| おそらくかなり価格は高そうだが、きっとそれだけの価値はある |
たった一杯のコーヒーがこのオーナーの人生を変えることに
さて、ポルシェがドバイにあるコーヒーショップ「DRVN by PORSCHE(ドリヴン・バイ・ポルシェ)」を紹介。
このカフェはもともとラシッド・アル・ファヒム氏という人物がはじめたコーヒーショップであり、もともとポルシェのファンだったこと、そして学生時代にコーヒーの探求に目覚めてしまったことからポルシェをテーマにしたカフェを2021年秋に始めたそうですが、そのクオリティの高さにポルシェが共感し、そこで両者が提携することとなったもよう。
ドリヴン・バイ・ポルシェはドバイ・マリーナの沖合、ブルーウォーターズ島にある世界最大の観覧車「ドバイ・アイ」のすぐ横に位置し、次にドバイを訪れた際にはぜひ行ってみたい場所がまた増えたということになりそうです。
ポルシェは伝統とダイナミズムが完璧に、そして独自のバランスにて成り立っている
ドリブン・バイ・ポルシェの店内は広々としており、その中でもひときわ目を引くのがガラス製ショーケースに収められたクラシックポルシェですが、ラシッド・アル・ファヒム氏が目指したのが「素晴らしいクルマ、そして極上のコーヒーとを楽しめる情熱的なスペース」。
さらに同氏は「人生は短く、心に燃え上がった情熱を追求せずにはいられないのです」と語っており、自身の人生を全速で駆け抜ける覚悟を決めた人物の一人でもあるようですね。
なお、ラシッド・アル・ファヒム氏の「クルマ好き」はどうやら遺伝のようで、というのも彼の父親はアブダビのガレージに100台以上のクラシックカーを収めるコレクターだから。
そして息子であるラシッド・アル・ファヒム氏は997世代と991世代という2世代に渡るポルシェ911GT2 RSを所有しており、このほかにも1990年式の964型911をレストア中なのだそう。
さらに同氏は「ポルシェとは伝統とダイナミズムが完璧に、そして独自のバランスにて成り立っている」ブランドだとしていますが、中東にはポルシェのファンが非常に多く、そしてポルシェについては「それぞれのファンがそれぞれの理由で」ポルシェに惚れ込んでいるところが興味深い、と思います。
コーヒーは中東の文化のひとつ
ラシッド・アル・ファヒム氏は「コーヒーは、アラブ諸国にて何世紀ものあいだ続いてきた、おもてなし文化の一部」だと述べており、ポルシェは以下のように紹介しています。
コーヒーという名は元々アラビア語の“カフワ”に由来し、2015年にはアラブ首長国連邦とサウジアラビア、オマーン、カタールがアラビカ・コーヒーをユネスコの人類無形文化遺産代表リストに登録したほど、この地域の文化に深く根差しています。アラブ諸国においてコーヒーは欧米とは異なる方法で楽しまれます。厳選された緑色の生豆を鍋やドラム缶で手煎りし、それを挽いた粉をダラーというコーヒーポットで薫り高く淹れるのです。飲み方にも茶道のような明確なルールがあり、ホストは常に左手でポットを持ち、右手で小さなカップ“フィンジャン”に3分の1ほど注いで最も重要な(あるいは最も年長の)ゲストから順番に渡していくのです。コーヒーにはナツメヤシなどのお菓子が添えられます。
なお、ラシッド・アル・ファヒム氏の祖母は今でも自身で栽培したコーヒー豆を手で摘み取り、自身で焙煎しているといいますが、同氏がコーヒーに目覚めたのは地元のアブダビではなく、アメリカに留学していた際だと言います。
「情熱を人に教えることはできない」
それまで、そしてアメリカでは誰もがチェーン店のコーヒーを紙コップで飲んでいたものの、ある日友人がアラビカ豆のエスプレッソを飲ませてくれるカフェに連れて行ってくれ、そこで出てきたエスプレッソを一口飲んだ瞬間に「人生が変わった」。
そこで「もう元には戻れない」と感じた彼はエスプレッソマシーンを買って研究を続け、帰国してからはエミレーツ航空のパイロットとして勤務を重ね、そしてようやく31歳の折に自身のカフェをオープンしたそうですが、この思い切った転身には周囲が皆反対したといい(わかる)、しかし現在は当然のごとく後悔はなく、大きな成功を収めています。
現在このドリヴン・バイ・ポルシェでは品種ごとに細かく焙煎度合いを決め厳密に管理しているそうですが、提供するのは高地産のアラビカ・コーヒーのみで、コーヒーチェーン店で使用しているようなロブスタ種は使用していない、とのこと。
「最高のものだけを提供したい」という信念を貫いた結果、コーヒーにうるさい中東の人々から高い評価を得ることになり、そしてポルシェからも認められるまでに至り、同氏が語る「人に情熱を教えることはできません。でも、新しいことに対してオープンな姿勢を持つことを奨励することはできるのです」という言葉が印象です。
参照:Porsche