
| マクマ―トリー・スピアリングはあらゆる意味で「常識を覆してしまう」存在である |
更に恐ろしいのは、このクルマがいままさに「市販されようと」していることである
ときどき「理論上の過程として」聞かれるのが「F1マシンはある速度を超えると、逆さまに走れるほどのダウンフォースを生み出す」という話。
そして「車体重量以上のダウンフォースを発生させることが可能であれば、その力をもって天井に車体を張り付かせることができるのではないか」という空想上の議論もたびたびなされ、これを実際に試算したユーチューバーも過去には存在するほどですが、「理論上では可能であっても」その速度に至るまで、そしてそこからの減速を考慮した場合、非常に大掛かりな設備が必要となるので「現実的には不可能」だとも言われています。
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ただしついに「空想が現実に」
しかしながら今回、ついに「強力なダウンフォースがあれば、クルマを天井に貼り付けて走行させることができるのでは」という理論上の遊びがついに現実となり、それを実現したのはイギリスのマクマートリー・オートモーティブ(McMurtry Automotive)。
先週に公開された動画では、同社のハイパーカー「Spéirling(スピアリング)」が実際に逆さ走行に成功していることが示され、この偉業を可能にしたのは、ボタン一つで約2,000kgものダウンフォースを発生させる独自の『ダウンフォース・オン・デマンド』ファンシステム。※スピアリングの車体重量は1,000kg
なお、このマクマ―トリー・スピアリングはこのシステムをもってF1マシンよりも速く走れる」ことを2022年のグッドウッド・ヒルクライムにて証明しており、かつこのシステムは「車速ゼロ」でも動作することが大きな特徴です。
よってマクマートリーはこのチャレンジに際して長く安全なトンネルを探すという現実的な課題に直面することもなく、代わりに本社(イングランド)に回転式のリグを設置しての実験となっていますが、まずスピアリングはスロープを上がり、そこで金属製の走行デッキへと停止。
その後、共同創業者でありドライバーのトーマス・イェーツ氏がファンを起動し、ファンが23,000rpmで回転する中でリグがゆっくりと回転し、上下を逆さまにしてゆくわけですね。
このファンをもってスピアリングは車体をデッキへと「吸い付けている」のですが(要は掃除機と一緒)、スピアリングは走行したという実績を作るため、その状態で数十センチほど前進して停止してみせ、そして再びリグが回転して元の位置に戻ると、まるで何事もなかったかのようにそこから走り去ることに。
「ダウンフォース・オン・デマンド」は単なるマーケティング用語ではない
1,000馬力を誇るツインモーターの電動ハイパーカーであるスピアリングには、F1マシンが逆さ走行するために克服しなければならない障壁が存在せず、というのも「ガソリンエンジンを持たないため」。
F1のようなドライサンプ式の内燃エンジンは、上下逆にしてしまうとオイルが循環できなくなり、潤滑不良でエンジンが壊滅的なダメージを受ける可能性があるのですが、これを簡単に説明すると、オイルはタンクからエンジン上部に送り込まれ、重力で下に落ちてサンプに溜まり、そこから再びタンクに戻されるという仕組みを持っていて、つまり上下が逆になると、このサイクルが崩壊することとなってしまいます。
しかしこのスピアリングはパワートレーンが「(電動なので)重力」に左右されることはなく、そして走行時のエアを利用する従来のエアロダイナミクスとは異なる理論にてダウンフォースを発生させるために「不可能」は存在せず、これによって驚異的な加速力とコーナリング性能を実現することが可能です。
そして現在、マクマートリーはこの市販モデル「マクマ―トリー PURE(ピュア)」の最終開発に取り組んでいると報じられ、この生産台数はわずか100台に限定される予定です(ファンで車体を地面に吸い付けるため、そのファンの作動音がとんでもなく大きく、このノイズが問題となるようだ)。
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参照:McMurtry Automotive(Youtube)