どうしてこんなことに・・・。VWの販売が「工場2つ分」落ち込み、幹部が「回復するには1年、あるいは2年が必要」と語る。さらには「EVの需要がまったくない」とも

｜　現代ほど「戦略」が販売を左右する時代はなく、VWはその戦略を誤ったと考えていい　｜

すでにガソリン車の開発をほぼ停止していただけに、直近で販売を回復させることが可能な「持ち駒」も存在しない

さて、先日は「その歴史上はじめて、本国ドイツの工場を閉鎖する可能性がある」というショッキングな報道がなされたフォルクスワーゲン。

今回はロイター通信がさらに衝撃的な報道を行っており、それは「ドイツのヴォルフスブルクにあるフォルクスワーゲン本社での会議で、最高財務責任者（CFO）兼最高執行責任者（COO）であるアルノ・アンティリッツ氏が、欧州自動車市場の大幅な落ち込みを克服するのには”1年か2年”かかると」コメントしたというもの。

さらに同氏は欧州の電気自動車の需要につき「まったくない」と付け加えるなど、フォルクスワーゲンの「崖っぷちぶり」があらわになっています。

フォルクスワーゲンの販売台数は「工場2つ分」減少する可能性

これらのコメントは、欧州へと中国からの安価なEVが流れ込み、市場シェアが驚異的な速度で拡大している時期に出されたものですが、アルノ・アンティリッツ氏は約2万5000人の労働者の前で演説し、”経営陣含め全員が100億ユーロの支出を削減するのに協力する必要がある”と述べ、VWブランドの販売台数はパンデミック前の数年に比べて50万台少なくなるという予想を打ち出していて、これは工場2つ分に相当するとも説明しています。

さらにフォルクスワーゲン CEO、オリバー・ブルーメ氏は「自動車業界は、わずか数年で量産セグメントで大きく変化しました。私たちは協力し、より収益性の高い適切な対策を実施します。私たちはVWをブランドが本来あるべき場所に戻します。それが私たち全員の責任です」とコメントし、従業員にもコスト削減の余波が及ぶことを示唆しています（すでに幹部を対象とした優遇措置のいくつかが廃止されていることも報じられている）。

なお、この内容を見るとかなり悲観的には思えるものの、現段階での数字は「そこまで」悪くはなく、フォルクスワーゲンは2023年の販売台数ではトヨタに次ぐ世界第2位の自動車メーカーであり、2024年上半期だと2023年上半期と比較して販売台数はわずか0.2%減少したのみで、実際、欧州におけるフォルクスワーゲン ブランドのEV販売台数は2024年上半期に2.2%増加しています（これはラインアップが拡大したことによるものだと思われるが、開発コストを吸収するには十分ではないだろう）。

ただし今後の見通しが「暗い」ことには変わりなく、工場閉鎖を回避するため、VWは今後2年間で売上を伸ばす必要があり、これには、2027年までに発売予定の11の新しいEVを含む重要な新製品の前倒しが必要となるものの、しかし待望の第9世代ゴルフなど、これらの車両の一部は現在、大幅な遅延に直面しており、VWの現在の問題をさらに悪化させる可能性があるのもまた事実。

フォルクスワーゲンの欧州および世界グループ労働協議会の会長であるダニエラ・カヴァッロ氏は、自動車メーカーの経営陣はすでに労働者との「信頼を大きく損なっている」と述べ、 「経営陣はタブーを大きく破り、労働者は我々が呼びかければすぐに対応する用意がある」とも語るなどドイツでの労働者のストライキを示唆しており、フォルクスワーゲンは「販売」という外的要因のほか、「ストライキ」という内的要因にも悩まされることになるのかもしれません。

あわせて読みたい、フォルクスワーゲン関連投稿

参照：Reuters