ダウンフォースを獲得するだけがアクティブエアロの目的ではなかった
ポルシェが新型911カレラS/カレラ4Sのエアロダイナミクスについて解説する動画を公開。
ポルシェは911において、991.2世代からフロントグリルのシャッターなど「効率化」のためのアクティブエアロを採り入れていますが(”ダウンフォース”という観点からのアクティブエアロはずっと前から導入)、新型911ではそれがさらに進化している、という印象です。
特にリアスポイラーはドラッグの低減、ダウンフォース獲得、エアブレーキという3つの働きをするようですが、ここでそれらアクティブエアロの働きを見てみましょう。
ポルシェ911のアクティブエアロはこう作動する
まずはフロントバンパー内にあるラジエターを通してのクーリング。
これについては「空気抵抗を最小限にしながらも最大限の冷却を行う」ことが考えられているようですね。
ラジエターはその性質上「風を当てて冷やす」ことになりますが、その面積が広ければ広いほど、風が強く当たればあたるほど「冷える」ことになるものの、それは同時に「空気抵抗の増大」を意味します。
特にハイパフォーマンスカーは発生する熱量が大きく、クーリングには相当な労力を(設計時に)費やすことになり、いずれのクルマもラジエターの配置や角度については「かなり苦労したんだな」ということがわかる場合もしばしば。
ランボルギーニもフェイスリフトにてラジエターの位置を変更している場合がありますし、フェラーリも「488GTB」と「488ピスタ」ではかなりラジエターの配置が異なります。
そしてそれはポルシェ911とて同じことで、992世代からはタービンのクーリング方法が変更され、インタークーラーがこれまでに「リアバンパーサイド」から「エンジン上」に。
これによって冷却効率が14%向上したとされますが、そのエアはこれまで通りバンパーサイドから排出されるようです。
そしてフロントバンパー内にある「シャッター」は時速70キロで「全閉」。
これは空気抵抗を最小限にするためです。
さらに時速90キロになるとリアスポイラーが立ち上がり、「エコポジション」に。
これは空気の剥離(による空気抵抗の低減)を狙ったもののようで、ダウンフォースはこの時点では発生しないようですね。※たしかにリアスポイラーの角度は立っていなくて「水平」
そして時速170キロになるとフロントのシャッターが開き、リアスポイラーの角度がきつくなって「パフォーマンスポジション」へと変更され、これによってダウンフォースを発生することに。
なお、ここでまたフロントのシャッターが開く理由は不明ですが、その速度域だとエンジン負荷が大きく、クーリングのためにラジエターに風を当てる必要があるのと、「この速度域になるとシャッターが開いていても閉じていても空気抵抗が(たぶん)変わらない」からなのだと思います。
これについては、エアが一定以上の容量になるとフロントバンパーから入ったエアをすべてサイドに排出できなくなり、つまりバンパー内にエアが「詰まった状態」になるのでシャッターが閉じているのと同じことになるのだろう、と考えています。※たとえばぼくらが水を飲むとき、食道を通る容量以外の水を流し込まれても口からあふれるのと同じ
なお、これらエアロダイナミクスの向上に加え、PASMを装備することで、新型ポルシェ911はニュルブルクリンクを「4秒速く」走れるようになった、とのこと。
そしてエアロダイナミクスの最後に紹介されるのは「エアブレーキ」。
マクラーレン720Sなどに搭載されることで知られる機能ですが、時速170キロ以上においてブレーキングを行う場合、リアスポイラーの角度がさらに「急」になり、エアブレーキとして機能するようですね。
これによってどれくらい制動距離が短縮されるのかは不明ですが、ハイパフォーマンスにおいてはエアブレーキを装備するクルマが増えてきているように思います。
こちらがポルシェ911のエアロダイナミクスについて解説する動画。
動画の最後の方では新型911に新搭載の機能「ウェットモード」についての紹介がありますが、ポルシェはことあるごとにこの機能をアピールしていて、よほど「有用」なのかもしれません。
VIA: Porsche