
| たしかにマレーシアは「F1を再度開催したい」という意向があると言われていたが |
まさかこの短期間で「9年ぶり」のマレーシアでのF1開催が決まろうとは
モータースポーツファンを驚かせる異例のニュースが報じられ、それはF1とFIA(国際自動車連盟)が「2026年シーズンの”バーレーンGP”を、バーレーン本国ではなく約6,000kmも離れたマレーシアの伝説的コース、セパン・インターナショナル・サーキットで開催する」という正式発表したこと。
一見すると「マレーシアでやるのにバーレーンGP?」と混乱しそうなこの決定ではありますが、その裏には中東の地政学リスク、そしてF1のカレンダー(開催枠)を死守したい国々の熾烈な思惑とビジネスが絡み合っているもよう。
なぜこのような前代未聞の移転が実現したのか、その背景と裏側について考えてみましょう。
【記事の要点(30秒でわかるポイント)】
- 異例の決定:2026年のF1バーレーンGPが本国バーレーンから約6,000km(3,750マイル)離れたマレーシアの「セパン・インターナショナル・サーキット」で開催決定。
- 正式名称:大会名称は『F1 ガルフエア・バーレーン・グランプリ in マレーシア』となり、日程は2026年10月2日〜4日に決定。
- 移転の背景:中東情勢の緊迫化(米イラン間の緊張長期化)により、当初4月に予定されていたバーレーンおよびサウジアラビアでの開催が見送られたため。
- 格安開催のカラクリ:本来年間約5,200万ドル(約80億円)とされる開催権料をバーレーン側が負担。マレーシアはサーキット修繕費等の約350万ドル(約5億4,000万円)のみで伝説のF1復活を実現。
The 2026 Bahrain Grand Prix will be held at the iconic Sepang International Circuit!
— Formula 1 (@F1) July 26, 2026
Set to take place later this year from 2-4 October#F1 pic.twitter.com/7oY9pytnh8
なぜ「マレーシアでバーレーンGP」が開催されるのか?
今回の電撃発表により、2017年を最後にF1カレンダーから姿を消していたマレーシアのセパン・サーキットが、2026年10月4日(決勝)に「バーレーンGP」として奇跡の一夜限りの復活(スポット開催)を果たすことに。
その背景にあるのは長期化する米イラン間の衝突をはじめとした中東地域の安全保障上の緊張で、当初、2026年4月12日に開幕初期のラウンドとして予定されていたバーレーンGPは情勢悪化を受けて3月に開催見送りが決定。
さらに続く政情不安によって空いたスケジュールを埋められず、サウジアラビアGPの延期・キャンセルとともに春の長い空白期間を生んでいたわけですが、バーレーン王国およびF1側は全24戦の年間スケジュールと開催権利を維持するため模索を継続しており、その結果として「F1開催にふさわしい最高峰の設備(グレード1サーキット)を持ちつつも、開催費用面で自力招致を断念していたマレーシア」へレースを移転させるという、超ウルトラCの解決策に達したというわけですね。
バーレーンのサルマン皇太子兼首相は、この決定について次のようにコメントしています。
「世界中のファンにとって素晴らしい体験となり、モータースポーツに対するバーレーンの弛まぬ情熱を示すものとなるでしょう。地域の課題が続く中、バーレーンはF1の安定の柱としての役割を果たし、成功裏にレースを開催できるよう尽力してまいります」
グランプリ概要・開催費用比較
今回の「バーレーンGP in マレーシア」に関する基本データと開催コストの比較は以下の通りです。
| 項目 | 詳細スペック・データ |
| 正式大会名称 | Formula 1 Gulf Air Bahrain Grand Prix in Malaysia (F1 ガルフエア・バーレーン・グランプリ in マレーシア) |
| 開催日程 | 2026年10月2日〜4日(アゼルバイジャンGPとシンガポールGPの間に位置) |
| 開催サーキット | セパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア) |
| バーレーン↔セパン間の距離 | 約 6,000 km(約 3,750 マイル) |
| バーレーン側の通常開催権料 | 推定 約 5,200 万ドル(約 82億円)/ 年 |
| マレーシア側の今回の負担額 | 推定 約 350 万ドル(約 5億5,000万円)※サーキット改修費等 |
An iconic circuit, Sepang has delivered some classic F1 moments!
