| マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリーが発表されてからの6年間、あまりに事態が急激に動きすぎた |
そしてその方向性はメルセデス・ベンツにとっては「想定外」であったものだと思われる
さて、メルセデス・ベンツが「ビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプト」の開発を中止したとの報道。
このビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトは2018年の北京モーターショーにて発表されたコンセプトカーであり、その発表の場からも分かる通り「中国市場向け」、とくに富裕層に向けた提案です。※最初に発表された地域がそのクルマの「最大の市場、あるいはもっとも重要視している市場」だと考えていい
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なお、メルセデス・ベンツにとって「中国」は非常に重要な市場であり、実際にSクラスやマイバッハの販売の多くは中国によって占められているといい、このビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトのほかにも「メルセデス・マイバッハEQS」が上海モーターショーにてワールドプレミアされたことも。
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中国では「セダン」が好まれる
ちなみに中国市場では「セダン」が好まれる傾向にあり、それは中国の自動車メーカーが次々発売する高級車のボディ形状が「セダン」であることからもわかるかと思います。
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一方でSUVが好まれることも間違いなく、しかし一部の富裕層は「後部座席と荷室とが一緒になっているのが我慢できない」という向きもあるそうで、かつ「箱型ボディは商用車っぽくて嫌だ」という傾向もあるもよう。
よってメルセデス・ベンツはこういった意見を反映させ「セダンとSUVとを融合させ、かつ2ボックスではなく3ボックスの」マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトを考えたわけですね。
そして中国で好まれる明るい色のインテリア、ローズゴールドのアクセント、そして「茶器」など中国を強く意識した装備を盛り込み、スポーツユーティリティリムジン=SULとして市販し、中国で製造を行うことまでを想定していたと言われます。
ビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトはなぜキャンセルされたのか
そこで気になるのが「中国のために企画され、中国での生産までを視野に入れていた」ビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトの計画が中止となったのか。
今回の報道によると、そのキャンセルの理由は「その構造の複雑さと製造に伴う高額なコスト」だとされ、さらにはその後に発表されたメルセデス・マイバッハ EQS SUVで中国市場の需要をカバーできるという思惑があったもよう。
おそらくこの理由は「妥当なところ」だとは思われるものの、おそらくはこれ以外にも理由があるものと思われ、それは「中国で高級なEVが売れないから」。
欧米の高級かつ高額なEVは非常に割高化感が強く現地では敬遠されているという報道が目立ち、メルセデス・ベンツは(EVを想定していた)ビジョン・メルセデス・マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプトを市販したとしても「売れないかもしれない」と考えたのかもしれません。
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なお、BMWは「そもそも中国では富裕層がEVを好まない」と発言しており・・・。
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自社の優位性を発揮できるガソリン車の継続生産へとシフトすると発表したことも今回の決定と無縁ではないのかも。
つまり、メルセデス・ベンツは「高級EV市場」では中国の自動車メーカーとは戦いにくく、であれば「振興EVメーカーが持たない」超高級ガソリン車の販売を強化したほうが中国市場を攻略しやすいと踏んだ可能性も考えられます。
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参照:Handelsblatt