| ただしこの状況が改善する見込みはなく、よって「補助」を行うという行為はその場しのぎであり持続可能性を欠いている |
この様相が続けばどこかの時点で「中国市場からの撤退」を考えなければならないだろう
さて、直近の決算発表ではBMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMW、ポルシェ、さらにはフェラーリまでもが「中国市場での販売減少」を報告していますが、今回は「販売が減少するだけではなく」新たな問題が中国にて生じているとの報道。
その問題とは「中国のディーラーが(クルマの販売台数が減り、競争激化のため値引き販売を行わなくてはならなくなっているので)赤字を出し、しかし現地ディーラーが倒産すると困るので、ディーラーに対して補助金を出している」というものです。
-
ポルシェが中国にて苦境に立たされる。「ポルシェのEVが売れないので正規ディーラーにて値引きを行わざるを得ず、その分の損失を本社に要求」との報道
| 一時ポルシェとディーラーとの間で緊張が高まったようだが、両者は解決策を模索すると声明を発表 | そしてこの問題は今後ほかの自動車メーカーにも波及するであろう さて、中国ではいまだ160もの振興EV ...
続きを見る
このままでは「中国市場は経費ばかりかかるマーケット」に
なお、中国市場は多くの自動車メーカー、とくにプレミアムカーメーカーにとっては北米とあわせて「ナンバー1とナンバー2」というポジションを占め、中国抜きではもはや経営が成り立たないレベルに達していますが、その中国は現在「景気が減速」「現地自動車メーカーの販売が急増」しているという状況にあり、割高に感じられる欧州のプレミアムカーが敬遠されるという逆境に見舞われています。
そしてこういったシチュエーションを改善すべく、フォルクスワーゲンやアウディは中国の自動車メーカーと提携し「割安で、中国市場の好みにマッチした」クルマを開発しており、直近だとアウディは「中国専売モデル」を提供する”AUDI”ブランドを立ち上げるにいたったわけですが、つまりはそれくらい「既存プレミアムブランドは売れていない」「既存ブランドの製品では中国製品に太刀打ちできず、仕切り直すしかない」ということに。
Image:AUDI
-
アウディが中国専用ブランドとして(大文字の)「AUDI」立ち上げ。これまでのアウディとは全く異なる中国の嗜好にあわせた内外装や装備を持ち”フォーリングス”は用いられず
Audi | 様々な意味でこのクルマを従来のアウディと同列に扱うことはできないだろう | 現在スペックなど詳細は発表されていないが、中国市場での成否の鍵を握るのは何といっても「価格」である さて、アウ ...
続きを見る
ただし「売れない」状況を放置するわけにもゆかず、よって各自動車メーカーとも現地ディーラーに「なんとかクルマを売るよう」圧力をかけ、そしてディーラーも様々な権利を維持するために値段を割り引いてでも車両を販売することになるわけですが、自動車メーカーがこの「補填(利益の穴埋め)」を行っていて、その額は「数百万ユーロ」単位だと言われています。
実際のところ、BMWを販売する北京のディーラーは(BMWの努力虚しく)倒産に追い込まれ、いくつかのディーラーは「自動車メーカーからの補助なしでは店舗を維持できない」と語っているそうですが、この状況ははっきり言うと「健全ではない上に」「持続可能でもなく」まさに負のスパイラルに突入した状態だとも考えられます。※中国自動車ディーラー協会(CADA)は、今年約2,000店舗が閉鎖され、半数以上のディーラーが2024年には赤字に陥ると示唆している
つまり根本的な解決策がなく、今後ますます中国の自動車メーカーが力をつけるために欧州のプレミアムカーメーカーにとって「状況が改善する見込みはなく」、よって値引きに頼って販売を確保し、その結果として利益を失いつ付けることとなりそうで、こうなってくるとどこかの段階において「中国市場からの撤退」を決め、より健全な市場である北米や欧州、中国を除くアジアに注力したほうがいいのかもしれません。
合わせて読みたい、関連投稿
-
ポルシェの2024年上半期は全世界で-7%。「主要モデルのフェイスリフトが響いた」とされるもタイカンの販売は-51%、中国市場全体では-33%となり戦略の見直しが必要か
| ポルシェは現在フォルクスワーゲングループに組み込まれ、主要ブランドとなっているために「容易に身動きが取れない」状態である | おそらく、いまポルシェが行っていることは「本当にやりたいこと」ではない ...
続きを見る
-
フェラーリが2024年第3四半期の決算を発表、納車台数2%減、特に中国で29%の減少を記録し株価が8%近く下がる。ただし通期の見通しは「これまで通り」
| 今回の納車台数減少には「一時的な要素」が関連しており、かつ中国問題についても吸収可能だと考える | 現在のフェラーリは「何があっても揺るがない」だけのリスク対策を講じている さて、フェラーリが20 ...
続きを見る
-
欧州自動車メーカーの「終わりの始まり」?中国ではBMWの販売が30%、ポルシェ19%、VW15%、メルセデス・ベンツでは13%減少し、もはや中国車に対抗できない状況に
| さらに欧州の自動車メーカーは中国に依存してきただけにそのダメージは小さくない | 加えて現在では中国の自動車メーカーに「教えを請う」状態に さて、現在フォルクスワーゲン、ポルシェ、BMW、メルセデ ...
続きを見る