— Formula 1 (@F1) July 26, 2026
It will join the 2026 calendar to host the Bahrain Grand Prix later this year from 2-4 October#F1 pic.twitter.com/hXyMEmcJLY
マレーシアがわずか350万ドルでF1を手に入れた「カラクリ」と開催枠の奪い合い
通常、F1を自国に招致するためには年間数千万円〜数億ドル規模の巨大な「開催権料(Hosting Fee)」をFOM(Formula One Management)に支払う必要があり、マレーシアが2017年を最後にF1開催を諦めたのも、この開催権料の高騰に耐え切れなくなったことが主因であったと伝えられています。
しかし今回の移転劇では、開催権料のほぼ全額をバーレーン側が肩代わり・継続負担することとなり、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相によると、マレーシア側が負担するのはセパン・サーキットを現在のF1基準へアップデート・修繕するための約350万ドルのみで済むとのことで、「もう一度F1を開催したい」と願っていたマレーシアとしては「渡りに船」であったのかもしれません。※セパン・サーキットでは現在も様々なレースが開催されており、マレーシアは比較的モータースポーツへの興味が強い国でもあるため、同国はずっとF1開催の機会を狙っているという話もあった
なお、今回の話が「F1からマレーシア」という流れであったのか、あるいは「マレーシアからF1へ」という経路であったのかはナゾですが、もし今回の開催によってマレーシアが大きく潤うようになれば、今後マレーシアがF1カレンダーに組み込まれる可能性も十分に考えられ(2017年当時と今では様々な事情が異なり、大きな収益を挙げることができる可能性がある)。

バーレーン側が「他国の開催費用を払ってまで」移転させる理由
なお、バーレーン側とて太っ腹なボランティアでこれを行っているわけではなく、ここには「一度失ったF1開催枠を取り戻すのは至難の業である」というF1ビジネスの現実があるとされ、実際のところF1の開催枠(年間24戦程度)は世界中での争奪戦となっています。
伝統国であるフランスやドイツでさえカレンダーから脱落し、ベルギーのスパ・フランコルシャンですら隔年開催(ローテーション)に追い込まれているのが現状で、もしバーレーンが2026年の開催を完全にキャンセルして穴をあけてしまえば、最悪の場合、来期以降の開催権そのものを他国(新規招致を目指す国々)に奪われるリスクも考えられ、そのため、「開催権料を支払ってでも他国のサーキットを借りて実績を作り、カレンダーの1枠を守り抜く」ことが、バーレーンにとって最も理にかなった政治的・商業的判断だったというわけですね。
関連情報:過去にもあった「国名と開催地が一致しない」異例のF1レース
実はF1の長い歴史において「主催国・冠名と実際にレースが行われた国」が異なるケースはこれが初めてではなく、地理的にあり得ないレース名や他国開催は過去にもいくつか存在します。
- サンマリノGP(開催地:イタリア・イモラ):1981年から2006年まで開催。極小国サンマリノ共和国の名を冠していたが、実際のサーキットはイタリアのイモラ(サンマリノから約100km離れた場所)に位置していた。
- ルクセンブルクGP(開催地:ドイツ・ニュルブルクリンク):1997年と1998年に開催。ルクセンブルク国内にF1基準のサーキットがないため、隣国ドイツのニュルブルクリンクで開催された。
- スイスGP(開催地:フランス・ディジョン):1955年のル・マン惨事以降、スイス国内でモータースポーツが禁止されたため、1982年のスイスGPは隣国フランスのディジョン・プレノワ・サーキットで開催された。
今回のバーレーンGP(マレーシア開催)は、これら過去の事例と比べても「大陸を跨ぐ約6,000km離れた異国での開催」という点においてもF1史上最もダイナミックな代替開催と言えるもので、かつ「急遽」開催が決定したため、F1史に残る珍事になるんじゃないかとも考えています。

結論
2026年10月、マレーシアのセパン・サーキットで「バーレーンGP」が開催されるという決定は、世界情勢が生んだ前代未聞のハプニングでありながら、モータースポーツファンにとっては「セパンの復活」という最高のサプライズとなっています。
熱帯特有のスコール(スコールレース)や、高速コーナーとロングストレートが織りなすセパンのテクニカルなレイアウトは現行のF1マシンにおいても屈指のドラマを生み出すはずで、政治や安全保障という複雑な裏事情を乗り越えて実現した現代の奇跡がこの「バーレーンGP in マレーシア」。
急遽開催が決定しただけに輸送や宿泊、様々なインフラの整備など課題は満載かと思われますが(チケットもどうなるのかわからない)、10月4日の決勝に向け、世界中のF1ファンの熱視線が集まっているというのが現在の状況です。
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参照:F1











