| コールドスタート時の爆音には気を使う場面もあるが、クルマと環境を守るためにはやむを得ない |
さて、日本ではそこまでメジャーではないものの、欧米においてクルマ好きがYoutubeで検索に使用する人気キーワードの一つが「Cold Start(コールドスタート)」。
これは読んで字のごとく、冷間時におけるエンジンスタートを指すもので、(この場合のコールドスタートは)正確に言うならば、気温が低いときというより、エンジンが冷えているときの始動を指しています。
なぜエンジンが冷えているときのスタートを検索?
そこでなぜエンジンが冷えている状態でのエンジンスタートが検索されるのかということですが、これはただ単に「エキゾーストサウンドが大きいから」。
その大きなサウンドを楽しもうということで多くの視聴者が「Cold Start」というキーワードを使用しているわけですね。
なぜコールドスタートは「排気音が大きい」?
そこで気になるのが「なぜコールドスタート時はエキゾーストサウンドが大きいのか」。
これについては単に「エンジン回転数が高いから(車種によっては、エンジン回転数上昇にあわせてエキゾーストシステム内の可変バルブを開いているから)」で、その理由は「エンジンと触媒を暖めたいから」。
ガソリンエンジンは一定温度内にて最大の燃焼効率を発揮する
なお、ガソリンエンジン(含む内燃機関)は基本的にエンジンが温まっている際に最高のパフォーマンス(燃焼効率)を発揮するように設計されており、回転数を上げることでエンジンを素早く暖めようとしているわけですね。
ハイパフォーマンスカーにおいては「クーリング」が重要視されているために「冷えている方がいい」と捉えられることもありますが、それぞれのエンジンは設計時に理想の温度を持っており、よってこれより「上」でも「下」でも最適なパフォーマンスを発揮できないということになります。※冷えすぎると、オーバーヒートの逆で「オーバークール」になる
ただ、エンジンの温度を知ることは(一般に)できないものの、油温と水温にてある程度の判断ができるので、それらが適正範囲にあるかどうかでエンジン温度についても適切であるかどうかを知ることができます。
参考までに、一部の「可変レッドゾーン」を持つクルマについては、エンジンの温度(と水温と油温)が上がるまではレブリミットを低く抑える例もあり、それほどエンジンにとって「温度を上げること」「適切な温度を保つこと」が重要ということになりますね。
現代においては「触媒」の温度も非常に重要
そしてもうひとつ、エンジン以外にも暖めねばならないのが「触媒」。
触媒は排気ガスをクリーンにするためになくてはならないものですが、これにもまた設計時に「理想的な温度」が設定されていて、その適温においてもっとも有害な物質を吸着できる設計となっています。
よって、こちらも「触媒が冷えている状態で」エンジンをスタートさせると、触媒を暖めるべくエンジン回転数が上昇し、熱い排気を触媒に送り込んで適温に保つよう、自動的に制御されています。
「排ガスをクリーンにするためにエンジン回転数を上げて排ガスをたくさん放出する」というのはなんだか矛盾のような気がしないでもないですが、様々な研究の結果「この方法がベスト」ということなのでしょうね。
ただ、実際にそういった「コールドスタート時に排気音が大きくなるクルマ」に乗っている身としては、エンジンスタート直後に爆音が出るというのは近隣に対してちょっとはばかられるという気持ちもあり、ちょっと複雑な心境です。
ちなみにランボルギーニの場合、コールドスタート時には爆音が出るものの、そこで一旦エンジンを停止させ、その後に再スタートさせれば「(コールドスタート時の爆音ではなく)通常の音量でエンジンがスタートする」と言われています。
しかしながらエンジンを始動させてすぐに切ると「エンジン内部にオイルが行き渡らないんじゃないか」という懸念もあり、その状況でまた始動させることに抵抗を感じるのもまた事実。
さらに(触媒は別として)エンジンの状態を最適に保とうとして温度を上げているのに、その状態を無視して「低温のまま走り出す」のもエンジンにあまり良くないだろうと考えており、ぼくはコールドスタート時については「爆音やむなし」として受けて入れているというスタンスです。