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フェラーリのマーケティング責任者「正直、ルーチェに対するここまでの逆風は予想外でした。賛否両論は覚悟していたのですが」

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜俯瞰図

Image:Ferrari

| マーケティング責任者が本音を吐露 |

いまだにルーチェに対する逆風は収まりそうにない

跳ね馬のバッジを冠した最新モデルがこれほどの「逆風」に晒されたことは記憶になく、いまだフェラーリが発表したブランド初のピュアEVであり初の4ドア4人乗り(5人乗車可)セダンでもある「ルーチェ(Luce)」に対する逆風がやまない状況です。

そしてその余波は他モデルにも及んでおり、「通常であれば」大絶賛されたはずの12チリンドリ・マヌアーレに対しても「偽物のMT」という罵声があびせかけられたり、フェラーリが過去の名車の画像をSNSに投稿しても「とても美しい・・・ルーチェが登場するまでは」と嫌味を言われたりという始末。

乗り出し約1億円という超弩級のプライスタグが付けられたこの革新的なモデルに対して世界中の熱狂的なティフォシ(フェラーリ・ファン)や自動車メディアからかつてないほどの批判の嵐が吹き荒れているというのが今現在で、たしかにこれまででも「プロサングエ(SUV)」や「FF(シューティングブレーク)」、古くは「F50」など、登場時に物議を醸したモデルは存在し、しかし、今回のルーチェに対するネガティブな反応の量と質はそれらの比ではありません。

この異例の事態について、フェラーリのグローバル・マーケティング・ディレクターを務めるエマニュエル・カランド氏は、海外メディア「Edmunds」のインタビューに対し、本音とブランドの真意を語ることとなっています。

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜サイド

Image:Ferrari

この記事の要約

  • フェラーリ初の完全電動モデル(EV)「ルーチェ(Luce)」の発表後、デザインやコンセプトを巡り世界中で激しい批判(バッシング)が巻き起こっている。
  • グローバル・マーケティング・ディレクターのエマニュエル・カランド氏は「賛否両論は想定内だったが、ここまでの規模(マグニチュード)は予想外だった」と驚きを隠さない。
  • 元CEOのルカ・ディ・モンテゼーモロ氏からも「跳ね馬のバッジを外すべき」と酷評される一方、フェラーリ側は「EVだからこそ可能になったパッケージングであり、時間が解決する」と冷静な姿勢を崩していない。

伝統への挑戦か、それとも冒涜か?フェラーリ初のEV「ルーチェ」を巡る異例の事態

まずカランド氏はインタビューの中で、ルーチェに対する世間の反応について次のように述べています。

「強い反応や、非常に意見が分かれる(偏極化する)反応が返ってくることは予想していました。しかし、これほどの規模(マグニチュード)になるとは思っていませんでした」

「Apple Carのようだ」と物議を醸すデザインとフェラーリ側の狙い

つまり、事実上「ほぼ全員から嫌われる」ような状態になるとまでは想定していなかったと述べ、しかし、カランド氏はマーケターとしての強気な一面も見せています。

「マーケティング・ディレクターとしては、非常に嬉しくもあります。フェラーリは誰もが愛し、誰もが意見を言う権利を持つブランドだからです。ただ、新しいものを開発するとき、その『新しさ』は往々にして人々を恐怖させます。 4年前にプロサングエを発表したときも同じでした。規模こそ違えど『エンツォ・フェラーリが墓の中でひっくり返っている(激怒している)』というコメントが溢れたものです。しかし今や、プロサングエは世界で最も愛されるフェラーリの一台になっています」

フェラーリ プロサングエのフロント
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「Jony Ive(ジョニー・アイブ)」が手がけた、フェラーリらしくない外観

ルーチェがこれほど嫌われる最大の要因はそのエクステリアデザインにあり、ネット上では「フェラーリのバッジを貼っただけのApple Car(アップル・カー)ではないか」という揶揄が絶えません。

それもそのはず、このルーチェのデザインを担当したのは、元Appleの伝説的デザイナーであるジョニー・アイブ氏とマーク・ニューソン氏が率いる「LoveFrom」で、iPhoneやiPad、Apple Watchの隣に並べれば最高の親和性を発揮する美しいミニマリズム体現しているものの、「458イタリア」のような、伝統的なフェラーリの筋肉質で官能的な造形とは明らかに一線を画しています。

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この「フェラーリらしさの欠如」には、かつてフェラーリを率いた元CEOのルカ・ディ・モンテゼーモロ氏さえも「このクルマから跳ね馬(プロプライエタリ・ホース)を外すべきだ。本音をこれ以上語ればフェラーリの不利益になる」と、極めて辛辣な言葉を残しているほど。

