| なぜニューモデルには問題が多いのか? |
さて、世の中には様々な新型車が登場しますが、「新型車には品質上の問題が多い」というのが一部の人々の間で囁かれる事実でもあります。
新型車は「新設計」となるために新しい構造やパーツを使用しており、それらパーツ/コンポーネント単位での信頼性、構造上の安全性が(最初のうちは)担保されていない、というのがその根拠。
ただ、現在は安全性に対する基準がどんどん厳しくなっていて、自動車メーカーは様々な環境にて実走テストを行うのが常となっており(気温50度以上のデスバレーから極寒の北極圏まで)、パーツの強度や稼働に対する信頼性を極限まで高めているのもまた事実。
しかしながら、いかに強度や耐久性、構造上の信頼性・安全性を高めようとも回避できないのが「製造上の問題」であり、今回はそういった事実がよく分かる動画を紹介しようと思います。
なぜ「製造上の問題」が起こりうる?
まず製造上の問題についてですが、これは「本来取り付けられるはずのパーツが取り付けられていない」「締め付けトルクが不十分」「ちゃんとパーツが接続されていない」といったところが主な事例。
これらが発生する理由は様々ではあるものの、最も大きなものは「組み立てる人が製造に慣れていない」。
新型車の開発時には何十万キロもの実走テストを行って「OK」が出たとしても、いざ製造するとなると「製造環境がテストされたわけではなく」、そこでは予想外の問題が起こりうるわけですね。
そして問題とは「組み立て手順がマズい」「そのパーツの組み付け方に慣れていない」というものが多く、つい先日も「新人の組み立てたランボルギーニ・アヴェンタドールSVJのドア内部に問題があり、ドアが内側から開かなくなる」といったリコールが届け出られたばかり。
これについては、組み立て手順がしっかり示されておらず、「慣れた人が作業すれば」問題はないものの、慣れない人が作業すると、パーツとパーツとの接続が適切に行われないといったことが原因で問題が発生し、よって「工場内で、作業手順を明示する」といった対策が取られています(クルマの構造、パーツには問題がない)。
そのほか、たとえば992型のポルシェ911ターボだと、エンジンそのものは同じであっても、これまでの「吸気と冷却のためのエア取入口」が逆転していて、以前の「給気口」はエンジン(インタークーラー)冷却用のエア取り込み口に、そしてかつての冷却用エア取り込み口は「給気口」に。
よって、こういった変化に対して「すぐ」工員が馴染めない可能性もあり、そこで様々な問題が出てくるかもしれない、ということですね。
参考までに、製造業には「習熟曲線」というものがあって、これはそのモノを作り始めた当初は生産効率が悪く、しかし生産に慣れると作るスピードが早くなる、というもの。
もし工場側が、最初の”習熟が進まない”ないうちでも「高い生産予定台数」を工員に課すことになれば、工員はノルマを消化しようと急いで慣れない作業を行うことになり、そこで様々なミスが生じることになります。
こういった例はどの自動車メーカー、どの車種にも起こりうることであり、そのため一般には「生産開始から半年以上経過してからの生産となるように注文すべき」とも言われていますね(ぼくは新車が出るとすぐに注文することが多く、したがって生産初期のクルマに乗ることが多いのですが、たしかに初期ロットはサービスキャンペーンなどの不具合修正が多い)。
実際に初期ロットにはこれだけの不具合がある
そして今回紹介する動画二本ですが、まずは新型シボレー・コルベット。
C8コルベットは、これまで前にあったエンジンが後ろに移動するなどドラスティックな変化があり、そのために製造現場が戸惑っているのかもしれません。
この動画の内容としては、フロントバンパー内にあるフィンを固定するビスが欠落しており、そのためにフィンがグラグラするといったもの。
ちょっとわかりにくいのですが、下側からこのパーツを固定するためのビスを止めるパーツがあり、しかしビスが通っていないためにパーツが脱落する可能性もあるようですね。
この動画は大きな反響を呼んでおり、GMは「原因を究明する」とコメントしています。
こちらはテスラ・モデルY(生産が開始されたばかり)を分解してみたら、おそろしくパーツが不足していたという動画。
テスラのクルマについては、モデルYに限らず、製造上の様々な問題が報じられていますが、それでも大問題にならないのはちょっと不思議(アメリカ人は、こういったことにうるさいという印象がある)。
もしかすると、テスラに乗る人は「テスラ(イーロン・マスク氏)に対する忠誠心が高く、クレームを入れない」のかもしれませんし、「そもそもクルマに無頓着で、詳しくない人がテスラのクルマを買っている」からなのかもしれません。