| ヴァンキッシュのV12をハイブリッド化しないのには「マーケティング上、技術上、その意義」など様々な理由があるようだ |
一方で「V8+ハイブリッド」はすでに実用化されている技術である
さて、アストンマーティンはつい先日「新型ヴァンキッシュ」を発表したところですが、今回「DB12とヴァンテージの両方にはプラグインハイブリッドパワートレインを搭載することを検討しているが、新型ヴァンキッシュはガソリンエンジンオンリーのままで行く」とコメント。※今年4月には「V12+PHEV」の可能性を示唆していたが、そこからなんらかの方向性の変更があったようだ
なお、「PHEVパワートレーンの採用」の背景にあるのは「バッテリー駆動(BEV)スポーツカーの需要が不安定なことからBEVの発売を延期し、完全電動化への過渡的技術としてPHEVを使用する」ためで、ほかの自動車メーカー同様、EVに対するプライオリティを少し下げる、ということになりそうですね。
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なぜアストンマーティンはV12エンジンとハイブリッドとを組み合わせないのか
現在アストンマーティンが使用するエンジンは「V12ツインターボ」「V8ツインターボ」の2種類がありますが、このうちV8ツインターボはメルセデスAMGから供給を受けたものであり、そしてメルセデスAMGではすでにこのV8ツインターボ+ハイブリッドパワートレーンを採用していて、さらにはアストンマーティンでも「ヴァルハラ」にはこのV8ツインターボ+PHEVが積まれることが決定しているため、V8ツインターボを採用するDB12そしてヴァンテージが取り入れることに不思議はないのかもしれません。
一方で、V12ツインターボエンジンはアストンマーティンがずっと使用してきたV12エンジンを大幅に改良したものだとされ、メルセデスAMG経由での供給ではないと言われているので、これにPHEVを組み合わせることは「コスト的に難しい」のかも(すでに存在するV8+PHEVとは異なり、開発期間やコスト、技術的難易度の問題が浮上する)。
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ただ、それ以上に「戦略的」な意味合いにてV12エンジンとプラグインハイブリッドとを組み合わせない理由もあるようで、同社のエンジニアリング責任者、サイモン・ニュートン氏は以下のようにコメントし、V12エンジンの持つアナログさ、ピュアさを守りたいという意向が感じられます。
「現在、我々はあらゆる技術に対してオープンな考えを持っています。しかしV12エンジンがヴァンキッシュを定義していることには間違いがありません。私たちが選んだもの(V12エンジン)がレシピを改善します。重量のペナルティは払っていません。非常にアナログですが、非常に洗練された体験であり、それこそが私たちが望んでいたものです。」
さらに製品責任者のアレックス・ロング氏は次のように付け加えていて、現在の技術では「V12+PHEV」は重くなりすぎ、スポーツカーとしての体験を損なううえ、電動化車両としても中途半端であり、「意味がない」ということなのでしょうね。
「V12エンジンのパワーとPHEVのパワーは同じではありません。重量ペナルティを課すなら、まともな(エレクトリックモーターのみの)航続距離を確保したほうがよいでしょうが、現時点ではそれは提供できません。」
A class leading new 5.2L V12 twin turbo engine.
— Aston Martin (@astonmartin) September 3, 2024
Engineered in-hours to deliver 835PS and 1000Nm of torque, reaching a top speed of 214mph and accelerating from 0-62mph in 3.3 seconds.#AstonMartin #VeniVidiVanquish #ZENITHDRIVEN
参考までに、アストンマーティンのローレンス・ストロール会長は今年2月、同社のプラグインハイブリッドへのシフトについて投資家向けに説明を行っており、将来のEVは「なくなるわけではない」が「若干の遅れ」があると述べ、「我々は、消費者のEVに対する需要はアナリストや政治家が考えていたほどのペースではないと考えている」とも述べています。
そして同社の最初のEV(ラピードは途中でキャンセルされた)はスポーツカーではなく、車高の高い4輪駆動のGT(2026年に登場予定)だと見られ、これはランボルギーニと同様の手法でもあり、その理由は「現在の技術では、ピュアエレクトリックカーでは顧客を満足させることができるスポーツカーを作ることができない」からだと思われ、よってスポーツカーではなく”毎日乗れる”エレクトリックGTを投入することで、既存のラインアップに加えての「買い増し」を顧客に促進し、かつ「半端なエレクトリックスポーツ」を発売することによるブランドイメージの毀損を防ぎたいということなのかもしれません。
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参照:Autocar