| アルピナは自動車業界における数少ない「伝説」のひとつでもある |
今後はBMW傘下となりその輝きをいっそう増すことになるだろう
さて、アルピナ創業者、ブルカルド・ボヴェンシーペン氏が87歳で亡くなったとの報。
同氏は事務機器メーカーを営む父親のもとに生まれ、運転免許を取得できる年令になるとレースに参戦するために自身でBMWを改造し、特に(1962年に)1500用として開発したウェーバー製デュアル・キャブレターが有名です。
そして一連の改造はBMWの目にとまることとなり、1964年にはめでたく「BMW公認チューナー」としてのポジションを獲得したわけですね(BMWはアルピナが改造したクルマを保証することを認めた)。
その後、ブルカルド・ボヴェンシーペンは自身の会社「アルピナ」を創業
それと前後してブルカルド・ボヴェンシーペン氏は「アルピナ」を創業し、1983年にはドイツ連邦運輸省から「自動車メーカー」としての認可を受け、アルピナが製造した車両にはアルピナ専用の車両識別番号が付されることとなっています。
なお、アルピナはBMWのロードカーの改造やBMWをベースにした自社専用車両の制作で知られるものの、1960年代〜1970年代にかけてはツーリングカーレースにも参戦して大きな成功を収めており、しかし1988年にはモータースポーツ活動から撤退してロードカーへと専念することに。
アルピナの特徴としては「サーキットを攻めるスパルタンなスポーツカー」というよりは「乗り心地に優れる超高速ツアラー」という性格を持つということで、そのため最高速に関してはBMW「M」にまさるクルマがある一方、サーキットでのパフォーマンスはMモデルに軍配が上がります。
要は「アルピナのクルマはMモデルと(クルマも顧客も)被らない」のが一つの特徴でもあるのですが、そういった特性もあってBMWはアルピナを2022年に買収し、「BMWとロールス・ロイスの間を埋める」少量生産超高級ブランドとして活用することを決定します。
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なぜBMWは自社で超高級ブランドを展開しないのか
そこで気になるのが「なぜBMWは自社で超高級ブランドを展開せずアルピナを買収したのか」。
これについては明確な答えが出されていて、BMWだと「そこまで数が出ない超高級車を開発・製造するには規模が大きすぎてロスが出るから」。
一方でアルピナだと会社の規模がそう大きくはないので、少量生産車であってもモトが取れるという「経済規模の差」が存在し、BMWでは赤字になるようなビジネスでもアルピナでは黒字にて運営ができ、これがアルピナの「存在意義」というわけですね。
なお、BMWがアルピナを買収したといえど、現在の関係が2025年まで継続するという契約となっているため、2025年までは現在のアルピナが存続することとなるもよう。
ただしそこからは大きくアルピナが変革されてゆくのは間違いなく、BMWの副社長兼シリーズ・ラグジュアリー・クラスの責任者であるクリスチャン・チュルツヒェンターラー氏によれば、3シリーズをベースとするB3やD3などは存続の道を絶たれるもよう。
というのも、同氏は「25万ユーロも30万ユーロも出してアルピナを買った人が、信号待ちでB3が並走しているのを見ることに意味があるのだろうか」という発言をしているため、アルピナの価格帯は今後大きく上昇することになりそうです。
そしてこの買収はアルピナ側にもメリットがあり、というのもアルピナは(調査によって顧客が電動化車両に対する興味を持たないことがわかっていたため)電動化に対する備えが十分ではなく、しかし買収によってBMWという後ろ盾を得たことによって、電動化時代においても生き残る道が見えてきたと考えることができるのかもしれません。
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