| ロールス・ロイスの真髄はその静かさや快適さにあり、ガソリンエンジンのノイズやサウンドにあるわけではない |
よってロールス・ロイス、そして顧客ともに電動化は「ウエルカム」である
さて、ロールス・ロイスはずいぶん前から「ピュアエレクトリックブランドへと移行する」と宣言しており、今回はピュアエレクトリックカー「第二弾」「第三弾」の情報、そして「2030年までV12エンジンを作り続ける」という話が報じられています。
つまりロールスロイスは「2031年以降はガソリンエンジンを作らない」ということになり、現在多くの自動車メーカーが「ガソリン車につき、終了の期限を定めず生産を続ける」という改訂方針を打ち出す中、「それらに逆行する(というか当初の計画を変更せずに進む)」こととなりそうですね。
ロールスロイスはなぜ「電動化」を進めるのか
ロールスロイスが電動化を進めるのには理由があり、それは唯一つ「静かだから」。
ロールスロイスは「至上の快適性」「人類が作りうるもっとも快適なクルマ」を目指していますが、現在V12エンジンを採用しているのも「(ガソリンエンジンでは)もっともスムーズで振動が小さいから」だと言われます。
そんなロールスロイスが「無振動、無音の」エレクトリックモーターに目をつけるのはごく自然な流れではあるものの、実際のところ100年以上前の創業間もない頃から創業者が「充電環境さえ整えば、エレクトリックモーターのほうがガソリンエンジンよりも優れたパワーユニットになる」とコメントしていたというので、現代は創業者の”夢”に技術が追いついた状態であるといっていいのかもしれません。
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加えて、ロールス・ロイスにはほかの自動車メーカー(ブランド)との相違点がいくつかあり、まずひとつは「顧客の預金残高がほぼ無限である」こと。
つまりロールス・ロイスの顧客は「電気自動車は割高だから敬遠する」といった考え方を持たないものと思われ、「それがロールス・ロイスらしいクルマであれば、いくらでも支払う用意がある」と捉えることが可能です。
そしてもうひとつの大きな相違点が「ロールス・ロイスの顧客は、クルマにノイズやサウンドを求めていないこと」であり、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニの顧客のようにガソリンエンジンに対する郷愁を感じていないと考えてよく、「静かで快適なクルマ」を求めているためにロールス・ロイスを購入するのだと思われます。
よって「電動化に対して拒否反応を示す顧客はいない」のかもしれません。
さらに付け加えるならば、ロールス・ロイスの顧客は(そのイメージとは裏腹に)変化に対して柔軟な人々が多いといい、それは「成功した会社経営者を顧客に持つため」だと言われます。
成功した経営者とはつまり、「世の中の変化に柔軟に対応できる人」で、けして「過去に拘り、囚われ、固執する人」ではなく、ロールス・ロイスの目指すところに共感し、それを受け入れることができる人々、というわけですね(変化に対応できているからこそ成功するのであり、対応できなければ成功を維持できない)。
参考までに、ロールス・ロイス初のEV、スペクターが「セダン」ではなく「クーペ」であったのは、より変化に対して許容性が高い、より若い人々をターゲットにしたためだと説明されています。
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これからのロールス・ロイスにはこんなクルマが登場する
そこで今回報じられているのが「今後のロールス・ロイス」。
まずは2027年にカリナンよりも小さなピュアエレクトリックSUVが登場するとされ、こちらは価格もカリナンよりも「少し安く」なるもよう。
現時点ではスペクターとパワートレーンを共有することになるのかどうかはわかりませんが、スペクターの設計が数年前になされたものであること、この新型EVの登場が数年先であること、そして革新著しいEVの世界においてはスペクターのユニットを流用せず、「次世代の」エレクトリックパワートレーンを採用するのだとも考えられます。※このエレクトリックSUVはかなりの売れ筋となりそうだ
そしてもうひとつ登場が囁かれるのが2028年登場のエレクトリックセダン。
実質的にはファントムの後継になると言われていますが、フラッグシップモデルとなるだけに大きな期待と責任がかかり、そして時期的には(先日異動が発表された)元BMWのデザイナー、ドマゴイ・デュケック氏がこれら2つの新型EVのデザインを担当すると考えて良いのかもしれません。
そして最後は「V12」で、これについては今から新型車が登場するわけではなく、カリナンを改良しながら2030年まで販売することになるとされ、2030年に販売が終了した後、その後継モデルは「計画されていない」という事実についても報じられています。
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