
| フォードCEOが発した“存続の危機”──「中国に負ければ、フォードは終わりだ」 |
果たして生き残れるのか──米国自動車産業の岐路
アメリカ屈指の老舗自動車メーカー、フォード。
そのCEOであるジム・ファーリー氏が、アスペン・アイディア・フェスティバルにて衝撃的な発言を行ったことが話題に。
「我々がここで中国車に市場を奪われてしまえば、もうフォードに未来はない」
これは単なる煽りでも、空疎なマーケティングでもなく、実際のところジム・ファーリー氏は過去1年で6~7回も中国を訪問し、現地のEV(電気自動車)産業の急成長とクオリティの高さをして“(我々にとって)屈辱的”とまで表現しています。
現地で見た「屈辱的」な現実:中国は技術もコストも品質も上
ジム・ファーリー氏が最も衝撃を受けたのは、中国が世界のEV生産台数の70%を占めているという現実だけではなく、それに加えて「品質が高く、技術も先を行っている」という事実。
たとえば、シャオミが最近発売したYU7 SUVはわずか1台35,000ドルという低価格を実現し、さらに発売直後には20万件の注文を受けていますが、これはフォードにとっては(EVでは)手が届かないスピードです。※マスタング マッハEは2020年の発売から現在まででようやく20万台に達したというレベル
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「車内のデジタル体験」がもはや別次元──ファーウエイ、シャオミが牽引
そしてジム・ファーリー氏が驚嘆することになったのは「車載テクノロジーの次元の違い」。
「中国のEVでは、ファーウェイやシャオミの技術が標準。クルマに乗るとスマホをペアリングしなくても、自動的にデジタルライフがミラーリングされる。」
これは西側のメーカーではほとんど見られない領域であり、ユーザーエクスペリエンス面で大きな差がついているという「認めざるを得な事実」も。※実際にジム・ファーリー氏はシャオミSU7を輸入し、しばらく自身で運転しテストを行っている
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それでもEVからハイブリッドへシフトするフォードの現実路線
一方で、フォードはEV一本足ではなくハイブリッド戦略へと一時的に軌道修正を行っており、これは、アメリカ市場ではまだEVよりもハイブリッドの方が需要が高いという現実を反映したものですが、実際に(この戦略にシフトして以降)フォードの株価は年初来で9%以上上昇しています。
しかし、この“守りの姿勢”が長期的に中国との競争で有効かどうかは疑問が残り、というのも長期的に見るならば自動車産業が「EVへとシフト」してゆくことは間違いなく、目先の利益に固執してEVをおろそかにしていては中国車にEV市場を制圧されてしまい、そしてそこからフォード(含む既存の自動車メーカー)が巻き返すことは非常に難しいから。
よってジム・ファーリー氏の警鐘は明確で、「このままでは、中国に自動車産業を丸ごと奪われかねない」。
EV技術でのリード、車内インテリジェンスの圧倒的な進化、そしてコスト競争力──中国EVメーカーは、あらゆる面で西側をリードしており、EVからの一時撤退とも取れるフォードの戦略は正しいのか? それとも、中国がすでに“未来”を握っているのか──。この問いに答えが出るのは、そう遠くない未来なのかもしれません。
ちょっと補足しておくと、現在フォードは「中国車が勝負できないカテゴリ」でのプレゼンスを強めようとしており、それは「モータースポーツ」。
現在アメリカではモータースポーツの人気が高まっているということもあるかと思いますが、フォードは現在GTクラス、ル・マン、F1、さらにはオフロードレースにおいても勢力を拡大する計画を持っており、これは「クルマ=スマホ」「クルマ=安楽な移動手段」として捉える傾向が強い中国の自動車メーカーが進出してこないであろう分野だと考えられ、よってフォードとしてはモータースポーツを通じて自身の得意な領域を拡大しておきたいということなのかもしれませんね。
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