| もっとも有名なメルセデス・ベンツのセダン「300E」と、もっとも有名なBMWのエンジン「M88」とのアンサンブル |
レーシングドライバーでもあったヘルベルト・ハルトゲによって1970年に設立され、1990年代のチューナーブームには大きな支持を得たハルトゲ。
BMW、ミニ、レンジローバーを得意とし、ホイールからエンジンパーツまで幅広く手掛けており、ブレイトン、ACシュニッツァーらと並んで語られたほどのチューニングブランドです。
残念ながら現在はその活動が縮小されており、2001年にハルトゲ・ジャパンが設立されるも(それまではトミタ夢工場が輸入代理店だった。一時は六本木にショールームを構えたほど)、扱っている製品は「ウルティモ」ホイールただひとつのみ。※欧州では2019年に活動を終了させたらしい
ハルトゲは「1台だけ」とんでもないクルマを作っていた
ハルトゲはチューナーでありながらも、1985年には「自動車メーカー」としての認可も受け、自身の名を冠したクルマを作ることが可能に。
そこで1988年にハルトゲはW124世代のメルセデス・ベンツ300Eをベースにしたコンプリートカーを作成することになりますが、この際に選んだパワーユニットはBMW製の「M88」直6エンジン。
このM88はBMW M1にも搭載された高性能ユニットで、排気量は3.5リッター、出力は330馬力。
もともとのエンジンが180馬力なので大幅なパワーアップを果たしたということになりますが、0-100km/h加速は6秒、最高速度300km/hというスペックを誇ります。
このクルマは「ハルトゲF1」と命名されており、エンジンスワップと出力向上だけではなく、ハンドリング向上を狙い足回りにはビルシュタイン製サスペンションも装着済み。
リアトランク内には燃料タンク(安全タンク)のようなものも見られます。
ハルトゲF1のインテリアはこうなっている
こちらはハルトゲF1のインテリア。
ダッシュボードやセンターコンソールにはウッドパネルが使用され、ステアリングホイールはハルトゲ製に。
もちろんトランスミッションはマニュアルです。
昔懐かしの「リヤトレイ上のスピーカー」。
ダッシュボードのウッドは経年劣化を感じさせ、ご覧の通りニスが剥がれた状態。
この時代の高級車に採用されていたウッドパネルはひび割れが入ることが多く、中古車を購入する際には要チェックです。
画像を見る限りではしばらく放置されていたように思われますが、ハルトゲがこのクルマを製造した後にどういった運命をたどったのか、そしてなぜ今回発見されたのかは語られず(131,307キロ、つまりけっこうな距離を走っている)、しかしそこには壮大なドラマがあるのかもしれません。
この「ハルトゲF1」は、エッセンにて6月にRMサザビーズが開催するオークションへと出品予定。
「レストアされていない」つまりオリジナルコンディションなので価値は高く、いくらで落札されるのかはちょっとした見ものだ、と思います。