| ただしポルシェに近いといえど、マクラーレンは独自の手法でマクラーレンらしさを演出している |
正直、今回の試乗でアルトゥーラが(かなり)欲しくなった
さて、マクラーレン・アルトゥーラの試乗レポート、今回は後編です。
前編では「見た目」に関するレビューをお届けしましたが、今回は実際に「乗車」し自分で運転してみた印象について。
まずはマクラーレンならではの太く高いサイドシルをまたいで乗り込むことになりますが・・・。
サイドシル部分はこんな感じで内側(車体中央側)に大きくえぐれているので、コツを掴めばアクセスは比較的容易です(しかもディへドラルドアを採用しているので乗降時の頭上スペースにはかなり余裕がある)。
-
マクラーレン・アルトゥーラに試乗(1)。現時点ではもっとも高い質感とデザイン性を誇るスーパーカーの一台だと考えていいかもしれない【動画】
| 正直なところ、マクラーレン・アルトゥーラの内外装、そして運転した印象はボクの予想を遥かに超えている | その細部に至るまでの「こだわり」、妥協を許さぬ作りはさすがレーシングファクトリーをルーツに持 ...
続きを見る
やはりマクラーレン・アルトゥーラはよくできている
もちろんヒップポジションは相当に低く・・・。
しかしメーターごとステアリングコラムが動き、ダッシュボードが低いので前方の視界は良好です。
この「視界」はスポーツカーにとっては非常に重要であり、視界が優れていればそれだけドライバーも状況に素早く対処できるわけですが、前方含め、後方そしてドアミラーとルームミラー越しの視界も(スーパーカーとしては)かなり優れるようですね。
センターパッドは「レザー巻き」、そして非常にコンパクト。
ステアリングホイールの直径はかなり小さく、グリップは比較的細く(レーシンググローブの装着を前提にしているのかもしれない)、グリップ内には「クッションなし」。
ドライブモードやサスペンションなどのコントロールスイッチはメーターフード左右に配置され、ステアリングホイールから手を(大きく)離さずに操作できるように配慮されています。
なお、興味深いのはフェラーリやランボルギーニのように「スポーク上にウインカーなどの操作系」を集中させていないことで、アルトゥーラのスポークには「一切スイッチ類がなく」、ウインカー他の操作は通常のクルマと同じくステアリングコラムから生えたレバーにて行うことに。
メーターはフルデジタル、非常にコントラストが高く、かつ高精細なのでかなり見やすい部類だと思います。
ちなみに足元はかなり狭く、そのため試乗を申し込んだ際には「運転に適した細身の靴でご来場を」というアドバイスを受けたほど(このアドバイスに従っておいて良かったと思う)。
ペダルレイアウトは「左足ブレーキ」に適しており、アクセルとブレーキペダルの高さは「ほぼ同じ」。※ブレーキペダルは激重、かつストロークが短いので慣れるまでの操作には要注意
車両システムのスタートはこの赤いボタンにて行いますが、起動させた状態ではエンジンが始動せず、「フルエレクトリックモード」がデフォルトです。
そして走行に際し、まず右パドルを手前に引くと「D」レンジに入り、そのままアクセルを踏むとパーキングブレーキが解除され、「無音」にてスタートすることになるわけですね。
なおクリープは発生せず、しかしスタートは非常に滑らかで(意図的に”飛び出さないよう”加速を調整しているのだと思われる)、かつ車内の騒音レベルが低く抑えられ、ビビリなどの低級音が発生しないために(スーパーカーらしからぬ)上質な乗り心地を持つという印象です。
そしてパーキングブレーキ解除の際の衝撃も皆無であり、交差点などで停止する際の「完全停止する前のショック」もまた皆無(カーボンセラミックブレーキを採用しているということを考慮すると、これは驚くべきことである)。
エレクトリックモードで走行する限りでは「高級車のような」乗り心地だと考えてよく、そしてエレクトリックモードでは30kmほどを走行することが可能だというので、走行のうちけっこうな割合を「EVとして」走ることができそうです。
