら「思ったより」加速するクルマもあり、しかし「思ったより加速する」のはけしていいことじゃない、とぼくは考えているわけですね。
ここはランボルギーニがもっとも「こだわった」部分だと思われ、ランボルギーニが「(排ガス規制クリアのため)ダウンサイジングターボ化するくらいならハイブリッドを選ぶ」と声高に主張している意味を体感できるところでもあります。
ウラカン・ペルフォルマンテは、まさにアクセルを踏んだらそのぶんだけ加速して、ステアリングホイールを切ったらそのぶんだけ曲がって、ブレーキを踏んだらそのぶんだけ止まる。
こういった「ふつうのことが普通に」できるクルマは非常に少なく、ぼくの知る限りでは、ほかだとやっぱりポルシェとフェラーリくらいで、その中でもウラカン・ペルフォルマンテと同等というとポルシェ911GT3RS、フェラーリ458スペチアーレ(これはもう試乗してずいぶんたつのに、今でもハンドリングNo.1だと考えている)のみ。
意外と足回りは柔らかく感じる
ちなみに足回りは全く硬さを感じないのが非常に不思議。
実際には相当に硬く締め上げられているはずで、実際にロールやピッチもほぼ感じさせないほどの強靭さを持っているものの、このクルマをもって「乗り心地が悪い」と表現するのはかなり違和感があり、(経験上だと)むしろぼくとしてはBMW M4のほうが乗り心地が悪いと思えるほど。
ウラカンはその車体サイズ、重量、ホイールベースに比べると、かなり直径(外径)の大きなタイヤを持っていて、それも大きな関係がある、と考えています。
やっぱりウラカンは乗りやすいクルマ
乗り心地の話が出たついでに「乗りやすさ」について触れると、ウラカン・ペルフォルマンテは望外に運転のしやすいスーパーカー。
この外観で「運転がしやすい」というのはなかなか信じてもらえないとは思いますが、それは低くて見切りのいいダッシュボード(ポルシェ911/718より前は見やすい)、フロントサイドの三角窓による右左折時の死角の少なさ(レンジローバー・イヴォークより視認性はいい)、いったん前に出てから左右に張り出したドアミラーの視認性(フェンダーミラーのような感じで、より広い範囲を映し出せ、かつ運転席から大きく視線を移さずに後方を確認できる)など。
いったんシートに収まってしまえば、前に見えるもの、そしてミラーだけを頼りに運転することができ、姿勢を変えることもなく2つのペダルと2枚のパドル、そしてステアリングホイールだけに集中すればよく、余計なことは気にせずに運転だけに集中できるクルマでもありますね(ただし後ろは全くと言っていいほど見えないので、それを考慮した周囲の確認や、自分の周囲にいるクルマの動向は把握しておく必要がある)。
なお、これだけの轟音や締め上げられた足回り、そしておそらく強固なエンジンマウントを持つであろうにもかかわらず、車内で感じられる振動は「ほとんどない」のも特徴。
おおよそスーパーカーは停車時に相当な振動を感じることになりますが、ウラカン・ペルフォルマンテはその振動がかなり低いレベルに抑えられています。
エンジンの振動が伝わらないのに車内には勇ましいサウンドが響くので、「このサウンドはスピーカーから流しているフェイク音じゃないのか」と思ってしまうほどですが、もちろんそんなことはなく、振動含む不快要素を取り除き、純粋なエンジン/エキゾーストサウンドのみを届けてくれているのがウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダー(ランボルギーニはそのためにアコースティックルームを新しく設置している)。
これはブッシュを柔らかくして実現しているのではなく、「他の方法」であるのは間違いなさそう。
というのもウラカン・ペルフォルマンテではエンジン回転数の上下によって車体が慣性の影響を受けていないためで、ブッシュが柔らかければ振動を吸収できる一方、エンジン回転数差(とくに高回転からの回転落ち)によってエンジン本体が急激にそれまでの出直軸回転方向とは逆に動き、それが車体の姿勢を乱すため。
よってポルシェ(AMGなどほかメーカーも)はこれを解消するためにエンジンマウントの硬さをドライブモードに合わせて変化させていますが、ランボルギーニも何らかの方法で快適性とダイレクトさとの両立を図っているようですね。※レーシングカーは当然ブッシュを介さない「ダイレクト(ストレス)」マウントで、フェラーリF50もストレスマウント
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテの総合的な印象は?
ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーについて動力性能的な印象としては、一言でいえば「レーシングカート」。
それだけロールやピッチが感じられず、両手は前輪に、右足は駆動輪に直結したようなダイレクトな印象を持っていますが、これは1000ccあたりのスーパースポーツバイクだ、と言い換えても良さそう。
以前にポルシェ・ケイマンSを「600ccくらいのスポーツバイク」、アウディTTを「250ccのビッグスクーター」と評したことがありますが、ウラカン・ペルフォルマンテは1000cc、もしくはそれ以上のスーパースポーツバイクのようだ、思います。
とにかく「ピュア」という言葉がこれほど当てはまるであろうクルマも少なく、ウラカンの潜在能力を高みに引き上げたという意味では、このウラカン”ペルフォルマンテ”こそがウラカンの真の姿だといえそう。
反面、バイブレーション、ハーシュネスは極めて高いレベルで抑えられており、日常性を残っていないのもウラカン・ペルフォルマンテならでは。
ピュアなだけ、スパルタンなだけのクルマは多々あれど、ウラカンは様々な要素を高い次元でバランスさせているクルマ、ということになります。
加えて「スパイダー」はリアウインドウの開放、トップを開け放つことによってさらに純粋なサウンドを聞くことができ、(クーペよりも)スパイダーを積極的に選択したい、と思わせるほど。
やっぱりスーパースポーツはクラッチレスMTでないと扱えない領域に
なお、今回改めて感じたのはデュアルクラッチの恩恵。
これだけのパワーがあるクルマであれば、マニュアル・トランスミッションだと「扱えない」ことになるのは明白。
このレベルの速さを持つクルマであれば、手動にてシフトチェンジを行なっている間に「思ったよりもずっと先にクルマが進んで」ラインを外してしまうのは間違いありませんが、ウラカン・ペルフォルマンテだと狙ったラインをビタリとトレースできることになり、やはり「スーパースポーツはデュアルクラッチ(シングルクラッチでもいい。とにかくクラッチレスMT)でないと扱えない」と感じた次第です。
もちろんマニュアル・トランスミッションにはその良さがありますが、もっとアンダーパワーなクルマでないと楽しめない、とも考えています(ルノー・メガーヌRS、シビック・タイプRくらいがちょうどいいバランスだと思う)。
試乗をお願いしたのはランボルギーニ大阪さん
今回、ウラカン・ペナル・スパイダーの試乗をお願いしたのはランボルギーニ大阪さん。
ぼくがガヤルド、ウラカンを購入したディーラーでもあり、セールスさん、サービス工場の方々ともに大変お世話になり、おかげさまで何のトラブルもなく快適にランボルギーニに乗ることができ、大変感謝しています。
この場を借りてお礼申し上げます。