
| もはやテスラの思い描く未来には「電気自動車」が存在しない? |
これまでのマスタープランに比較すると「内容が曖昧に」
電気自動車(EV)やエネルギー製品で世界をリードするテスラが、次なるビジョンを示す動画「Master Plan Part IV | Sustainable Abundance」を公開。
この動画では、テスラが目指す未来像、「持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)」という壮大なコンセプトが語られており、ここでその内容をみてみましょう。
テスラの哲学:人類は「道具を作る存在」である
まず、今回のマスタープラン4において、テスラは自らを単なる自動車メーカーではなく、より大きな存在として定義しています。
「人類は道具を作る存在です。そして私たちテスラは、すべての人々の生活をより良くするための物理的な製品を大規模に製造するビルダーです。私たちは、電気自動車、エネルギー製品、そして人型ロボットの開発を通じて、技術ルネサンスの基盤を築くためにたゆまぬ努力を続けてきました。」
テスラの活動の根底には、人類の進化の歴史そのものである「道具作り」の精神が流れていることがわかりますが、注目すべきは今回のマスタープラン4全体を通じて「電気自動車」について殆ど触れられていないこと。
— Tesla (@Tesla) September 1, 2025
かねてよりテスラは自社について「自動車メーカーではない」「ソフトウエア企業である」という主張を続けてきましたが、今回のマスタープラン4ではそれが「より明確に」なったと考えていいのかもしれません。
次なる壮大な章へ:AIを物理世界にもたらす
そしてテスラが見据える”次の章”は、これまでのスケールを遥かに超えるものとなり、このメッセージを見る限りでは「なにやらスゴそう」なものが出てきそうでもありますね。
「次の章は、私たちがまだ目にしたことのない、さらに壮大なスケールになります。私たちは、AIを物理的な世界にもたらす製品とサービスを構築しています。製造能力と自律技術における優れた能力を組み合わせることで、世界の繁栄を加速させています。
これは、単にソフトウェアとしてのAI開発に留まらず、ロボットなどの物理的なプロダクトを通じてAIを現実世界で機能させるという強い意志の表れです。製造業のノウハウと自動運転技術で培ったAI技術を融合させ、世界全体の豊かさを底上げすることを目指しています。」
究極の目標:「持続可能な豊かさ」の実現
テスラが掲げる最終的なゴール、それが「持続可能な豊かさ」だとされていますが、今回のマスタープラン4は今までのマスタープランに比較すると「抽象的、かつ曖昧」という印象も受け、やや具体性に欠けるという印象も。
このマスタープラン4がテスラの厳しい現状を打開する戦略として機能しうるのかどうかはわかりませんが、「新しいテスラ」に期待したいところでもありますね。
「私たちはすべての人にとって、より安全で、よりクリーンで、より楽しい世界を築いているのです。私たちはこれを「持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)」と呼んでいます。 あなたが想像できる最も幸せな未来とは何でしょうか?それは、すべての人に持続可能な豊かさが存在する未来です。
テスラのビジョンは、単なる技術革新やビジネスの成功だけではありません。その先にある、地球環境に優しく、安全で、すべての人が豊かさを享受できる世界の実現を究極の目標としています。」
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まとめ
テスラの「マスタープラン パート4」が示すビジョンは、AIとロボティクスを現実世界に統合し、全人類のための「持続可能な豊かさ」を築くという”極めて壮大なもの”。
彼らがこれからどのようにしてこの未来を実現していくのか、その動向には注目が集まります。
これまでのテスラの「マスタープラン」はどんな内容?
今回「マスタープラン4」が発表されたということで、これまでのマスタープラン1~3をざっとまとめてみると以下の通りですが、これを見ても「テスラが自動車産業から離れようとしている」「具体性を欠いてきている」ということがわかるかもしれません。※これまでのマスタープランには具体的なロードマップが示されていた
• マスタープラン パート1(2006年発表):
1. 高価なスポーツカー(Roadster)を作る。
2. その利益で、より手頃な価格の車(Model S/X)を作る。
3. さらにその利益で、さらに手頃な価格の量販車(Model 3/Y)を作る。
4. これらを実現しながら、太陽光発電の選択肢を提供する。
• マスタープラン パート2(2016年発表):
1. 蓄電池と一体化した美しいソーラールーフを開発する。
2. 主要なセグメントをカバーするために電気自動車の製品ラインを拡大する(セミトラック、新型ロードスターなど)。
3. 人間の運転よりも10倍安全な自動運転能力を開発する。
4. あなたの車が使われていない時に、自動運転で収益を上げる(カーシェアリング)仕組みを作る。
• マスタープラン パート3(2023年発表):
- 化石燃料からの脱却: 化石燃料の使用を完全に廃止し、再生可能エネルギーに切り替えることを目指す。これは、発電、交通、産業、家庭など、あらゆる分野で実行される。
- エネルギーの電化: 交通手段(自動車、船舶、航空機)や住宅・産業の熱供給(ヒートポンプなど)を電化することで、エネルギー効率を高める。
- 大規模なエネルギー貯蔵: 風力発電や太陽光発電といった不安定な再生可能エネルギーを安定的に供給するため、大規模なバッテリーによるエネルギー貯蔵を実現する。
- 必要となる投資と資源: この計画を実現するために必要な膨大な量のバッテリー、土地面積、そしてリチウムやコバルトといった原材料の需要について、具体的な計算と予測を示す。
- 希望と楽観のメッセージ: この計画は非現実的なものではなく、物理学と実際の計算に基づいたものであり、これを見る私たちが生きている間に実現可能である。
テスラ「マスタープラン4」を示す動画はこちら
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参照:Tesla