| イズデラを設立したのはメルセデス・ベンツ、ポルシェでエンジニアを務めたエーベルハルト・シュルツ |
さて、1台のみが製造されたと言われるイズデラ・コメンダトーレ112i(Isdera Commendatore 112i)がRMサザビーズ開催のオークションに登場予定。
「イズデラ」はかつて存在した自動車メーカーで、ポルシェそしてメルセデス・ベンツでエンジニアを務めたエーベルハルト・シュルツ氏が(1984年くらいに)設立した会社。
なお、「ISDERA」は「Ingenieurbüro für Styling, DEsign und Racing(エンジニアリング、スタイリング、デザイン、レーシング)」を表現しており、エンブレムに「鳥」を用いたことが知られています。
最近になってこのイズデラは突如復活を宣言し、「コメンタドーレGT」を名乗る新型車を発売する、とも発表していますね。
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イズデラがこれまで世に送り出したクルマはごくわずか
そしてイズデラ設立の経緯ですが、エーベルハルト・シュルツ氏がメルセデス・ベンツに在籍していた頃に「CW311」なる市販前提のコンセプトカーを開発しており、しかしメルセデス・ベンツがこれを発売しないと決めたために同氏が個人的にこのプロジェクトを引き取り、イズデラ名義にて発売したのが「インペレーター108i」。
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ただしこのインペレーター108iは当時1億円以上のプライスタグを付けていたために販売が思うように進まず、その後にイズデラが開発したのがこのコメンタドーレ112i。
発売されていればインペレーター108iよりも高価になったに違いない
なお、インペレーター108iはメルセデス・ベンツより供給を受けた5リッターV8/5.6リッターV8(ともにM117型)、そして後期にはAMG製の5.6リッター/6リッターV8を搭載しますが、このコメンダトーレ112iに積まれるのは6リッターV12なので(M120型で、これはパガーニ・ゾンダに積まれたのと同型エンジン)、もし発売されていればインペレーター108iより高価なクルマとなったのは間違いなさそう。
デザインとしてはかなり「丸っこく」、これは空気抵抗を考慮したため。
極限まで段差や出っ張りを削り、その成果としてcd値は0.306をマークしています。
なお、空気抵抗削減のためにドアミラーすらも取り払い、後方確認はルーフ上に設置したミラーにて行なうことに。
これは「潜望鏡」と同じ原理にて、鏡面に写った後方の様子を車内から確認できるとのことですが、おそらく視野角は十分とは言えなさそう。
ちなみにワイパーすらも空気抵抗を最小限とするため、「ゼロから設計した」とされています。
面白いのは「ガルウイングドア」「潜望鏡ミラー」という、インペレーター108iと同じ構造を持つにもかかわらず、インペレーター108iでは角張ったデザイン、コメンダトーレ112iでは丸っこいデザインを与えていること。
おそらく目指すところは同じだったのだと思われるものの、アプローチが全く異なるということですね。
一部パーツはポルシェはじめ他社から流用
ちなみにヘッドライトはポップアップ式。
これを見て「おや?」と思う人も多いと思いますが、これはポルシェ968からの流用。
もちろん設立者がポルシェでもエンジニアを務めていたことに起因するのだと思われ、インペレーター108iではステアリングホイールや足回りをポルシェ928から拝借しています。
搭載されるエンジンは上述の通りメルセデス・ベンツ製の6リッターV12。
出力は400馬力、そしてトランスミッションは6速マニュアルが積まれますが、メルセデス・ベンツはこのエンジン(M120)に適合するマニュアル・トランスミッションを持たなかったため、イズデラはルーフに依頼し、ゲトラグ製の5速MTを6速へと改造して装着しています。
駆動輪は後輪のみ、最高速度は340km/h。
車体構造についての情報がなく詳細は不明ですが、見たところリアは交換スペースフレームで構成。
設計された時代を考えるとカーボンモノコックを採用していたとは考えにくく、車体全体がスペースフレームにて構成されているのかもしれません。
ワンオフだとは信じられないほど細部に至るまで丁寧な作りを持っており、世界に一台という希少性を抜きにしても、コレクション価値は高そうですね。
イズデラ・コメンダトーレ112iのインテリアはこうなっている
こちらはイズデラ・コメンダトーレ112iのインテリア。
この時代のスーパーカーとしては(ブガッティEB110同様に)平均的な作りを持っていると思いますが、その多くはメルセデス・ベンツから流用されている、とのこと。
シートは当然ながらフルバケットですが、その左右シートの「近さ」を見ても、ロールセンターに対し、かなりな配慮を行っていることがわかります。
メーターは「400km/hスケール」を採用。
コレクターズカーの範疇に入ると思われるものの、走行は10,256kmを数え、「けっこう走っている」ようですね。
イズデラ・コメンダトーレ112iはル・マン24時間レースを走る計画を持っていたというが
なお、イズデラ設立者、エーベルハルト・シュルツ氏はこのクルマをル・マンにて走らせたかったそうですが、資金不足によって断念。
実際に出走のための基金を設立していたものの、出資割合として多くを占めていた日本で「バブル崩壊」が起きたため、結果的にお金が集まらなかった、と報じられています。
参照: RM Sotheby's