ブガッティは「本」までもが高価だった！競売にEB110の開発背景を紹介する限定ブックが登場し640万円で落札される。著者は前ブガッティのブランディング責任者

｜ 当初、ブガッティEB110はかつてのブガッティのように「リアホイールカバー付き」でデザインされていたようだ ｜

ここまでブガッティらしさを表現したクルマは近代に例を見ない

さて、モントレー・カーウィーク開催中には高額で落札される車両が相次いでいますが、今回は車両ではなく「本」が46,000ドル（日本円で約640万円）で落札されたというニュース。

これは110％なる出版社より刊行された「The EB110 & The Last Bugatti Racing Cars」という書籍で、内容としてはブガッティEB110の開発過程を追うものであり、全440ページ、そして当時の700枚もの写真とともに、これまで明かされなかった事実が記されることになります。

この書籍に中には700枚の写真、知られざる当時の逸話が詰め込まれている

この本の編集を行ったユリウス・クルタ（Julius Kruta）氏によれば、「この驚くべきスーパーカーの誕生、成長、そして突然の終焉、その背後にある革命的な工場など、EB110の驚くべき物語を読者に伝えるのは、テキストと同様に写真でもあります。ロマーノ・アルティオーリの、近未来的な工場で世界最高の車を作ろうという熱い野心と、その夢の悲劇的な結末の物語は、まるでハリウッド映画の脚本のようです」とのこと。

なお、このロマーノ・アルティオーリ氏というのは1987年にブガッティの商標を獲得してブガッティを蘇らせた人物であり、EB110を世に送り出したまさにその人。

イタリア人の実業家として知られますが、一時はロータスを所有していたこともあり、「エリーゼ」を発売したのも同氏の偉業のひとつとして語られます。

ブガッティEB110はブガッティへの愛ある人物によって世に送り出される

ちなみにブガッティEB110の「EB」はブガッティ創業者であるエットーレ・ブガッティ、そして「110」とはエットーレ・ブガッティの生誕100周年を指しており、さらにはブガッティの象徴的なカラーでもあるブルーを全面に押し出すなど、ロマーノ・アルティオーリ氏は「自分の作りたいクルマを作る」のではなく「そのブランドのヘリテージを理解してクルマを作る」というクルマを愛する人であることもわかりますね。※エリーゼにおいても、ロータス伝統の「E」ではじまるネーミングを採用している

参考までにですが、このEB110のデザインを行ったのはランチア・ストラトスやランボルギーニ・カウンタックを手掛けたマルチェロ・ガンディーニ氏ではあるものの、ロマーノ・アルティオーリ氏の「EB110のフロントに馬蹄形（ホースシュー）グリルをつけるべき」という主張を拒否して途中でそのプロジェクトから降りることに。

つまり、ロマーノ・アルティオーリ氏はかのマルチェロ・ガンディーニに対してもブガッティの伝統を守るという自身の主張を貫き通し、頑として惹かなかったわけですね。

さらには「比較されるものがあれば、それはブガッティではない」という創業者の言葉を表すかのように、EB110は当時「V12クワッドターボ、4WD」という他に例を見ないスペックをもって登場し、0−100キロ加速3.5秒前後、最高速と350km/hという現代のスーパーカー、しかもトップレベルに相当する驚愕の高性能ぶりを誇ったことからもその信念を見て取ることが可能です。

書籍を編集したのは前ブガッティの責任者

なお、この書籍は著者であるヨハン・プティ氏とパスカル・ヴァン・メレ氏、そして編集者のユリウス・クルタ氏が、かつてブガッティにて責任者を務めていたことから生まれたといい、以前にブガッティ最後のレーシングカーを扱った2020年の著作が高く評価されたため、今回EB110を扱ったこの本を記すことにした、とのこと。

今回このチームは「ブガッティ最後のレーシングカー（EB110はル・マン24時間ほか、いくつかのレースに参加している）を扱った私たちの本が大きな反響を引き起こしたとき、私たちはブガッティEB110の全ストーリーを網羅した本が必要であることに気づきました。そのため我々は、ロマーノ・アルティオーリやその他の重要人物の未公開写真を徹底的に集め、この伝説のスーパーカーの誕生秘話を、時には衝撃的に語ることにしたのです」。

発行部数は330部に限定され、今回出品されたのは「最初の一冊」となり、オークションの収益金はチャリティ団体へと寄付されるそうですが、今回の購入者は「ザ・パール・コレクション」のオーナー兼キュレーターが購入したものだと紹介されています。

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参照：CARSCOOPS, Bugattipage.com