
Image:BMW
| さらに開発手法においては「まずソフト、次にハード」へと変更され、完全なるソフトウエア定義車両に |
これこそがBMWが「ノイエクラッセにてやりたかったこと」である
さて、BMWは次世代EVシリーズ「ノイエクラッセ」第一弾としてiX3を発売するとコメントしたところですが、今回「すべての駆動方式と車両セグメントに対応する、完全に新開発されたデジタル神経系を搭載した最初の自動車メーカーになった」と発表。
わかるようなわからないような内容ではありますが、これは先般チラリとアナウンスされた「新しい車両統合コンピューター」を指していると考えてよく、それまでは「エンジンやサスペンション、トランスミッション」など独立したコンピューターで制御していたものを「一括制御する」ということなのだと思われます。
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BMWの新しい車両制御は4つの「スーパーブレイン」によって行われる
まずBMWによると「このシステムは、よりインテリジェントで、強力で、効率的であり、4つの高性能コンピュータ(「スーパーブレイン」とも呼ばれる)が最も重要な機能の計算処理能力を統合し、これには、インフォテインメント、運転支援、自動運転、ビークルダイナミクス、車両アクセス、エアコン制御、快適性などの基本的な機能が含まれます。これらの4つのスーパーブレインは、現在の車両世代に比べて計算能力を20倍以上向上させ、今後のソフトウェアや機能の更新にも対応可能で、AIを活用した顧客体験も提供します」。
さらにBMWの開発担当取締役であるフランク・ウェバー氏は以下のように説明を付け加えています。
「技術のオープン性はBMWの成功の鍵です。『ノイクラッセ(Neue Klasse)』の最初のモデルから、これらの技術はすべての未来のモデルポートフォリオに展開されます。すべてのセグメントとすべての駆動方式において適用されます。これには、強力な『スーパーブライン』と高度に相互接続されたソフトウェアプラットフォームからなる完全に新開発された電子アーキテクチャも含まれます。このアーキテクチャにより、車両とソフトウェアの開発を切り離すことができるようになりました。これにより、すべての未来のBMWモデルは、過去の車両世代や次世代の車両からのオーバー・ザ・エア(OTA)アップデートを通じてデジタル的に最新の状態を維持し続けることができます。」
これらについては、たとえば従来の自動車が「ハードウェアとしての自動車を先に開発し、それを制御するためのソフトウェアを個別に、かつ後付にて開発していた」という開発プロセスを、「まず、こうありたいという自動車を制御するためのソフトウエアを先に開発し、そのソフトウエアによって駆動されるハードウエアをあとから開発する」という”全く逆の”開発プロセスに移行したものだとも捉えており、BMWが「車両とソフトウェアの開発を切り離すことが可能となった」と語るのはここに理由があるのかも。
つまりBMWは今後「ソフトウエア開発会社」に移行するのだとも考えてよく、これはテスラが実現している手法をなぞらえた行動であるとも考えられます。
デジタル神経系の根幹を成すのは簡素化されたワイヤーハーネス」
そこでこの内容を見てゆくと、BMWは「スーパーブレイン」との連携を行うに際して重要なのは「ワイヤーハーネスである」と述べていますが、たしかに現代の車両ではワイヤーハーネスが(人体における)血管や神経のように隅々にまで伸びていて、そしてBMWはこれを極限まで簡素化・軽量化したのだそう。
これもまた「先にソフトウエアを開発することで」可能となった事例だと思われますが、あたらしいワイヤリングは「ゾーン型ワイヤーハーネスアーキテクチャ」に基づいており、前世代と比較して600メートル少ないワイヤーを使用し、30%の軽量化を実現している、とのこと。
ワイヤーハーネスは「フロントエンド」「センター」「リア」「ルーフ」の4つのゾーンに分かれ、スーパーブレインは、高速データ接続を介して小さな制御ユニット(ゾーンコントローラ)と接続されることになりますが、これらのユニットがゾーン内外のデータフローを管理・統合することで車両内の配線はゾーンごとに関係づけられ、”より短く、細く、軽くする”ことができるようですね。
そして配線を薄くコンパクトにするのに役立つのが「スマートEフューズ」なる新しいパーツで、これは最大150個の従来のヒューズに取って代わり、デジタル制御によるエネルギー分配を実現するというので、相当な改良化が実現できる他、”コンポーネントの選択的な起動”によって駆動、駐車、充電、アップグレードなどのさまざまな車両状態において不要な消費電力を特定し、オフにすることができるため、エネルギー効率が20%向上しています。
このほか、車両開発の基軸を「ハードからソフト」へと移したことでアップデートが容易になり、オンラインアップデートの導入はもちろん、BMWがさらに先の世代の車両の開発を行う場合であっても「ハードの制約を受けず」デジタル上にて開発を行うことができ、これこそが「BMWがノイエクラッセで達成したかったこと」。
ソフトウェアプラットフォームはそれぞれのスーパーブレイン上で動作し、車両機能はその上で動作することになりますが、BMWグループにて電子機器およびソフトウェア担当シニア副社長を担当するクリストフ・グローテ氏は以下のようにコメントしています。
「Neue Klasseの導入により、私たちはソフトウェアの継続性を実現する開発モードに入ります。これにより、私たちは毎回ゼロから開発を始めるのではなく、ソフトウェアを継続的に進化させることができるようになります。私たちの先進的なソフトウェアアーキテクチャと、現在私たちのグローバル開発チームが10年前の130倍ものソフトウェアを生み出している事実に基づいて、私たちは優れた競争力を持っていると自負しています。これにより、ソフトウェア開発者は製品の革新により多くの時間を費やすことができるようになります。」
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参照:BMW