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜リア
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あえて「プロサングエのEV版」にしなかった理由

しかしフェラーリ側はこのデザインが「意図されたもの」であると主張しており、カランド氏は、既存のガソリン車の枠組みに囚われないEV専用アーキテクチャのメリットを以下のように強調することに。

「プロサングエからV型12気筒エンジンを取り除き、そこにバッテリーとエレクトリックモーターを詰め込むという選択肢もありました。しかし、それは正しい決断ではないと考えたのです。 私たちは、このEV技術がなければ不可能だったパッケージを実現しました。フロントフードを極限まで短くしたことで、広大な室内空間を確保しつつ、ドライバーの着座位置をフロントアクスル(前輪車軸)に近づけることができました。これにより、コーナー進入時に驚異的な正確性(プレシジョン)をもたらすことができるのです」

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜フロント正面

Image:Ferrari

フェラーリ プロサングエ:車種概要

ルーチェは単に「電気で走るフェラーリ」というだけでなく、マラネロの歴史において多くの“初”を持つチャレンジャー。

競合となるハイパフォーマンスEV(ポルシェ・タイカン ターボGTやルーシッド・エアー・サファイアなど)と比較しても、そのスペックとアプローチは異次元と言えます。

主要スペック一覧(箇条書き)

  • パワートレイン: 4基の独立した電気モーター(クアッドモーターAWD)
  • 最高出力: 1,035馬力(ブーストモード時)
  • 0-100km/h加速: 2.5秒
  • 最高速度: 310km/h(193mph)
  • 総バッテリー容量: 122kWh(シャシー構造体の一部となるストラクチャラル・バッテリー)
  • 航続距離: 約529km(WLTPモード)
  • 充電性能: 800Vアーキテクチャ、最大350kWのDC急速充電に対応
  • 車両重量: 2,260kg(約4,982ポンド)
  • デザイン: LoveFrom(ジョニー・アイブ & マーク・ニューソン)
フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜エアコン操作部

Image:Ferrari

ルーチェがもたらす「未知の気づき」

多くの人々が「エンジンサウンドがない」「形が退屈」とルーチェを批判するものの、フェラーリがこのクルマに込めたエンジニアリングは次世代の「ドライビング・エモーション」を再定義しようとするもので、注目すべきは以下の2点です。

  1. 「レスポール」方式のリアルなEVサウンド: フェラーリは多くのEVが採用している「スピーカーから擬似的な未来音を流す(合成音)」手法を嫌い、その代わりとしてリアモーターの物理的な振動と回転テクスチャをリアルタイムでサンプリングし、まるでエレクトリック・ギター(ギブソン・レスポールなど)のようアンプとフィルターを通して増幅・イコライジングするシステム(パフォーマンスモード時に作動)を開発。電気の力を生々しい楽器のグルーヴに変える試みを内蔵している
  2. パドルシフトで操る「回生ブレーキ」: ステアリング裏に配された大型パドルは、ギアチェンジのためではなく「回生ブレーキの強弱」と「トルクデリバリー」をコントロールするために使用され、コーナー進入時に左パドルを引いて強力な減速G(エンジンブレーキの感覚)を作り出し、クリッピングポイントを過ぎたら右パドルでトルクを注ぎ込むという、EVならではの新しいスポーツドライビングの作法を提案している

結論:エンツォ・フェラーリは墓の中で怒っているか?

フェラーリの創設者であるエンツォ・フェラーリは、「私はエンジンを売っている。車体はタダでついてくるおまけだ」という言葉を残したほど、内燃機関(特にV12)を神聖視していたことでも知られます。

【フェラーリの哲学】なぜ“需要より1台少なく”しか作らないのか?エンツォ・フェラーリの信念と成功の理由
Life in the FAST LANE

その意味では、エンジンを持たないルーチェは、伝統主義者から見ればブランドの終焉に映るかもしれません。

しかし、カランド氏が指摘するように、世間の激しい拒絶反応は「時間が経てば和らぐ」性質のものであり(たとえば、あれだけ激しかった、イーロン・マスク氏の政治的スタンスに対する批判などは、もう誰も覚えてない)、さらにはかつてポルシェが水冷エンジンを採用したときも、SUVのカイエンを出したときも、ファンは猛反発したものの、結果としてそれらがブランドを救う大ヒット作となっています。

現にルーチェもまた、中国市場向けに用意された初期割り当ての88台が発表直後に一瞬で完売しているという報道もあり、現時点で「すべての人々が」ルーチェに対して批判的ではないこともわかります。

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参照:Motor1, Edmund, Ferrari

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