BMWのセールス&マーケティング部門のボス、イアン・ロバートソン氏によると「テスラは健全な競争環境を自動車業界にもたらした」とのこと。
テスラはスタートアップの可能性を示し、後続のための道を作ったとしていますが、加えて「その業界には常に新しいライバルが必要で、テスラの成し遂げたことを評価している」と語っています。
たしかにテスラは電気自動車の常識を変えたと言ってよく(自動車の歴史において、ここまで短期間で何かを達成し一定のポジションを確立したメーカーはほかに無いと思う)、さらには消費者がそれを支持したことによってメルセデス・ベンツはじめとするジャーマン・スリーも考え方を余儀なくされたのも事実。
その結果BMWは「i」を、メルセデス・ベンツは「EQ」を、アウディは「e-tron」ブランドにてEVを展開することになりますが、これにはテスラの与えた影響が無いとは言えない、とぼくは考えています。
その中でもBMWは他に先駆けてEVに取り組み、しかも「既存モデルをEV化」という安易な手法ではなく、工場まで新設して「i3」と「i8」をリリース。
相当にリスクの大きなビジネスであったと思いますが、EVでの主権を握ろうと思うとこれくらいしないとダメ、と考えたのでしょうね(一方で既存プラットフォームを流用した日産リーフは当初あまり売れなかったので、EVにはやはりインパクトが必要であったと思われる)。
EVはとにかく高価になってしまい、かつ航続可能距離、充電距離や時間などガソリンエンジンンに比べて不利な乗り物。
ランニングコストは安くとも初期投資費用は大きく、そこに「既存パーツの使い回しで安く作ったEV(自動車メーカーは失敗したときのダメージを考えてコストを抑えたい)」を投入したとしても消費者が動かず、消費者が求めるのは「安いEV」ではなく「対価に見合った斬新さ」と考えられ、そこをイーロン・マスクCEOはうまく突いたのだと考えています。
価格が高くなるのであれば、いっそのこと「富裕層」のみにターゲットを絞るという戦略は斬新で、充電器である「スーパーチャージャー」も高級ホテルなど富裕層が行くような場所にしか設置しない、というのも従来の自動車メーカーの考え方からすると思いつかないような戦略であり、それが「テスラ=高級」「テスラ=富裕層が好む乗りもの」というイメージを市場に与えたのかもしれません。
そういったイメージを浸透させた上で「モデル3」という廉価版を発売するのも優れた手法といえ、「富裕層が好むものを自分たちも買える」という意識を消費者に持たせることで、他社のEVよりも優位に立つことができるのだと思われます。
とにかく、製品だけではなくそのプロモーション、戦略、販売方法、メンテナンス含めて「画期的」であったのがテスラで、これは「ずっと同じメーカーばかりで延々と過ごしてきた」自動車業界に新風を吹き込んだのは間違いなく、そういった意味でも「健全な競争環境の形成」に繋がったと言えそうですね。