なお、このエレクトリックモード時にぐっとアクセルペダルを踏み込むと、「ゼロからの転がり出し」は上述のとおりマイルドに設定されているためガツンとくる印象はなく、しかし動き出してからの加速はまさに「エレクトリックモーターならでは」のグイグイと伸びる味付けです(うまくプログラムしているなと唸らされる)。
ただ、そのまま加速が無限に伸びるわけではなく次第に加速度が落ち着くようで、「強い加速を感じられる」のはだいたい時速50kmくらいまで。
それでも、ガソリンエンジンと併用すれば、ガソリンエンジンの回転数が上昇し高いトルクとパワーを発生するに至るまでにこのエレクトリックパワーを活用して車体を押し出すことができるので(低速と中速〜高速域とでエレクトリックモーターとガソリンエンジンとの棲み分けを行っている)、ガソリンエンジンオンリーのスポーツカーに比較すると幅広い速度域において力強い加速を得ることができるという印象です。※そのため、ハイブリッドスポーツでは、意図的にガソリンエンジンの最大トルクを発生する回転数を高めに設定し、低速はエレクトリックモーターにてそのトルクを補い、ガソリンエンジンを高回転型にシフトさせる場合が多い
ちなみにですが、ドライブモードを「コンフォート」に入れておくと(バッテリー残量がなくなるまで)ガソリンエンジンが起動しませんが、モードを「スポーツ」へと入れると強制的にガソリンエンジンを目覚めさせることが可能です。
ただしガソリンエンジンが始動して少しの間は(触媒を暖めるため)暖機運転を行うので回転数が意図的に上げられ、この状態ではまだ駆動力へと変換されない、とのこと。
ガソリンエンジンが駆動力として寄与するのは暖気が終了するおよそ1分後くらいからですが、ガソリンエンジンが動いている間のサウンドとバイブレーションはなかなかのもので、V8エンジンほど低くはないものの、軽快なリズムと振動をもって乗員にその存在を示してくれます。
そして特筆すべきは、エンジンの鼓動からも「ボディ剛性の高さ」が感じられることで、頑強極まりない車体にエンジンが取り付けられ、車体そのものは一切エンジンからの振動に影響されず、しかしエンジンの発するノイズとバイブレーションのみがドライバーに伝わってくるように思えること(とにかくカーボンモノコックはビクともしないという感じで、車体がエンジンにあわせて振動しているという感覚がない。振動にキレがあることでそう思えるのかもしれない)。
しばらく走ってみると、その車体剛性の高さにさらに驚かされることになり、ステアリングホイールを切った際にも「車体がよじれず、ステアリングラックのみが動いている」というフィーリングが得られ、各コンポーネントが単体で機能しているという強い印象を受けますが、マクラーレンのカーボンモノコックは「オープン化したとしても補強の必要がない」ほどだと言われるので、「そう感じる」だけではなく、実際に「そう」なのかもしれません。
なお、ハンドリングに関しては、最新のフェラーリのように「おお」と驚くほど鋭く曲がるのではなく「極めてニュートラル」という印象を持っていて、同じEデフ採用ながらも大きくセッティングが異なるところ。
そのほか印象に残るのはサスペンション。
これは「初期の当たりが柔らかく、しかしダンピングの強いショートストローク、かつ伸び側が速くスムーズ」というぼく好みの設定で、つまりは「ゴツゴツしない」ということですが、そのため街乗りも苦にならず、柔かいのにロールしないという素晴らしいフィーリングを実現しています。
最後にブレーキについて触れておくと、アルトゥーラでは比較的回生ブレーキが強めに設定されることで電力を積極的に回収しており、電力を「貯める」ことに重点をおいているもよう。
これはよりスポーティーなドライブモードになるほど顕著であり、たとえば「コンフォート」よりも「スポーツ」モード時のほうがアクセルオフでの回生ブレーキの効きが強いようですね(ちなみに試乗前よりも、試乗を終えたときのほうがバッテリーの残量が増えていたので、走行時に積極的に電力を回収していたということがわかる。一方、同じPHEVスポーツであっても、フェラーリ296GTBでは積極的に電力を放出しており、両者の間には大きな考え方の差があるようだ)。
