
| 「ホンダの決断」が示す自動車業界の厳しい現実とは |
まさに「寝耳に水」の発表である
先日より厳しい状況を示すニュースばかりが報じられるホンダではありますが、今回はホンダ自身より「韓国での四輪車販売を2026年末をもって終了する」との発表がなされることに。
かつては韓国において「輸入車ブーム」を牽引したこともあるホンダではありますが、なぜ隣国の市場から姿を消すことになったのか。
その裏側には「売上不振」だけではない世界規模の戦略転換が隠されており、その背景を見てみましょう。
本記事の要約(30秒チェック)
- 2026年末に撤退: 韓国でのアコードやCR-Vなどの四輪車販売を終了
- 二輪事業へ集中: 今後は好調な「バイク事業」を中核に据えて経営資源を統合
- アフターサービスは継続: 既存オーナー向けのメンテナンスや部品供給は保証
- 背景にある二極化: 地場メーカー(ヒョンデ・キア)の圧倒的シェアと、EVシフトの波に飲まれた形に

なぜホンダは韓国市場を諦めたのか?3つの決定打
ホンダが韓国市場からの四輪撤退を決めた背景には、複数の要因が絡み合っているといい・・・。
1. 圧倒的な地場メーカーの壁
韓国市場は、ヒョンデ(現代自動車)とキア(起亜自動車)のシェアが極めて高く、輸入車にとってはもともとハードルの高い市場だとされています。
ドイツ車(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)が「高級車ブランド」としての地位を確立する一方、実用車でありヒョンデやキアの価格帯をバッティングしやすいホンダのラインナップは「韓国車との差別化が難しく」、その存在感を失うことになったのが1つ目の(そして大きな)要因です。
ただ、韓国市場はもともと「韓国車ばかり」であったわけではなく、1990年代くらいにはけっこう(日本車含む)輸入車が走っていたという記憶があり、実際のところ「韓国人ですら(品質が低いので)韓国車に乗りたがらない」という話を現地にて聞いたことも。

しかしながらその後ヒョンデとキアが品質を向上させ、デザイン力を強化するにあたって徐々に韓国車が選ばれる傾向が強まり、そして2023年に韓国を訪問した際には「普及価格帯のクルマはほぼ100%に近いくらいヒョンデとキア」という状況となっていたわけですね。
-
-
久々の韓国、そしてはじめてのソウルへ(番外編)!スーパーカーや高級車多し、どうやら現地では「ポルシェは安すぎる」らしい
| 韓国経済はいま絶好調だというが | 正直、日本車のデザインでは韓国車に勝てないと思った さて、ウニベルソ フェラーリを訪問するためにやってきた韓国・ソウル旅行記「番外編」。今回は街中を走るクルマに ...
続きを見る
参考までにですが、韓国の自動車市場において「韓国車が注目されるようになった」のは2008年のジェネシス(当時はブランド名ではなく、単一車種名であった)がきっかけであったと記憶していて、当時「ようやく韓国人も乗りたがる韓国車が登場した」と言われたことを思い出します。
実際のところ、ヒョンデは2015年にこの「ジェネシス」をブランド名として採用したアッパーラインを立ち上げているため、つまり彼の地ではそれほど「ジェネシス」が状況を一変させたクルマとして捉えられている、ということになるのかも。

-
-
世界中で勢力を拡大する韓国「ジェネシス」。上海にてショールームに潜入、その魅力を探ってきた【動画】
| 現在ジェネシスは日本未導入ではあるが、地元韓国はじめ世界中でその存在感を強めている | さらにはル・マン24時間レース含むモータースポーツへの参戦も計画中 さて、上海にて訪問した自動車ディーラー編 ...
続きを見る
とにもかくにも、2000年代に入ってからの韓国車の躍進が「韓国市場から(ホンダ含む)輸入車を駆逐した」ということになりますが、これはほか市場でも起こりうることであり、さらに敵は韓国車のみではなく「中国車」も含まれるようになったというのが現状です。
2. 急激なEVシフトへの対応
ちょっと話がそれましたが、2つめの理由に触れてみると、「韓国は世界でも有数のEV普及先進国」ということ。
ホンダはグローバルで2040年までの脱ガソリン車を掲げていますが、韓国市場における現在のラインナップでは、現地メーカーの強力なEV勢に対抗するための「次の一手」を打ち出すのが困難だったのだと推測されます。

