| ロレックスは中古相場に応じた価格改定を行ってくる傾向がある |
さて、消費税増税に伴い2019年10月1日に値上げを行ったロレックスですが、なんと2020年1月1日からまた値上げ。
しかも今回は3%~7%くらいの値上げを行うことになり、当然ながらこれにつられて中古相場も上がることになりそう。
なお、ロレックスが値上げを行う理由としては、当然ですが「利益を取りたいから」。
ただし、一般的には利益を得るために値上げしてしまうと「売れなくなる」危険性があり、よっていずれのブランドも「値上げしても売れる」下地を作る必要があるわけですね。
どうすればモノは高く売れるのか
その下地とはつまり「高くても買いたくなる」理由。
この理由もブランドによって様々で、たとえば「自分のあこがれの有名人が持っているから」というのもそのひとつ。
ウブロやリシャール・ミルは「アンバサダー」を活用し、新しいブランドながらも「セレブが身につける腕時計」という印象を演出することによって高い価格設定を可能としているわけです(これだけが理由ではなく、製品自体にも価格を正当化できるだけの排他性をもたせている)。
ただ、ロレックスの場合はそういった「アンバサダー」を活用する例は稀で、ウブロ、リシャール・ミル、オメガ、タグ・ホイヤー、ロジェ・デュブイ等のように個人や他企業との”パートナーシップ”契約を結ぶことも非常に少なく、ほかの腕時計メゾンとは別の「価格向上政策」を採用しているようです。
なぜデイトナは高額で取引されるのか
そしてロレックスが採用した手法は「中古相場の高値維持」。
現在ロレックスのスポーツモデルはもれなく「定価を超えた」中古相場を形成していて、定価ではまず買えないわけですね。
これを実現したのは様々な要因があるものの、やはりデイトナの人気化がことの発端だと言えそう。
現在デイトナは「定価の倍」以上の価格で取引されていますが、デイトナの中古相場高等によって他スポーツモデルの価格もつられて上昇しています。
そしてなぜデイトナの人気が出たかというと「ポール・ニューマン」と呼ばれるデイトナ(Ref.6263)の取引価格が高騰したからだと言われていて、この価格高騰については「絵画」「ヴィンテージカー」同様に投機商品として扱われたから。
実際にポール・ニューマンが身につけたデイトナもたびたびオークションに出品され、その都度価格を上げているため、これを見た投資家やコレクターが「ほかのポール・ニューマン・ダイヤルも価格が上がる」と判断して買い占めたということになります。
まさにバブルとしかいいようがありませんが、人気が人気を呼ぶことでロレックスの価値が上がり、まずは「ポール・ニューマン本人が所有していたデイトナ」の価値が上がり、その次は「ポール・ニューマンが身につけていたのと同じデイトナの価値が上がり」、さらに「デイトナと名が付けばなんでも価値が上がる」ということになって、「デイトナを買えずにほかのスポーツモデルを購入する人が増えればそれらの価値も上がる」→「スポーツモデル買っとけば間違いない」→「店頭在庫がなくなった」→「見かけたら買っとけ」、ということで無限にバブルが拡大しているということになります。
「ロレックス=貨幣」
ただ、この状況はロレックスの動きが起点ではなく、「ポール・ニューマン」という偶発的要素によって引き起こされたもの。
しかしロレックスはこの状況を活用したく、様々な手段を講じて中古相場を高いレベルに維持しているというのが現在の状況と考えて良さそうです。
なお、ロレックスの腕時計は「貨幣」と同じ価値、もしくはそれ以上の価値があるため、金銭よりもロレックスに「換金して」保有する人、そしてそれを資金洗浄(マネーロンダリング)に使用する人などが登場し、腕時計を超えた買われ方をしているということも考慮する必要があるかもしれません。
ちなみに探検家がロレックスを身に着けてゆくのは、「行った先で困ったことがあれば、ロレックスを売って窮状をしのげるから」とも言われますし、ラスベガスやマカオに点在する「質屋」には質に入れられたロレックスが大量に売られたりしていて、こういったところを見てもロレックス=お金だと改めて感じさせられるところ。
ほかの腕時計メーカーも同じ状況を作りたい
そして、そういった状況を意図的に作り出そうとしているのがパテックフィリップやオーデマピゲで、これらは直接中古市場に介入しており、とくにパテックフィリップは自社で過去のモデルを高額落札することがあり、これは「パテックフィリップの腕時計は、時間が経っても価値が下がらず、むしろ価値が上がる」という印象を世に与えるため。
これによって「パテックフィリップを買っとけば間違いない」という心理が消費者に働き、「高くても」買ってしまうわけですね。
パテック・フィリップがオークションにて9億円で落札。過去の記録を塗り替える
こういった状況は自動車でも同じで、「フェラーリ」「レクサス」が同じ状況。
フェラーリは中古市場を常に意識していると言われ、中古価格を上げるために供給量を絞り(新車が足りないので中古を買う→中古が足りなくなるので中古相場が上がる)、これによって新車の値付けもより高く行えるような状況を作っていると考えられます。
レクサスの場合は、レクサスが自ら中古車を高値で買取り、高値で販売することで「中古相場を高く」維持していて、レクサスが中古車を高く売ってくれるおかげで他の中古車ショップも「値下げする必要はなく」、レクサスの認定中古車よりもちょっとだけ安くすれば売れるという状況が出来上がっていますが、これもレクサスが「ブランドイメージを向上させ」、より高い価格で新車を販売できるようにするためだと考えられます。
ただ、当然ながら「高く売る」にあたっては様々な機能を付与し、品質も向上させて「顧客満足度」を向上させることにも取り組んでおり、正確に言うならば、これまでと同じ製品を高く売るのではなく、「より良い製品を、より高い価格で売る」ということになりそうですね。
2020年1月からロレックスの価格はこう変わる
そして気になるロレックスの新定価ですが、主要スポーツモデルについては下記の通り。
・コスモグラフデイトナ(116500LN)・・・・1,309,000円 → 1,387,100円 ・サブマリーナ(デイト/116610LN)・・・898,700円 → 943,800円 ・サブマリーナ(デイト/116610LV/ハルク)・・・954,800円 → 987,800円 ・サブマリーナ(ノンデイト/116610LN)・・・787,600円 → 832,700円 ・シードゥエラー(126600)・・・1,197,900円 → 1,230,900円 ・シードゥエラー ディープシー・・・1,298,000円 → 1,330,100円 ・エクスプローラーII(216570)・・・853,600円 → 875,600円 ・GMTマスターII(116710LN/黒ベゼル)・・・799,200円 → 864,000円 ・GMTマスターII(116710BLNR/バットマン)・・・864,000円 → 918,000円 ・GMTマスターII(126710BLRO/ペプシ)・・・976,800円 → 1,020,800円 |
なお、ここで気になるのが「エクスプローラー(214270)」の価格がこれまでと据え置きの687,500円にとどまること。
現時点ではウワサの粋を出ないものの、価格を上げないということはこのまま在庫を売り切って生産終了、という話も出ているようです。