
| テスラは次の時代への「標準」をモデルSにて構築した |
記事のポイント(3行まとめ)
- 歴史の幕引き: テスラの躍進を支えたフラッグシップセダンが2026年モデルで生産終了。工場は人型ロボット「Optimus」の生産拠点へ。
- 業界の再定義: 「車はソフトウェアで進化する」というOTA更新や、ディーラーを介さない直販モデルなど、現在のEVの標準を確立。
- 驚異のスペック: 最上位モデル「Plaid」は1,020馬力を誇り、ハイパーカーを凌駕する加速性能で「EV=遅い」という偏見を払拭。
As we shift to an autonomous future, Model S & X production will wind down next quarter.
— Tesla (@Tesla) January 29, 2026
If you’d like to own one of them, now’s a good time to place your order.
Tesla wouldn’t be what it is today without Model S & X and their (early) owners – thank you for your support over… pic.twitter.com/4J06T1QjVM
テスラ「モデルS」とは
テスラがまだ「風変わりな新興メーカー」だった2012年、彗星のごとく現れた一台のセダンが世界の自動車業界を震撼させました。
それが「モデルS」です。
それまでの量産EVというと「日産リーフ」のような、コンパクトでエコ、そして何かを我慢して乗らねばならないという乗り物であったものの、テスラはモデルSのターゲットを富裕層に定め、「高価だが高性能・高機能」なクルマを提示することでEVの概念を覆し、「何も我慢する必要はなく、ガソリン車にできることはモデルSですべてできる、ガソリン車を超越した存在」であることを示したわけですね。
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つまり、モデルSの登場は「EVは遅く不便でケチくさい」乗り物という印象を、「知的でお金や社会的地位がある、流行と環境に敏感な人々がこぞって購入するトレンディな商品」へと一気に変革したことが最大の特徴であり功績であるとも考えていいのかもしれません。
しかし、2026年2月1日の発表によれば、テスラはこのフラッグシップモデルを2026年第2四半期をもって生産終了することを決定。
かつては人々の憧れの的、そして世界中の自動車メーカーのベンチマークだったモデルSの生産ラインは、今後テスラの新たな野心である人型ロボット「Optimus」の製造へと転換されることが明らかになっています。
自動車を「走るコンピューター」へと変え、電気自動車をメインストリームに押し上げたモデルSが遺した10の功績を、感謝と共に振り返りましょう。
モデルSが自動車業界に遺した10の功績
1. 「EV=つまらない」を覆した走行性能
初期のEVが「エコだが退屈な乗り物」だったのに対し、モデルSは圧倒的な加速力と洗練されたデザインで「欲しいと思わせる車」へと昇華させました。
2. 車をスマホ化した「OTAアップデート」
Wi-Fi経由で車両の性能や機能を更新するOTA(Over-The-Air)アップデートを一般化。購入後も車が進化し続けるという、今の自動車のあり方を決定づけました。
3. サブスクリプションモデルの導入
FSD(完全自動運転)やコネクティビティ機能を月額課金制にするなど、自動車業界に新たな収益モデルをもたらしました。
4. 自動運転技術(FSD)の先駆
「オートパイロット」から「FSD Supervised」まで、常に自律走行技術の最前線を走り続け、業界全体のADAS(先進運転支援システム)開発を加速させました。
5. バッテリー技術の劇的進化
航続距離への不安を解消するため、エネルギー密度の向上と効率的な管理システムを追求。今日のEVが「400マイル(約640km)以上」走れるようになったのは、モデルSの功績です。
6. スーパーチャージャーという「インフラ」の確立
車両の販売だけでなく、自社で急速充電ネットワークを構築。このインフラの存在こそが、テスラのシェアを不動のものにしました。実際に北米では、この充電規格「NACS」をほぼすべての(テスラ以外での)EVが備えるに至っています。
7. 驚愕の「Plaid」スペック
1,020馬力、0-60マイル加速1.99秒という数字は、数億円のガソリン車を「その数十分の1の価格のエレクトリックセダン」が置き去りにするという、パフォーマンスの民主化を起こしました。
8. ディーラーを通さない「直接販売」
伝統的なディーラー網を介さず、メーカーが直接顧客に販売するDTCモデルを確立。透明性の高い価格設定を実現しました。
9. 巨大スクリーンのインテリア
物理ボタンを排し、17インチの大型タッチスクリーンに機能を統合。現在、多くの高級車がこのミニマリズムを追随しています。
10. 他モデルの「青写真」としての役割
モデルSで培った技術とブランドイメージが、後の大ヒット作「モデル3」や「モデルY」へと引き継がれ、今日のテスラ帝国を築き上げました。
スペック比較:2026年最終モデル
引退を目前に控えた2026年型モデルSの、熟成されたスペックをまとめると以下の通り。
| 項目 | モデルS (ベース) | モデルS Plaid |
| パワートレイン | デュアルモーター AWD | トライモーター AWD |
| 最高出力 | 670 hp | 1,020 hp |
| 0-60マイル加速 | 3.1 秒 | 1.99 秒 |
| 推定航続距離 | 410 マイル (約660km) | 359 マイル (約578km) |
| 開始価格 | $94,990〜 (約1,470万円) | $109,990〜 (約1,700万円) |
市場での位置付けとモデルS「終焉」の理由
なぜ、これほどの名車が引退するのか。
最大の理由は、テスラが「自動車メーカーからAI・ロボティクス企業へ」と完全にシフトするためです。
フリーモント工場のモデルS生産スペースは、年間100万台を目指す「Optimusロボット」の製造ラインへと作り変えられ、また、販売台数の面でもモデル3やモデルYに主役を譲り、現在はテスラ全体の販売のわずか数%にまで縮小していた、という現実があるわけですね。
ただ、これはモデルS(とモデルX)が売れなくなったからというよりも、テスラが最初から計画していた戦略の一つであり、というのもテスラは以下のようなロードマップを当初から描いています。
- まずはEVをセレブな乗り物として提供し、EVに対する人々の意識を変革する
- 高価格・高利益なEVを販売して得た収益にて安価なEVを大量に生産して普及させる
つまるところ、これがモデルS / モデルXからモデル3 / モデルYへの流れであり、「バトンタッチ」がなされるのはすでに想定済み、ということに。
さらに、現在の「自動運転とロボティクス」の流れについても一定の想定の範囲内だと思われ、というのもイーロン・マスクCEOは(思ったよりも早かったようではあるが)競合が参入してEV市場が飽和することを予見しており、ライバルの台頭についてはむしろ歓迎の意を評しているから。
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実際のところ、同氏の目的としては「EVを売って儲ける」ことではなく、(自社・他社問わず)EVを内燃機関車と置き換えて地球の環境を改善することであり、以下のようにも(EVビジネスを始めた当時に)語っています。
「誰かがEVをもって環境の改善をしなくてはならないのであれば、それは自分だろう。かなり高い確率で失敗するかもしれない。でも、それはそれで構わない。自分が持って走り出したボールを、自分がたとえ倒れたとしても、後ろから来た誰かが拾って少しでも前に進めてくれればそれでいい。」
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結論
「モデルS」という名前は消えるかもしれませんが、その魂は世界中のあらゆるEVに息づいています。
もしもモデルSのオーナーであれば、そのクルマは単なるEVではなく、そして21世紀の自動車史が動いた瞬間の「生き証人」を所有していることと同じです。
2026年第2四半期、モデルSはその「名誉ある除隊」を迎え、テスラの次なる野心であるロボットと自律走行の未来へとバトンを繋ぐこととなりますが、「13年間、夢を見せてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいです。
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