
| フェラーリが投資家向けキャピタル・マーケッツ・デイを開催 |
2030年戦略:収益性目標を1年繰り上げ達成
2025年10月9日、フェラーリ N.V.はキャピタル・マーケッツ・デイを開催し、その場にて「初のEV」、エレットリカの情報提供、そして現在の状況に加え、2030年末に向けた収益性目標を発表することに。
注目すべきは、同社が現在進めている2022年〜2026年事業計画について、2026年の収益性目標を1年早く達成する見込みであるとして、2025年の業績ガイダンスを上方修正した点です。
この成功を背景に、フェラーリは2030年に向けてさらに野心的な「2030年戦略計画」を打ち出した、というのが今回のイベントの骨子です。
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2030年 財務目標:EBITDA率40%超を達成へ
まず、フェラーリは、2030年までの戦略計画において以下の主要な財務目標を掲げています。
項目 | 2030年目標 | 備考 |
純売上高 (Net Revenues) | 約90億ユーロ | 年平均成長率(CAGR)約5% |
調整後EBITDA | 少なくとも36億ユーロ | マージン(利益率)少なくとも40% |
調整後EBIT (営業利益) | 少なくとも27.5億ユーロ | マージン少なくとも30% |
累積設備投資 (2026-2030) | 約47億ユーロ | 次世代スポーツカーに重点投資 |
累積産業フリーキャッシュフロー (2026-2030) | 約80億ユーロ | キャッシュコンバージョン率50%以上 |
収益成長のドライバー
純売上高の成長(2030年に約90億ユーロ)は、主に以下の要因によって牽引されることについても公表されており、これらは現在推し進めている計画とも合致しているため、「無理がない」現実的な見込み出るとも考えられます。
- 製品ミックスの強化: スポーツカーおよび関連活動によるもので、受注残によってその成長は確実視されている
- 個別化(パーソナライゼーション): リミテッド・エディションモデルを含む、製品ラインナップの充実と顧客の個別化需要が利益率を押し上げる。
- レーシングおよびライフスタイル: これらの部門からの収益も、業績にプラスに貢献する見込み
利益率の向上
EBITDAは少なくとも36億ユーロ、EBITDAマージンは(利益率)少なくとも40%を目指す、とのこと。
参考までに、フェラーリは自動車業界屈指の利益率を誇り、現時点で24.3%という数字を誇り、2位のスズキ(9.3%)に大きくさをつけていることも報じられていますね(上場していないため正確な数字は公開されていないが、ランボルギーニもフェラーリにかなり近い数字を出しているものと推測される)。
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- これは強力な製品ミックスと個別化が主な要因で、販売台数(Volume)も利益に貢献するものの、その割合は限定的である(つまり利益増加について、1台あたりの利益増加のほうが大きな要因となる)
- 産業コストと研究開発費は増加するものの、これは主に次世代スポーツカーのための製品・インフラ開発、減価償却費、およびレーシング活動への投資によるものであり、前向きな増加である(多くの普及価格帯の自動車メーカーのように、環境規制への大応など、利益に直結しにくい方面への投資ではない)。
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欧州自動車業界「規制対応のため、25%が“価値を生まない”仕事に追われている」→「日本のように軽自動車を導入し、別の自動車カテゴリを作るべき」
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株主還元:総額70億ユーロの大型プログラム
フェラーリは、この強力な収益性に基づき、株主還元を大幅に強化することを決定し、2026年〜2030年の計画期間全体で、総額約70億ユーロを株主に還元する予定だとされ、この還元は以下の通りに均等に配分されます(フェラーリからの配当に期待)。
- 配当金の増額: 2025年度の年次決算から、調整後純利益に対する配当性向を35%から40%に引き上げます。これにより、2027年〜2031年で累積約35億ユーロの配当を見込む
- 自社株買い: 2026年から計画終了までに実行される約35億ユーロの新たな自社株買いプログラムを開始
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これでまた新しいフェラーリ買えるかな・・・。フェラーリの株価が史上最高値、500ドルを超える
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長期的なイノベーションへのコミットメント
フェラーリは計画期間を通じて累積約47億ユーロの設備投資を実施し、その大部分を次世代のスポーツカーに充てることで製品における継続的なイノベーションを約束していますが、この戦略は「高成長、高収益性、そして大規模な株主還元」という三位一体。
これによってフェラーリがラグジュアリー・ブランドとしての地位をさらに確固たるものにすることを目指しており、今後の成長には大いに期待したいところでもありますね。
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参照:Ferrari