全体的な印象としては「あまりに強固なカーボンモノコック」、それがゆえに「ドライブトレインやサスペンション、ステアリングなど各コンポーネントがそれぞれ独立してしっかり仕事ができる」、さらには「加速、ハンドリング、ブレーキ含めすべてがニュートラルな味付け」というもの(それらが総合して機能した結果、非常に乗りやすく挙動をつかみやすいクルマとなっている)。
無限とも思える加速の(シームレスで衰えることがない)伸び、加速時・減速時、そしてコーナリング時における安定感は特筆すべきもので、安心してアクセルを踏み、安心してブレーキを踏みつけ、さらには安心してステアリングホイールを切ることができるスーパカーでもあり、逆にこのクルマが意図しない挙動の乱れを見せることはまず無いかもしれません。
ぼくの経験上だと「マクラーレンのクルマは(フェラーリやランボルギーニよりも)ポルシェに近い」という印象を持っていますが、達成しているレベルは「ポルシェよりも」上だとも捉えています。
そしてマクラーレンがそれをできる理由としては「マクラーレン・オートモーティブは2010年創業であり、カーボンやDCT、電子制御が当たり前の時代に立ち上げられた」からなのかもしれません。
つまりは(キャリーオーバーすべきものがもともと無いので)新しい技術のみを使用し、最新の効率性をもって設計されたのがマクラーレンであり、そのぶん無駄がなく、様々なチャレンジが可能になったからこそ、この新世代のスポーツカーを作り得たんじゃないかとも考えています。
なお、今回試乗をさせていただいたのは「マクラーレン大阪」さん(ありがとうございます)。
オープン当初から大変お世話になっており、いまだ一台も購入していないのが心苦しい限りですが、マクラーレンの中古相場も徐々に上がってきて売却がより有利に進められるようになったこともあり、このあたりで「マクラーレン行っとくか」とも考えています。
ちなみにショールームは御堂筋に面しているという性質上、多くの人々が前を通り、ウインドウ越しに展示されているマクラーレンの写真を撮る人も多数といった状況で、しかしそういった人たちを見たショールームのお姉さんがそれらの人々をショールームに招き入れる姿を見るにつけ、ちょっとぼくは感動してしまった次第です(そういった対応をしてもらえると、絶対にマクラーレンのファンになる)。
マクラーレン大阪
住所:〒541-0057 大阪府大阪市中央区北久宝寺町3-5-12
営業時間:10:00~18:30
ウエブサイト:https://mclaren-hakko.com/osaka/
「5色の」マクラーレン・アルトゥーラを収めてきた動画はこちら
合わせて読みたい、マクラーレン関連投稿
-
もう博物館というよりはひとつの「街」。世界中のあらゆるクルマが所蔵されている「モーターワールド」内部が公開に。なお広すぎて館内はマクラーレン・エルバで移動【動画】
Mr JWW / youtube | これまでにも世界中の様々な自動車関連施設が紹介されているが、所蔵品の規模でこれに勝るものはないだろう | その規模は完全に常識の範囲を超えていた さて、イケメンユ ...
続きを見る
-
マクラーレンが新世代における内外装デザイン言語を公開。過去のレーシングカーやF1に強くインスパイアされたヘリテージ風、内装ではドライバー重視
| さらにマクラーレンはW1、MP1の商標を出願し、これらはハイパーカーに用いられる可能性も | マクラーレンは新しく体制を整え、今後「未来」へと向けて大きく飛躍するものと思われる さて、マクラーレン ...
続きを見る
-
マクラーレンP1のハイブリッド用バッテリー交換費用は3250万円。現在人気につき交換順番待ち、しかしすでに交換費用の一部を保証金として支払済の個体が中古市場に
Car&bids | 今後、ポルシェ918スパイダー、ラ・フェラーリもはやり「バッテリー交換問題」に直面することになりそうだ | 加えてマクラーレン、アルトゥーラ、フェラーリ296GTB/GTS、ラン ...
続きを見る