| テスラの市場シェアや人気の問題ではなく、どう考えても工場の生産能力が2000万台には達しない |
このままの工場建設ペースではどうやっても1000万台/年が限界
さて、テスラは先日無事にベルリンの工場(ギガファクトリー)をオープンさせていますが、ここで発表されたのが「マスタープラン3」。
これは2006年に発表された最初のマスタープランの最新バージョンですが、最初のマスタープランとは「スポーツカーを作り、そこから得た資金で手頃な価格のクルマを作り、その資金でさらに手頃な価格のクルマを作ること」。
そして実際のところ、その計画はテスラ・ロードスター→モデルS/モデルX→モデル3/モデルYといった具合に確実に実行されているわけですね。
ちなみにマスタープラン2(2016)は「パワーウォールの投入とソーラーシティの組入れ、そしてオートパイロットを一般ドライバーの10倍安全にし、ロボタクシーを導入する」。
これについて、ロボタクシー以外は「ほぼ」達成されたと考えられます。
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テスラ「マスタープラン3」とは
そこで今回のマスタープラン3についてですが、テスラを「極限まで大きくすること」。
現在その詳細については公表されていないものの、「テスラの主なテーマは、人類を化石燃料からシフトさせるために必要な規模への拡張と、AIになる」と語っており、ここには航空宇宙分野(スペースX)やハイパーループ(ボーリングカンパニー)も関係してくるようですね。
よって、この「規模」というのは電気自動車の生産だけではなく、人類そのもののの移動手段をドラスティックに変えるという意味だとも考えてよく、仮にテスラが持株会社へと移行し、スペースXとボーリングカンパニーを傘下に収めることになれば(テスラの)株価がとんでもないことになる可能性がありそうです。
テスラの最適規模は年間1000万台?
そして今回、ギガファクトリー・ベルリンの開所にて主張したのが「年産2000万台の規模を目指す」ということ。
これについては2020年9月に「テスラは2030年までに年間2000万台を生産する」と述べた繰り返しになりますが、2021年だとテスラの年産は100万台なので、これは現在の20倍。
よって多くの人が到達不可能だと考えているものの、イーロン・マスクCEOは2018年「10年以内に1兆ドル企業になる」と語ったことがあり、その際にもほとんどの人が「不可能なばかりか、その前にテスラは潰れている」と一笑に付し、しかし実際にはその3年後に時価総額にてこれを達成しており、つまりは「イーロン・マスクCEO以外はだれも想像しなかった」ことが現実となっています。
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そしてイーロン・マスクCEOは「10年後に2000万台を販売するのは、アグレッシブな目標ではあるが不可能ではない」とも語っており、その根拠としては「世界では20億台の自動車やトラックが使用されているので、2000万台といってもその中の1%でしかない」というもの。※2000万台というと、GMとフォルクスワーゲンとをあわせたくらいの生産規模
ただしイーロン・マスクCEOは今回、メディアのインタビューに答え、「ベストなシナリオは1000万台」とも答えており、現実的には「2030年には現在の10倍の生産規模」に落ち着くだろうと予想しているのかもしれません。
なお、テスラ初の工場であるカリフォルニア(フリーモント)工場の生産規模は年間60万台、すでに稼働している中国の上海工場は90万台(こちらは拡張工事が始まっている)、今回オープンしたベルリン工場では(2025年までに)50万台、テキサス(オースティン)工場は2024年までに40万台という生産能力を持つので、「2030年までに1000万台」に到達しようとなると、あと760万台をまかなえるだけの工場を作る必要があり、これは「年産100万台規模の工場を、これから毎年1つオープンさせねばならない」ということを意味します。
現在テスラが着工を予定している工場は(上記の他に)報告されておらず、可能性があるのはインドくらい。
かつ、一つの工場の建設には2年、稼働開始からピークの生産能力に達するまでには2-3年かかるので、ここからハイペースで工場を建設したとしても、やはり「最大で1000台」くらいが妥当な数字なのかもしれません。
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テスラはこれからシェアを侵食される?
なお、テスラは「競争がまったくない」ところからスタートしたのでここまでのハイペースで成長してきましたが、ここからはフォード、GM、フォルクスワーゲン、トヨタといったメジャーメーカー、リビアンやルシードといった新興勢力と戦う必要があり、かつそれらは「テスラをターゲットにして開発した新型車」を発売していて、つまりこれからは状況が少し変わってきます。
ただ、従来の(ガソリン車メインの)自動車市場とEV市場とは全く事情が異なり、ガソリン車の市場だと「どこかが伸びた分、基本的にどこかが縮む」ことになったわけですが、EVの場合はこれから市場が形成される製品であり、テスラが多少シエアを侵食されたとしても、それよりも市場の成長速度のほうが速く、つまりは「失うものよりも得るもののほうが大きい」という状態があと数年は続くのかもしれません(つまり需要は問題とはならず、問題は供給能力ということになる)。
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