
| マニュアル・トランスミッション然り、「慣れ親しんだものが無くなる」と急に欲しくなったりすることがある |
それはもう「人の常」ともいえる事象であってどうしようもない
この数年、自動車のフロントマスクといえば角型ライトや極細のLEDライトバーが主流となり、それに伴って”ちょっと前までは”伝統的な「丸型ヘッドライト」が過去の遺物として姿を消つつあるのがひとつの流れであったようにも思います。
しかし最新の市販車やコンセプトカーを見渡してみると、丸型モチーフを採用した魅力的なデザインが急増していることにも気付かされ、「かつては技術的な制約から選ばれていた丸いライト」がなぜ今この現代に再び脚光を浴びているのか。
ここでは自動車史におけるヘッドライトの進化、そして最新テクノロジーであるLEDがもたらしたデザイン革命の舞台裏に迫ってみようと思います。
この記事の要約
- 長年減少傾向にあった「丸型ヘッドライト」が、近年の最新EVや新型車でグラフィックアイコンとして鮮やかに復活を遂げている
- かつてはバルブと反射板の構造的限界から採用されていた丸型だが、現代ではLED技術によりブランドの歴史や個性を象徴するデザイン表現へと進化
- 四角型ライトが主流だった時代を経て、最新のLEDリングライトは「ノスタルジーと未来感」を両立させる洗練された手段として再評価されている

丸型ヘッドライト復活のテーマ概要
自動車における「丸」という形状は、元々はバルブ(電球)の光を効率よく前方へ反射・拡散させるための技術的制限(必然性)から生まれたもので、初代フィアット500やクラシックMiniなどに代表されるように、丸型ライトは長い間クルマの「顔」として親しまれてきており、それは多くの日本車においても同様です。

しかし現代の丸型ヘッドライトは、電球を収めるためのものではなく、最新のLEDテクノロジーを活用して丸い光のリング(ライトサイン)を描き出すという手法を用いており、ブランドの歴史的ルーツを感じさせつつも極めて先進的なイメージを与える「グラフィックエレメント」として復活を遂げているというわけですね。

ヘッドライトの「変化」とは
ヘッドライト形状は自動車のデザインの流行、そして技術革新とともに大きな変化を遂げてきたという歴史的背景を持っており、1960年代以降、空力性能の向上や低くシャープなノーズのデザインが求められるようになると角型や台形型のヘッドライトが「未来の象徴」として一世を風靡することに。※ただ1980〜1990年代に「未来的」と持てはやされた角型ヘッドライトは、現代の視点で見ると(むしろ)どこかレトロに感じられるのが面白い

しかし、LEDライトの登場がその流れを根底から覆すこととなり、LEDは光源自体の形状に縛られないため、デザイナーは自由な形で光をレイアウトできるようになったというわけですね。
加えて巨大なインバーターや複雑な構造、大きなスペースを要しないという理由から、「電球」はもちろん、「キセノンヘッドライト」(HID)「レーザーヘッドライト」といったそれまでの先端技術すらを駆逐してしまうことに。
そして「テクノロジー」が好まれる中国市場においては、この「細長いLEDライトバー」が非常に好まれ、そして中国市場をターゲットとするクルマの多くはこのLEDライトバーを採用しています。

ただし直近のニューモデルでは内部の配光性能を高めつつ、外周を丸いLEDデイタイムランニングライトで囲む手法が数多く取り入れられているという例が多くなっていて、大衆車から高級車まで非常に多くのモデルが存在するもよう。

ヘッドライト技術とデザインの変遷
| 時代・技術 | 形状の特徴 | 主な役割・デザインの狙い | 代表的なイメージ |
| 電球・ハロゲン時代 | 丸型(円形) | リフレクター構造上の技術的必然性 | 初代フィアット500、クラシックMini |
| 1960〜1990年代 | 角型・トラペゾイダル | 空力性能向上と「現代的・未来的」イメージ | フィアット127/128、フィアット・パンダ等 |
| 現代(LED時代) | 自由な発光体(丸型リング等) | ブランドのアイデンティティ強調・歴史と未来の融合 | 新型ルノー4 E-Tech、現行Mini、フィアット500eなど |

競合比較・市場での位置付け
そしてこの「丸形」をうまく活用するブランドや車種も少なくはなく、ルノー「4 E-Tech」、フィアット「500e」、BMWグループの「Mini」などは(過去モデルにて)アイコンとされていた丸型モチーフを巧みに再解釈していて、「光の輪」として再定義されたこれらの丸型LEDライトは、レトロでありながら時代を超越した洗練さ(モダンさ)を醸し出すことに成功しおり、街中でも一目でその車種だと識別できる「親しみやすさ」、そしてその「存在感」により、新興EVブランドなどとの差別化を図りたい既存メーカーにとって強力な武器となっているようにも思います。
とくに中国では今のところ丸形発光グラフィックに注目するブランドはほとんどなく、よって日米欧の既存自動車メーカーにとっては自社のアイデンティティ強化、差別化の手段として非常に有効なのかもしれません。※かつて丸型ヘッドライトを採用していた=それくらい古いメーカーである=新興メーカーとは違う、ということを主張できる

補足情報
この「丸形へドライトのリバイバル」というトレンドにつき、単に「昔を懐かしむノスタルジー」という観点から丸型に戻しているわけではなく、様々な理由や意図があるという点は現代のカーデザインにおける非常に興味深いトピックともいえるもの。
直線的なラインが多い現代の多角形ボディやSUVスタイリングの中で、あえて丸型の光をフロントマスクに配置することにより、車両全体に「人間味のある表情(人間的な温かみ)」を与える効果、そして感情移入の可能性が生まれるようにも思います。
そう考えるならば、この円形のライトサインは今から業界全体が向かうであろう”無機質になりがちなEV(電気自動車)時代”において、ファンやユーザーとの情緒的なつながりを作る重要な 架け橋となっているのだとも考えられ、よってこの傾向は少しの間「加速」を見せるのかもしれませんね。※昔を知る人には「懐かしく」感じられ、そうでない人に対しては「新鮮さ」「親しみやすさ」をアピールできる

結論
スリムなライトや複雑なラインが溢れる現代の自動車市場において、丸型ヘッドライトの復活は、デザインの進化が単なる一本道ではないことを物語っています。
かつての技術的制限から生まれた「丸」という形状は、現代の最高峰LEDテクノロジーと出会ったことで、ブランドの物語と個性を雄弁に語る「光のサイン」へと生まれ変わったというのが現在の状況であり、過去の伝統を敬いながら未来を描くこの美しい手法は、今後登場する新型車にも大きな影響を与え続けることとなりそうです。
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参照:Motor1











