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いい腕時計の見分け方を紹介する(3)。「ベルト」「バックル」「ローターの精度」

2018/10/23

| 腕時計は「こだわり」の集まりだ。言い換えればこだわっていない腕時計はいい腕時計ではない |

さて、これまでにも数編公開してきた「いい腕時計の見分け方」。
これまでは「ケースのポリッシュ」「ケースのエッジ」「針」「プッシュボタン/リューズ」「針の処理」「文字盤の目盛り」を紹介してきましたが、今回は「ストラップ」「バックル」「ローターの回転」について述べてみたいと思います。

ストラップはバカにはできない

腕時計マニアはなにかとムーブメントにこだわりがちですが、ぼくの中では腕時計に占めるムーブメントの重要性はさほど大きくなく、ストラップや文字盤、針など「トータルでの仕上げ」が重要ではないかと考えています。

そこでストラップ(ベルト/ブレスレット)ですが、まずはこれについて考えてみましょう。
ぼくが「優れる」と考えるベルトを持つのはやはりロレックス。
コマとコマの間隔が小さく、(ベルトが垂れ下がる状態で)腕時計を持って振ってみてもブレスレットの遊びが音を立てることはなく、とにかく非常に高い精度をもって製造され、組み立てられていることがわかります。

かつ、「ヌルリ」とした滑らかな動き(ポルシェのマニュアル・トランスミッションの感触が「スプーンではちみつをかきまぜるような」と表現されたのに似ている)もまた緻密なつくりを感じさせるもの。

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そのほか、シャネルも「なかなか」の精度を持っていますね。

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逆に精度がイマイチなのはセイコー、ブライトリング、オメガ。
これらはコマとコマとの隙間が大きく、かつ遊びが大きいので、腕時計を振ってみるとチャラチャラと音を立てることも。

とくにセイコー・アストロンの場合は、これを腕にはめてマニュアル・トランスミッションを操作すると、ちょっと(同乗者に対して)恥ずかしくなるほど低級な音が出ます。

加えて、アストロンのベルトの横にはピンが打ち込まれている穴が見えますが、これも30万円を超える腕時計としては「あるまじき」仕上げ。
これは1万円程度の腕時計であればまだ許せるものの、この価格では到底許容できるものではなく、著しく美しさ、芸術性を欠いている、と考えています。

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バックルも腕時計メーカーの考え方がよく表現される部分

そしてバックルもそのブランドの考え方がよくでるパーツで、ウブロ はこんな感じで、「HUBLOTの「H」を模したビス、そしてHUBLOT文字が刻印され、文字には墨入れが施されます。

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オーデマピゲはこんな感じ。
「AP」の文字、そしてビシっとしたエッジ、バックルとピンとがツライチに、そしてチリの小ささがわかりますが、当然「相当な工作精度」を持っていないと実現できない仕上げです。

これに比べると、やはりウブロ は「エッジやチリがちょっと甘い」ということがわかります。

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ロレックスのバックルも「いかにも強固」なことが視覚的にわかり、操作した時の感触も「微塵の不安も感じさせない」もの。

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爪を入れる部分には「切り欠き」も。
こういった細かな心遣いができるブランドはいいブランドだ、と思います。

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シャネルは「バックルレス」。
カルティエにも多くみられる仕上げですが、この辺りはファッションブランドやジュエラーの面目躍如ということになりそう。

なお、同じバックルレスでも、カルティエは「(指先の)爪」を使う必要がありますが、シャネルは爪を使わずに着脱可能。
これは「マニキュアを塗った指でも、マニキュアを剥がすことなく」操作できるように配慮したためだそうで、そこまで考えて作られているのももちろん「いい腕時計」だと考えています。
腕時計本来の機能とは関係がないものの、どこかにそのブランドならではの「こだわり」を見せるのは必要なことなのかもしれません。

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そしてセイコーですが、「これはないだろう」というバックル。
繰り返しですが、30万円を超える腕時計でこのバックルを採用しているというのは逆に驚きでしかなく、セイコーはブレスレットやバックルを軽視している、ということがわかります。

こんな感じで、バックルやブレスレットにどれだけ力を入れているか、ということもいい腕時計かそうでないかを判断する一つの基準だと考えているのですね。

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ちなみに香港は腕時計の製造元としても有名で、最近だとクオーツだけではなく機械式腕時計も手がけています。

そして、複数大手ウォッチメゾンの「下請け」をしている場合もあって目が肥えているのか、香港製の「安物」機械式腕時計は「高く見せる」すべを心得ており、これまでにぼくが公開してきたようなポイントをきっちり抑えている場合も。

ただしムーブメントの精度は保証できませんが、「見た目の仕上げ」だけについては数十万円クラスに見えて、しかし実は1〜2万円くらい、というセイコーの「逆パターン」が存在するのも面白いところ。



ローターの巻き上げは意外と気になる

そしてぼくが気にするのが(自動巻の場合)ローターの巻き上げ。
ひとつは、勢いよくローターを回した時に、腕時計がブレるほどローターの遠心力に「持ってゆかれる(腕時計がブルブル震える)」もの。

オメガ、ブライトリング、ベル&ロスにありがちですが、正直これはあまり気分の良いものではなく、ローターとケースとのバランスの悪さ、ローターの偏心(さすがにこれはないと思われるが、回転軸が腕時計の中心にないと言えるかも)を感じさせ、ちょっと気分をそがれるところでもありますね。

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逆にそういった「ブレ」を感じさせないのはオーデマピゲ、オアテックフィリップ、ロジェ・デュブイ(マイクロローター採用だと当然ローターの動きは感じられない)、リシャール・ミル、ロレックス。

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そしてもうひとつローターについて述べておかねばならないのが、ローターが回る時の「音」。
ローターを回転させた時にゼンマイを巻き上げる以外の音、つまりどこかと干渉するような「シャリシャリ」という音がする腕時計もいくつか。

以前に「回転部分のクリアランスが小さい腕時計はいい腕時計である」と記載しましたが、回転部分はそのメゾンの技術が問われるところで、この部分の精度が低いと「引きずり」が生じ、どこかとの干渉によってこういった音が出ることがあります。

次回は、腕時計に使用されるスクリュー(ねじ)や文字盤等について触れてみたいと思います。

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