【リコール情報】メルセデスAMG Oneに火災リスク──（エンジンではなく）リアウイングの欠陥により製造275台のうち8割がリコール対象に

｜　開発困難を極めたAMG Oneに新たな問題が発覚　｜

現在、メルセデスAMG Oneは「ニュルブルクリンクでは市販車最速」の存在である

F1マシンのエンジンとハイブリッドシステムを公道仕様に仕立てたという前代未聞のパワートレインを持つメルセデスAMG One。

その開発は困難を極め、2017年のコンセプト発表から5年後の2022年にようやく生産型が登場し、納車が始まったのはその1年後の2023年初頭。

メルセデス・ベンツのCEOでさえ、「このプロジェクトを承認したときは酔っていたに違いない」「これほどまでの困難が待ち受けているのであれば、開発にゴーサインは出さなかった」と語ったほどですが、そんなAMG Oneに大規模リコールという新たな問題が浮上し、さらにメルセデス・ベンツを悩ませる事態となっています。

問題の原因はリアウイングの油圧ライン

今回のリコールは、ドイツ連邦自動車交通局（KBA）により発表されたもので、リアスポイラー（可動式リアウイング）の油圧ラインにスプリットピン（固定ピン）が欠落している可能性があるとのこと。

この不具合により、油圧液が漏れ、近くの高温部品に触れて火災につながる危険性があるとされ、リコール対策となる修理内容は「ピンが正しく装着されているかを確認し、必要に応じて取り付ける」というもので、作業時間は約90分とされています。

対象となるメルセデスAMG oneは275台中219台──ほとんどがドイツ国内に

AMG Oneは全世界で275台のみが生産される超限定車。

しかし、今回のリコールではその約80％にあたる219台が対象となっていますが、うち183台がドイツ国内に登録されており、オーナーにはメルセデスAMGからの連絡後、正規サービス工場での点検が必要になります（納車がドイツ国内に集中しているのは、一部の主要な国や地域ではこのクルマを合法的に登録できないため）。

対象車両は2022年12月12日〜2025年5月9日の間に製造された個体だとされ、すべての車両はイギリス・コヴェントリーにある、メルセデスAMGとマルチマチック社とが共同運営する専用工場で手作業により組み立てられています。

火災との直接的な関連性は否定

これまでにAMG Oneが2件の火災事故に見舞われているものの、KBAは今回のリコール原因との直接的な因果関係はないとしており、リコール文書には実際に「これまでに油圧ピンの欠落による火災報告はない」と記載されているようですね。

• 1台目：2023年5月、英国でトレーラー火災により焼失
• 2台目：2025年5月、ドイツで路上火災により焼失

AMG Oneとはどんなクルマだったのか？

AMG Oneは、ルイス・ハミルトンがドライブしたF1マシンから移植された1.6L V6ターボエンジンにハイブリッドユニットを組み合わせたという「まさに"F1マシンの公道版」ともいえるハイパーカー。

このエンジンをストリートリーガル仕様にするには排ガスや騒音など数々の規制をクリアする必要があり、開発はまさに前人未踏に領域に踏み込むため「困難の連続」であったこともよく知られています（開発途中、よく”動かなく”なった様がスクープされていた）。

納車開始までに約5年を要した背景には、その異次元のメカニズムがどれほど過酷で繊細であるかを物語っていますが、今回のリコールは「もっとも開発に苦労したパワートレイン」ではなく、アクティブエアロが問題というわけですね。

あわせて読みたい、メルセデスAMG one関連投稿

参照：Motor1