フェラーリ F80がイモラサーキットを走行しそのサウンドを披露。フェラーリはなぜV12ではなくV6を周年記念限定モデルに採用したのか、改めてその意図を考える【動画】

｜　フェラーリはボクらが想像するよりも長いタームで、そして広い視野でものごとを捉えている　｜

そしてフェラーリブランドをより強固にするために様々な手法を採用している

さて、フェラーリは先週に新型ハイパーカー「F80」を公開していますが、その後にイタリアのイモラ・サーキットで開催されたフェラーリ・フィナーリ・モンディアーリにて実車を走らせており、今回はユーチューバー、NM2255氏がエンジンスタートや走行中の様子を捉えた動画を公開。

なお、この動画の中ではそのエキゾーストサウンドがかなり小さく聞こえており物議を醸していますが、もちろん実際に自分の耳で聞くサウンドと（動画で聞く音声とは）異なるものと思われ、そしてここからも開発が進められることとなるはずで、実際のプロダクションバージョンのサウンドに期待したいところです。

フェラーリF80は完全に次世代のハイパーカーである

そしてこの動画で注目したいのはフェラーリF80の挙動やディティールであり、見る限りでは非常に安定した動きを見せ、非常にコントローラブルなクルマであるように見えます（最新のサスペンションとサイドスリップコントロールを持つ）。

実際のところ、このF80はル・マン・レーサーである499Pと強い関連性を持ち、しかしロードカーとして新規に設計されたクルマで、レーシングカーとしてのパフォーマンスに加え、ロードカーとして求められるフレンドリーさを併せ持っているものと考えられます。

今回、このF80に「V12エンジンを積まなかったこと」で12チリンドリ、そしてデイトナSP3やモンツァSP1/SP2の評価が上がるであろうという意見もあり、おそらくそれは間違いないと思われますが、それはむしろフェラーリが「狙ったこと」なのかもしれません。

というのも現在のフェラーリはラインアップを多様化させており、通常モデルであっても「ローマ」のようなクラシカル系、「SF90ストラダーレ/スパイダー」のようなテクノロジー（あるいはスーパースポーツ）系といった感じにデザインを分化させており、それぞれの路線において価値を高めようとしているため。

実際のところローマはこれまでのフェラーリの「フロントエンジン、ライフスタイル系」のフェラーリに比較すると高い市場価値を誇っており、つまりフェラーリはラインアップ間で「比較されることが無いよう（この場合はV8ミドシップと比べられず独自の存在意義を持つよう）」棲み分けを図っているのだと考えられます。

よって、仮にF80がV12エンジンを積んで登場していたならば、12チリンドリや一連のイコーナシリーズ、あるいはラフェラーリやエンツォフェラーリの価値を（相対的に）希薄化してしまっていた可能性もあり、しかしこのF80ではイコーナシリーズの中心的価値である「フェラーリのDNA（V12エンジンとクラシカルな、あるいはモータースポーツに関連したスタイリング）」とは異なる「現代において最高の技術、未来を示唆するデザイン」を核に据え、既存限定モデルの価値を損なわずに新しいセグメントを創出することを狙い、今後のフェラーリの限定モデルのあり方を示しているのかもしれません。

そして現時点ではまだF80の意図、そして存在意義が理解されていないために様々な議論がなされているようにも思いますが、今後時間が経過し、いくつかのイコーナシリーズが追加され、そしてF80後継モデルが登場したとき、ようやくフェラーリの意図したところが理解され、「イコーナシリーズと周年記念限定モデル」との棲み分け、それぞれの持つ意味が浸透するのではないか、とも考えています（おそらく周年記念モデルは”その時代の革新的技術を表す”モデルとして展開され、長期的に見てフェラーリの歴史を物語る存在となるはずである。残念ながらぼくはあと何台も周年記念限定モデルを見る前に寿命を迎えてしまうのだろうけれど）。

フェラーリ F80がイモラサーキットを走行する動画はこちら

合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿

参照：NM2255 | Raw Car Sounds（Youtube）