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欧州最大のEV市場、ドイツでは7月のEV販売が38%減少、EV先進国のスウェーデン、スイスでも大幅減。数年前のEVフィーバーはいったい何だったのか

ポールスター

| EV販売の減速はあまりに「急激すぎ」、自動車業界に広く影響を及ぼしている |

EV関連パーツのサプライヤーは会社存続の危機にまで直面

さて、昨年11月あたりから鮮明になったのが「全世界規模でのEV離れ、そしてハイブリッドとPHEV選好」という傾向です。

そして今回報じられているのが、EVシフトをこれまで積極的に進めてきたフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなどのお膝元であるドイツにて「EVの販売が一向に回復せず、内燃機関搭載車を選択する人が増加中」という事実。

VW
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2024年7月のドイツでは前年同期比でEV販売が36.8%減少

新しく発表された統計によれば、ドイツでは2024年7月に30,762台のEV登録が記録され、これは1年前の2023年7月と比較して36.8%減少という数字です。

これは主に政府が補助金を削減したことによるものだと推測され、欧州最大のEV市場であるドイツでの新車販売に占めるEVシェアは1年前の20%から12.9%へと大幅に低下することとなっており、同様の傾向はスウェーデン(−15%)やスイス(−19%)といったEV先進国においても鮮明に。

ドイツ連邦自動車交通局が発表したデータを見てみると、今年7月の乗用車の新規登録台数は合計238,263台 (-2.1%)で、この数字にはガソリン車83,405台(+0.1%)、HEV / PHEVの79,870 台(+18.4%)、ディーゼル車43,107台 (+1.4%)、EVの30,762台(-36.8%)、LPG車1,078台(+8.8%)、CNG車3台 (-98.6%)にて構成されます。

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なお、今年の第1四半期のドイツにおけるEV販売は前年同期比で16.4%減という数字となっていますが、7月の大幅な減少を見るに、状況は「ますます悪化」していると考えてよく、自動車メーカーそしてサプライヤーにとっては「このままEVに投資して良いものか」という風潮になっているものと思われ、先の見えない暗いトンネルに突入したと考えていいのかもしれません。

なお、アナリストは直近のEV販売減少について「現在市場で入手可能な手頃な価格の電気自動車の不足」も原因のひとつだとしており、しかし自動車メーカーはこの状況で安価なEVを製造するための投資に踏み切れず、そして現在販売しているEVもまだ投資を回収できていないために値下げも叶わず、となると市場に求めやすい価格のEVが出回らず、つまりは「負のスパイラル」といったところになりそうです。

UBSのアナリスト、パトリック・フンメル氏は「最近のEV需要の低迷により、来年のVWの利益は20億ユーロ減少する可能性がある」と述べており、実際に同社は最近、バッテリー生産スケジュールの延期を発表し、EVの生産削減を発表済み。

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そのほか、ブルームバーグの報道によると、フランスのヴァレオSE(EVパーツのサプライヤー)は、生産能力を大幅に下回る稼働率となっている工場2カ所を売却しようとしているほか、別のフランスのサプライヤーであるOPモビリティはEVの生産量が「メーカーが予想していた量の約半分」だったとコメントしたもよう。

さらに欧州最大のEVバッテリーサプライヤーであるLGエナジーソリューションは「生き残りをかけ」静的貯蔵生産への移行を検討しているというので、自動車メーカーのみならず、そのサプライヤーも現在どうやって生き延びるかを日々考えている状態なのでしょうね。

アーンスト・アンド・ヤング(EY)のコンサルタント、コンスタンティン・ガル氏は、ドイツでのEV販売の急落について次のようにコメントしており、現時点では自動車メーカーが思い描いたような「バラ色のEVの未来」はやってきそうにないのかもしれません。

「eモビリティの拡大は今のところ持続不可能であることが判明しています。市場は勢いを失い、多くの顧客が電気自動車の将来性に疑問を抱いています。」

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