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フェラーリ「ルーチェ」は中国だと「まだ注文できる」もよう。本当に中国で即完売したのか、あるいは完売した後にも「追加」の割り当てがなされたのか

中国でのフェラーリ ルーチェの発表イベント

Image:Ferrari

| 富裕層が熱視線を送る「免税」と「希少性」の真実 |

中国では上海技術博物館にて「華々しく」デビューを飾る

フェラーリがブランドの未来を賭けて投入した初のフル電動ハイパーGT「ルーチェ(Luce)」。

その伝統に縛られない前衛的なスタイリングや「エンジン音のないフェラーリ」というコンセプトは、世界中のエンスージアスト(熱狂的なクルマ好き)の間で激しい議論を巻き起こしています。

しかし、フェラーリにとって世界第2位の重要市場である中国の富裕層はネット上のノイズを全く気にしていないようで、つい先日は現地メディアから「中国での発表イベント開催と同時に、中国向けの初期割り当て分が瞬く間に完売した」という華々しいニュースが報じられたばかり。

その一方で、北京の正規ディーラーからは異なる証言も聞かれているようで、情報が交錯するルーチェの「本当の売れ行き」、そして欧米とは全く異なる視点でこの1,036馬力の電動跳ね馬を歓迎する中国市場のリアルな舞台裏について考えてみましょう。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜エアコン操作部
フェラーリ初のEV「ルーチェ」が中国上陸。約9500万円でも88台がその場で完売。「他の国とは異なる」その理由と中華ハイパーEVとの決定的な違いとは

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この記事の要約

  • 「即完売」報道の真実: フェラーリ初の電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」が中国で発売され、当初は年間割り当ての88台が即座に完売したと報じられたが、その後の現地取材で現在も注文可能であることが判明している
  • 賛否両論のスタイリング: 欧米の伝統的なクルマ好きの間では、その独特なデザインや内燃機関(エンジン)の不在を巡って激しい議論が続いているが、中国の若い富裕層からは好意的に受け止められている
  • 中国市場ならではの「EV優遇措置」: ガソリン車への増税やナンバープレートの発行規制が厳しい中国主要都市において、EVであるルーチェは40%の消費税が免除され、米国よりも安く購入できるという逆転現象が起きている
  • 5人乗りGTという新境地: ルーチェは純粋なスーパーカーではなく、日常使いも想定した5人乗りの「グランドツアラー(GT)」として位置付けられており、年間1,000台未満の極めて高い希少性が担保されている
中国でのフェラーリ ルーチェの発表イベント

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中国におけるフェラーリ ルーチェ

ことの発端は、中国の自動車メディア「Car News China」が報じたニュースで、それによると、中国市場でのルーチェのベース価格は398万8,000元(約9500万円)に設定され、そして発表イベントと同時に今年分の割り当てである「88台」が正式発表後すぐに完売したとのこと。

デザインへの批判や内燃機関の不在を嘆く”欧米の反応とは対照的な”このニュースが世界の自動車業界を驚かせたことも記憶に新しく、しかしこのドラマには続きがあるもよう。

というのも現地経済紙「北京商報(Beijing Business Today)」がその後、北京にあるフェラーリのショールームへ追跡取材を行ったところ、営業スタッフは「受注停止や完売という事実はなく、現在も引き続き注文を受け付けている」と回答したのだそう。

まもなく7月3日から5日にかけて開催される北京でのプレビューイベントを前にして、フェラーリが中国市場向けに追加の生産枠を用意したのか、あるいは最初の「88台即完売」という報道がやや誇張されたものであったのか、あるいは今年分は実際に完売したものの来年分の受注を受けているのかなど、真相は依然としてベールに包まれている状態ではありますが、ひとつ確かなのは、ルーチェが中国の富裕層にとっていま最も熱い関心の対象であるという事実です。

なお、先日開催されたルーチェのお披露目は「上海」の技術博物館を借り切って行われ、そして建物の外部では「ルーチェの起動シークエンス」を模したイエローの光が徐々に建物を支配してゆくという演出がなされており、相当にお金がかかったイベントであったことが伺えます。

そしてこの上海についでの公開が「北京」ということになり、現時点で中国においては「上海でしかお披露目されていないため」まだまだ購買余力が残されている、ということになりそうですね。

中国でのフェラーリ ルーチェの発表イベント

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フェラーリ・ルーチェ(Luce)中国仕様のスペックと市場データ

フェラーリ・ルーチェがこれほど注目を集める理由は、その圧倒的なスペックだけでなく、中国という特殊な市場環境において「これ以上ない合理的な選択肢」になっている点にあります。

項目詳細仕様および現地市場データ
パワートレイン100% 電気自動車(フルEV)
最高出力1,036馬力(HP)
乗車定員5人乗り(ラグジュアリー・グランドツアラー)
中国現地価格3,988,000元(約586,600ドル)
米国価格との比較米国仕様より約53,000ドル相当安価(中国でのEV免税措置による)
現地での優遇特典40%の自動車消費税が免税
・大都市でのナンバープレート取得制限の対象外
年間予測生産台数年間800台〜1,000台未満(極めて高い希少性)

