| たしかにポルシェの考える「ハイパーカー」ではないかもしれないが、ガソリン時代の終焉にぜひ発売してほしかった |
ポルシェの考えるハイパーカーは「次の時代に向けた、新しいソリューションを示すものでなければならない
さて、ポルシェが「ケイマンをベースとし、5リッター水平対向8気筒ツインターボエンジンを搭載したハイパーカーを発売する計画があった」とコメント。
これはポルシェにてプロジェクトマネージャーを務めるマルコス・マルケス氏が語ったもので、ポルシェが4気筒エンジンを搭載した「718ケイマン」の開発と発売にGOサインを出したのと同時期に、ケイマンに「水平対向8気筒」を積むという計画が持ち上がったのだそう。
「そのクルマは、すごい音を出していました」
そして驚くべきは、この「ケイマンに5リッター水平対向8気筒ツインターボエンジンを押し込んだ」ハイパーカーが実際に試作されたことであり、このエンジンは9,000rpmのレッドラインを誇り、最高出力750ps、最大トルク1,000Nmという途方もないパワーを発生させ、しかもトランスミッションはなんと「マニュアル」。
マルコス・マルケス氏いわく「それはクレイジーなクルマで、音もすごかった」とのことで、ポルシェは実際にヴァイザッハ近郊の路上にて1年以上テストした後、突然このプロジェクトを中止することになったといいます。
なお、ポルシェは2020年に突如「実現しなかったコンセプトカー」として相当数のプロジェクトを公開していますが、その中のひとつには「2016年に考えられたデザインスタディ、ポルシェ・ル・マン・リビングレジェンド(下の画像)」が含まれており、これが同氏のいう「クレイジーなクルマ」だったようですね。
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なお、プロジェクトが中止された理由は「ポルシェが、そのクルマは、そのときにふさわしいクルマではなかったと判断したため」だと語っていますが、その意図については下記のとおり。
「私たちはエンジニアリングカンパニーであり、常に新しい答えや異なる解決策を探し求めています。そして、その答えがその時に必要でないこともあります。しかし、それはすべてエンジニアリングプロセスの一部なのです。それがポルシェを自動車会社としてユニークなものにしているのです」。
つまり、ポルシェのハイパーカーとは、常に新しいソリューションを示すものでなければならず、単に軽量化やパワーアップという手段によってパフォーマンスを向上させただけのクルマであってはならないということになり、それは「ハイブリッド」という新しい要素を取り入れた918スパイダーを見ても明らかかもしれません。
言い換えれば、すでにあるハードウェアの焼き直しではなく、新しいテクノロジーを導入する必要があるということでもあり、そしてこの「ケイマンに5リッター水平対向8気筒ツインターボエンジンを押し込んだクレイジーなクルマ」には未来を示唆するものがなく、それがポルシェにとって「今、この瞬間にふさわしいハイパーカーではない」と判断させた理由なのでしょうね。
ただしポルシェにとってのハイパーカーは「ビジネスの中心である」
ただ、ポルシェCEO、オリバー・ブルーメ氏によれば「ポルシェにとってのハイパーカーはビジネスのコアでもある」。
これは単にそのパフォーマンスを示すだけではなく、エンジニアリングカンパニーとしての未来を示す「象徴」としての存在であるべきという意味を含んでいるのだと思われ、しかし現在は未来が不透明な上、未来を示すための技術もまだまだ途上にあるものと思われます。
たとえば合成燃料が認められるこで内燃機関の寿命が伸びるなど可能性が拡がったこと、一方で間違いなくやってくる100%電動化時代においてトップランナーとなれるようなバッテリー技術がいまだ開発なされていないこと(今現在トップの技術であっても、数年後にはもう古くなっている可能性が高い)などが挙げられ、ハイパーカーは発売された瞬間だけではなく、発売された後も変わらぬ輝きを放ち続ける必要があり、すぐに陳腐化するようなものであってはならないため、ある程度安定した(未来が見えている)環境が必要なのかもしれません。
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こういった事情を鑑みるに、今の時代そのものが「ハイパーカーを発売するにふさわしくない」と考えることもでき、ポルシェがハイパーカー計画を「いったんさておく(2025年以降にならないと発売できない)」という判断を下したことにも理解ができますね。
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