| おそらくこれ以上価値のあるNSXもないだろう |
過去最高レベルに希少なホンダ(アキュラ)NSXがオンラインオークションに登場。
どう希少なのかというと、まずこのNSXは限定モデル「ザナルディ・エディション」であること、そして前の所有者がAMAスーパーバイク選手権の(1995年)チャンピオン、ミゲール・デュハメルだということ。
まず「ザナルディ・エディション」についてですが、これはアレックス・ザナルディが1997年と1998年にCARTにて2年連続チャンピオンを獲得した記念として製造された特別限定モデルです。
NSXザナルディ・エディションはこんな仕様を持っている
このザナルディ・エディションは51台のみが製造され、すべての車両はフォーミュラレッドのボディカラー、固定ルーフ、パワーステアリングレス(1993年式以降、パワステはOP選択できた)、軽量バッテリー、軽量BBS製ホイール(フロント16インチ、リア17インチ)等を持ち、同年代のNSX-Tよりも68kg軽い、と紹介されています。
なお、このザナルディ・エディションに現地のアキュラディーラーがスーパーチャージャーを取り付けた特別仕様も17台のみ存在するようですね。
アレックス・ザナルディはイタリア・ボローニャ出身のレーシングドライバーで、F1には1991年から1994年、CARTには1996年から1998年、そして1999年と2000年にはF1へと戻り、2001年にCARTに復帰するも、9月15日の第16戦において時速320キロでのクラッシュを喫し、これによって両足を膝上から切断するという重症を負っています。
両足切断という事実はアレックス・ザナルディを苦しめ、一時は自暴自棄になったそうですが、奥さんが事故後すぐに「両手だけで運転できる特別仕様のクルマ(BMW)」をオーダーしたり、リハビリ中に両足を根本から切断した人から「あなたはまだ足が少しでも残ってるから私よりは幸運だ」と励まされてなんと2003年にはレースへと復帰。
その詳しい経緯は多くの書籍に記されていますが、ぼくとしては本人の「両足を失っても、希望は手放さない」という言葉が強く印象に残っています。
そしてその後はハンドサイクルに転向して多くの競技で輝かしい戦績を残していますが、2020年6月19日の競技中にトラックと衝突し、現在もまだ予断を許さない状態が続くと報じられていますね。
初代NSXは「スーパーカーの常識を変えた」
一方のNSXは1990年に登場したスーパースポーツで、開発にアイルトン・セナが参加したことや、マクラーレンF1の設計者であるゴードン・マレーがベンチマークとしたことでも知られる不朽の名作。
何が衝撃的だったというと「緊張ではない、開放するスポーツだ」というコピーのとおり、(いろいろな意味で)身構えずに乗ることができるスーパースポーツであったということで、つまりは乗りやすく信頼性が高かったということになりますね。
ほぼ同時期に発表されたトヨタ・セルシオ(初代レクサスLSL)はその快適性や静粛性において大きく自動車業界を震撼させたことになりますが、日本車の乗りやすさ、快適性、信頼性が世界の自動車メーカーの認識を改めさせた時代であったと思います。
スポーツカーは乗りにくくて当たり前、クルマはある程度のノイズやバイブレーションがあるのは仕方がないという「常識」を覆したのがこれらであり、とくにNSXはその後のスーパーカーのあり方を変えたとも言われるほど(ホンダもそれを後年になり強調している)。
車体はアルミ製モノコック、そしてエンジンは当初3リッターV6(CA30)、そして1997年にはMT車のエンジンが3.2リッターV6(C32B)へ。
これを車体ミッドに搭載し、トランスミッションは5速マニュアル(後に6速MT化)もしくは4速ATにて後輪のみを駆動します。
インテリアカラーは「オニキス」
なお、ほかの「ザナルディエディション」にはタンレザーの個体も存在しますが、このNSXの場合は「オニキス(ブラック)」。
シートのセンターにはアルカンターラ。
ステアリングホイールのステッチはレッド。
走行距離は12,000マイル(約19,300キロ)だそうですが、画像を見る限りでは使用状況、保存状態含めて「極上」のようですね。
新車時のNSXザナルディ・エディションは84,745ドルだったそうですが、現在の価格は3日残して215,051ドル。
おそらくはまだまだ上がるものと思われ、やはりNSXは「色褪せない」クルマであることを証明することになりそうです。