1. 「中国市場でのフェラーリ苦戦」を救う救世主

近年の中国市場において、フェラーリの販売台数は2022年の年間約1,500台から2025年には約900台へと大きく落ち込んでおり、この落ち込みの背景にはフェラーリの「戦略的調整(意図的に中国への割り当てを減らしている)」が反映されていると公式には発表されています。

しかしこの数字の変化の背景には、「戦略的調整」だけではなく、中国政府が導入した「大排気量のガソリン車に対する超高額な贅沢税(消費税)」や、上海・北京などの大都市におけるガソリン車用のナンバープレート発給制限(抽選や高額なオークション)があるとされ、お金があってもガソリンのスーパーカーを登録して乗ることが極めて難しいという環境が作られていたという事実が潜んでいるとも指摘されているわけですね。※もしかすると完売したのは「上海分」の88台であり、「北京分」はまた別にあるのかも

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2. 米国より5万ドル以上も安い?「EVならでは」の逆転現象

ルーチェは100%EVであるため、中国での「(フェラーリのV12モデルに課される)40%の自動車消費税」が完全に免除され、さらに、大都市でのナンバープレートも優先的に、かつスムーズに発行されます。

その結果、通常であれば輸入関税などで本国や米国よりも遥かに高額になるはずのフェラーリが、中国市場では「米国よりも約5万3,000ドル(約800万円以上)安く買える」という、これまでにない価格の逆転現象が起きているというわけですね。

ちょっと補足しておくと、中国だと輸入車には以下のような税金が加算され、最終的な小売価格が「欧米の倍くらい」になる例も。

しかしルーチェの場合はこのうち「消費税」が免除され、ガソリンエンジンを積むフェラーリと(とくにV12モデルに対して)比べると非常に”割安”にて購入できるという事実が存在します(さらに北米は現在トランプ関税が有効になっている)。

  • 関税(Import Duty)・・・通常は15%
  • 増値税(VAT)・・・標準税率は13%
  • 消費税(Consumption Tax)・・・排気量によって変わる
中国でのフェラーリ ルーチェの発表イベント

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そしてもうひとつ補足するならば、(日本では信じられませんが)中国の都市部においてガソリン車用のナンバープレートを取得することは非常に困難で(政府がガソリン車の登録を制限しているため)、これを取得するには「数百万円〜数千万円」というお金を積んでオークション経由でナンバープレートを取得するか、あるいは「数十倍」とされる抽選に申し込むしかないという現実も。

ただ、ルーチェであれば「EV」なのでこういった制限なくナンバープレートを取得することができ、つまり中国の人々にとってルーチェは「乗り出し価格を考慮するならば、これまでのフェラーリに比較して非常に安価に購入できる」フェラーリとして目に写っているということに。

参考までに、この「緑の」ナンバープレートが中国でいう「NEV(新エネルギー車=BEV、PHEV、FCEV)」に対して付与されるもの(ガソリン車用は白地)。

中国の自動運転車(Li Auto)
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3. 中国製EVとの競合、そしてフェラーリが誇る「圧倒的希少性」

スペックの面だけで言えば、中国国内にはさらに安価で、かつ1,000馬力を超えるような超高性能EV(BYDの「仰望=Yangwang U9」やプレミアムな電動セダンなど)が多数存在し、単純な加速性能やハイテク装備の充実度では、地元の中国製EVの方が優れている部分もあるかもしれません。

しかし、ルーチェの本質は純粋なサーキット向けのスーパーカーではなく、日常を快適に彩る「5人乗りのラグジュアリーGT」。

そして何よりフェラーリというバッジが持つステータスと、「年間生産台数が世界でわずか800〜1,000台未満」に抑えられるであろう圧倒的なブランドの独占欲(エクスクルーシビティ)は、どれほど優れた量産型の中国製EVであっても決して真似することができないのもまた事実。

結論

世界中のコレクターや自動車メディアが「内燃機関の終焉」を嘆き、フェラーリのEVシフトに懐疑的な目を向ける中、中国の富裕層はルーチェを「最も洗練され、かつ都市でスマートに乗れる最先端のステータスシンボル」として極めて合理的に受け入れているというのがまさに”中国の現在地”(これはタイでの事象と同じである)。

フェラーリ
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中国でのフェラーリ ルーチェの発表イベント

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先日、ポルシェが中国市場での価格競争に巻き込まれ、ディーラー網を3割削減するという厳しいリストラを発表したばかりですが、フェラーリがルーチェで提示した「あえて生産台数を絞り、圧倒的な希少価値と引き換えに高いプライスを維持する」というウルトラ・ラグジュアリー戦略は、電動化時代におけるひとつの正解でもあり、フェラーリの歴史に古くから馴染んでいる国や地域(欧米や日本)ではその戦略が響かなかったのかもしれませんが、アジアの新興国では「フェラーリの思惑通り」にことが進んでいるのかもしれません。

「音が響かない跳ね馬」は、最初は奇妙に思えるかもしれず、しかし時代の最先端を走る新興国のオーナーたちにとって、ルーチェは環境への配慮と、誰もが羨むフェラーリの伝統を同時に手に入れることができる、未来への最も美しい片道切符ということなのだとも考えられます。

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参照:Ferrari(Weibo)、CARSCOOPS

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