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アストンマーティンが「ラゴンダブランドの終了」について正式に宣言。「アストンマーティンそのものがパワフルで高級なので、高級なだけのラゴンダは必要ない」

アストンマーティン・ラゴンダ

| アストンマーティンは短期間にて不死鳥のように蘇った |

ローレンス・ストロール会長の経営手腕たるや恐るべし、である

さて、アストンマーティン会長、ローレンス・ストロール氏が「我が社のスポーツカーやSUVには十分な高級感が備わっており、これらとは別に、(運動性能が劣る)高級車専門ブランド、つまりラゴンダを展開する予定はない」とコメントし、正式に「ラゴンダ」が終了したことが明らかに。

なお、「ラゴンダ」については説明が必要かと思われ、まず「直近の」ラゴンダ計画について触れてみると、これはアストンマーティンの前々CEO、アンディ・パーマー氏が(2018年に)立ち上げたプロジェクトです。

同氏は「ハイパーカー計画」としてヴァルキリーとヴァルハラの開発を進め、加えて「ランボルギーニやフェラーリ、マクラーレンに対抗しうる」スーパーカーとしてヴァンキッシュをミドシップ化するプロジェクトを同時に進行させ、そして「電動車専門の超高級ブランド」としてラゴンダを復活させることを計画していたわけですね。

その後、アストンマーティンでは大きく状況が変わる

ただしその後アストンマーティンはコロナ禍において大きく販売と利益を失ってしまい、そこでローレンス・ストロール氏が経営権を掌握することとなったわけですが、同氏はアストンマーティンの「本質」つまり超高級GTというところに集中しブランドイメージを先鋭化させる意向を持っており、停止できないところまで進んだ(ヴァルキリーなどの)プロジェクトを除き多くの計画を中止しています。

つまり他のブランドに対抗しようとしたアンディ・パーマーCEOの意向とは全く逆で、「わが道を行く」戦略を採用し、アストンマーティンしか持ち得ないストロングポイントを活かす方向にて独自の顧客を獲得する方向へと転じたわけですね。

そしてそのストロングポイントとはすなわち「F1」「超高級」「GT」というもので、ミドシップスーパーカーよりもラグジュアリーなグランドツーリングカー方向へとシフトして現在に至っており、実際にこの方向性にてガッチリと新たな客層を掴むことに。

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よって、ここで「ブランドのコアがブレる」ようなラゴンダを展開する必要はまったくないというのが同氏の今回の発言の趣旨であると考えられますが、これはまったくもって「もっとも」な戦略であるとも考えられます。

参考までに、アンディ・パーマーCEO時代(とその遺産)だと「潜水艦」「タワーマンション」「不動産」「ヘリコプター」など非常に多くの方面にまで展開を行っており、これは「富裕層が欲するものをすべて取り入れる」ことを狙ったため。

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つまりアンディ・パーマーCEOは「いまある需要と市場に」アストンマーティンというブランド力をもって参入し、その販売を最大化しようとしたということになりますが、ローレンス・ストロールCEOは「自身で新しい価値観を創出して市場を作り出した(そしてその市場でトップとなり、販売台数をいたずらに追求するようなことはしない)」とも考えることができ、けっこう大きな違いがありそうです。

こうやって見ると、アストンマーティンという歴史ある、そしてある程度のイメージが定着したブランドであっても、その舵を取る人によってまったく方向性や結果が変わってしまうということが面白く、F1での快進撃という(おそらく想定外の)要素に支えられたといえど、ローレンス・ストロール氏の手腕は非常に優れていると捉えてよいかと思います。

もともと「ラゴンダ」とはこういったブランドである

ここでもっと以前のラゴンダについて振り返ってみたいと思いますが、実は実はアストンマーティンの正式な社名は「アストンマーティン・ラゴンダ(Aston Martin Lagonda Limited)」。

アストンマーティンはもともと1913年に「バムフォード&マーティン」として設立され、1915年には「アストンマーティン」のブランド名の使用を開始しています。

その後、1947年にイギリスの実業家であるデビッド・ブラウンがアストンマーティンを買収し(このときに”DB”の名称が誕生)、同時に別会社であった「ラゴンダ」も買収するのですが、ラゴンダは、「イギリスの自動車メーカー」という以外はまったくアストンマーティンとの共通性がない別の自動車会社(高級車メインにて展開)で、設立は1906年だと記録されています(アストンマーティンよりも古い)。

アストンマーティン

その後アストンマーティンはいくつかの(フォードなど)親会社を転々とするものの、ラゴンダ自体がほぼ休眠状態にあったためか、これを切り離して売却したりといった交渉は行われなかったようで、今に至るまでアストンマーティンと不可分として扱われてきたわけですが、アストンマーティンのいちブランド(高級ブランド扱い)となってから発売されたクルマとしては「ラピード(1961年-1964年)」、「ラゴンダ(1976年-1989年。これはラゴンダブランドというよりも、アストンマーティンの車種のひとつ)」「タラフ(2014年~?)」が存在していて、特にタラフは当時「最も高価な市販車」であったと認識されています。

アンディ・パーマー氏はこういったラゴンダの性質をフル活用して多角化を狙っていたということになりますが、今回正式にラゴンダ計画が終了することになり、経営者が入れ替わらない限り、二度とラゴンダの名を聞くことはないのかもしれません。

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参照:Autocar

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