3. 経営資源の「選択と集中」
そして最後の理由として、今回の発表でホンダは「中長期的な競争力強化に向けて経営資源の集中を図る」と明言しています。
つまり伸び悩む四輪を切り離し、世界的に強みを持つ二輪事業に注力することで、企業全体の収益性を高める狙いがあり、いわゆる「選択と集中」の結果が今回の苦渋のの判断ということになりそうです。
撤退後の体制とユーザーへの影響
(韓国の)ホンダ車オーナーが最も気になるのは「これからのメンテナンス」だと思われ、しかしこの点について、ホンダは明確な指針を示しています。
ホンダの韓国における今後の事業体制
| 項目 | 内容 |
| 四輪車販売 | 2026年末をもって終了 |
| 二輪車販売 | 継続(中核事業として強化) |
| アフターサービス | 継続(メンテナンス、部品供給、保証対応など) |
| 法人名義 | ホンダコリアとして存続 |
販売こそは終了するものの、サービス網が即座に消えるわけではなく、部品供給や保証は継続されるため、既存のオーナーが「見捨てられる」心配はないと言えそうです(現地法人も存続する)。

関連情報:実はバイク市場では「独走」状態
四輪車では苦戦を強いられたホンダですが、実は韓国の二輪車(バイク)市場では圧倒的な存在感を放っていて、特にデリバリー需要の高まりにより、PCXなどのスクーターは非常に高いシェアを誇るのだそう。
今回の四輪撤退は、負け戦からの逃走ではなく、「勝てる市場(バイク)に全力を注ぐための戦略的再編」という側面もあるのだと考えられ、今後世界中では同様のニュースが聞かれる可能性もありそうですね。
結論:ホンダの決断は「未来への布石」か
ホンダの韓国四輪撤退は、一見すると悲報に聞こえるかもしれません。
しかし、現在の自動車業界は「全方位で勝負できる」ほど甘い環境ではなく、多くのメーカーが計画を見直す中でホンダが早い段階で不採算部門を整理し、強みである二輪にリソースを割く決断をしたことは長期的に見れば正解となる可能性も考えられ、ほかメーカーに先んじた「勇気ある決断」となるのかも。
「伝統あるブランド」から「生き残るブランド」へ。ホンダの次なる一歩は、二輪事業でのさらなる飛躍と、「一呼吸置いてからの」グローバルでのEV開発加速にかかっています。

「日本車」というブランドの変質
かつて日本車は「故障しない、燃費が良い」という理由で世界を席巻しましたが、しかし、現在の韓国や中国のようにデジタライゼーションとEV化が先行する市場では、その価値観だけでは戦えなくなっています。
今回のニュースは、日本のものづくりが「過去の成功体験」を捨て、どう新しい価値を定義し直すかの試金石といえ、その本質が問われる時期に差し掛かっていることを示すものだとも考えられます。
合わせて読みたい、ホンダ関連投稿
-
-
EVそしてAfeela(アフィーラ)の開発中止。なぜホンダは自らの存在意義を見失って「迷走」し利益の出ない無謀な賭けに走ったのか。「夢から覚めた」現在地とは
| ホンダが直面した「160億ドル(2.4兆円)の誤算」とアイデンティティの危機 | 野心的なEVプロジェクトの終焉と、ホンダが見失ったもの ホンダは2026年3月にEVの開発中止と計画見直しを発表し ...
続きを見る
-
-
世の中何が起きるかわからない。EVに関して「カメ」とされたトヨタ。一方「ウサギ」であったホンダ・VWが苦境に立たされトヨタが逆転勝利するという現実
| あの頃、(ボクを含めて)誰もが「トヨタは出遅れた」と考えたものであったが | 現時点、「最後に笑っている」のはトヨタであった 自動車業界がいま激震に見舞われており、「EV化の波に乗り遅れている」と ...
続きを見る
-
-
ホンダの中国販売が「ピーク時の120万台から3年で64万台」へと約半分に縮小。中国製の高機能EVにシェアを奪われ「ガソリン車工場閉鎖」という危機に陥る
| 中国市場の「EVシフト」、中国自動車メーカーの躍進は想定を超える速度で進んでいる | この記事の要点 生産能力の激減: ピーク時の年間120万台から72万台規模へ、生産体制の大幅な縮小を検討中 工 ...
続きを見る
参照:HONDA











