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ポルシェ2025年第3四半期販売実績:販売台数は6%減なるも電動化率35%超え、市場の課題と「価値重視」「量より質」戦略が明確に

ポルシェ

| 直近ではポルシェの電動化比率が35.2%へ大幅に上昇 |

概況:電動化は加速も、世界販売台数は微減

ポルシェAGは、2025年最初の9ヶ月間(1月〜9月)の世界納車台数が合計212,509台となり、前年同期比で6%の減少を記録したものの、困難な地政学的・経済的状況を考慮すると「期待通りの水準」を維持していると報告。

一般に欧米の企業、そして経営陣は業績に加え「株価」にも責任が問われ(そして報酬が株価に連動することも多い)、よって業績発表時には「実際には悪い状況」であったとしても、その中において少しでも「明るいネタ」を混ぜることが常となっており、今回のポルシェだと「落ち込んだとはいえ期待通り」とすることで投資家の不安を和らげようとしているのかもしれません。

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そしてこの期間で最も顕著な進展は、電動化率の大幅な向上です。

  • 総電動化率: 35.2%(前年比+12.8ポイント)
  • 完全電動車(BEV): 23.1%
  • プラグインハイブリッド車(PHEV): 12.1%

ポルシェAGのセールスおよびマーケティング担当役員であるマティアス・ベッカー氏は以下のようにコメントし、今後の製品ラインナップへの自信を強調することに。

「今後数カ月間、お客様は多くの素晴らしい製品提供を期待できます。先日IAAで発表した新型911ターボSはブランドの核を強化します」


地域別販売実績:北米は成長、中国と欧州は課題

市場別に見ると、ポルシェの販売分布は引き続きバランスが取れていますが、地域によって明確な傾向が見られます(ただ、昨年の反動や一部モデルの販売終了・入れ替えなどの特殊要因も存在する)。

地域2024年(1-9月)2025年(1-9月)前年比
世界合計226,026台212,509台-6%
北米61,471台64,446台+5%
欧州 (ドイツ除く)52,465台50,286台-4%
ドイツ26,838台22,492台-16%
中国43,280台32,195台-26%
海外・新興市場41,972台43,090台+3%
  • 北米: 最大の販売地域であり続け、5%増と堅調に成長
  • 海外・新興市場: 3%増を達成し、過去最高の納車台数を記録
  • 中国: 高級車市場の競争激化と市場環境の厳しさから26%の大幅な減少。ポルシェは引き続き「価値重視」の販売戦略に焦点を当てることを強調
  • ドイツ・欧州: 前年の反動や、EUのサイバーセキュリティ規制による718とマカン(ICEモデル)のモデル供給制限が減少の一因となっている
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モデルライン別販売実績:マカンが牽引、電動モデルが台頭

モデルライン別では、マカンが全体の販売を牽引しており、引き続き「ポルシェにおける、もっとも重要なモデル」に。

モデルライン納車台数(1-9月)前年比主な変動要因
マカン (Macan)64,783台+18%完全電動マカン(36,250台)の貢献(全体の55%超)。ICEモデルは欧州外で販売継続。
カイエン (Cayenne)60,656台-22%前年のキャッチアップ効果の反動。第4四半期に新型フル電動カイエン発表予定。
91137,806台-5%安定した需要を維持。
パナメーラ (Panamera)21,243台-1%安定。
718 (Boxster/Cayman)15,380台-15%EU規制による供給制限が主因。現行ICEモデルは2025年第4四半期に生産終了予定。
タイカン (Taycan)12,641台-10%-

特筆すべきモデル動向

  1. マカンの成功: 納車されたマカンは55%以上が完全電動モデルであり、電動化への移行が市場で受け入れられていることを示している
  2. 718の終焉: 718ボクスター/ケイマンのICE(内燃機関)モデルは2025年第4四半期に生産が終了。これは、EUのサイバーセキュリティ規制に対応するためのアップグレードを断念したことが大きな要因
  3. カイエンの未来: 第4四半期には、現行モデル(ICE/PHEV)と並行して、新型フル電動カイエンが発表される予定

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今後の戦略:柔軟な製品決定と個別化の拡大

ポルシェは、電気自動車の普及ペースが鈍化している市場の現状に対応し、今後数年間、より柔軟な製品決定を行う方針を示しています。

ベッカー氏は、「我々は世界中の多様な顧客ニーズに対応し、電動モビリティの普及の減速に対応しています」と述べ、「『量よりも価値(Value over Volume)』の戦略」に沿って、需要と供給の管理に注力する姿勢を再確認しており、この方針は徐々にぼくらの目にするところにあらわれてくるのかもしれません。

また、顧客からの個別化(インディビジュアライゼーション)需要の増加に対応するため、「ポルシェ・エクスクルーシブ・マニュファクチャー」や「ゾンダーヴンシュ・プログラム」といった特別注文プログラムの能力をさらに拡大していく意向も示しており、フェラーリに近いビジネスモデルへとシフトするであろうことも予感させます。

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参照:Porsche

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