
| ポルシェはそのオーナーのために「専用のカラーを調合してくれる」サービスを展開している |
個人の「思い出」をポルシェのボディカラーに
実家の倉庫を整理をしていると、祖母の古いワンピースや叔父のスーツケース、曾祖父の眼鏡など、思い出の品が次々と出てくることがあるかもしれません。
そしてふと、青春時代を思い出させるアイテムに目が留まることもあるかもしれません。
たとえばそう、あのジーンズ。
30年前には流行していたものの、今では10代の若者の目にはちょっと刺激が強すぎる「ストーンウォッシュ(また流行の兆しもあるけれど)」とか。
その瞬間、ぼくらの頭の中に電球が灯り、「あの色ペイントしたポルシェに乗れたならば」と考えることだってあるかもしれません。
ポルシェの「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」とは?
そこで出番となるのがポルシェが用意するカラーオーダーシステム「ペイント・トゥ・サンプル・プラス(Paint to Sample Plus)」。
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このプログラムでは、オーナーが自ら指定した任意の色──お気に入りのマニュキュアやリップ、バッグ、それこそ古びたジーンズの色まで──を再現して自分だけの1台を作り上げることが可能となり、ポルシェの「ソンダーヴァーンシュ(Sonderwunsch=特別注文)」部門や「ポルシェ・クラシック」などを通じて、クラシックカーであっても新車であってもオーダーが可能です(ただし、その代わりに相当な出費を覚悟しなければならない)。
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Image:Porsche
「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」はどれくらい高額なのか?
より一般的な「ペイント・トゥ・サンプル」だと、すでに存在するカラーパレットの中からカラーを選ぶため、これは比較的安価(日本円でおよそ190万円〜)なサービスです。
しかし、さらに一歩踏み込んだ「プラス」となると話は変わり、例えば、30年前の色あせたジーンズを持参して「この色に塗ってほしい」と依頼した場合、(それが可能とはなるものの)費用はなんと日本円で約400万円〜となり、他の自動車メーカーの新車を購入することができる価格にものぼってしまうわけですね。
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なぜ「ペイント・トゥ・サンプル」はそんなに高いのか?
色の再現には、非常に繊細かつ時間のかかる作業が必要です。
ポルシェでは、車体や外装パーツに使われるアルミ、プラスチック、カーボンファイバーなど、異なる素材すべてにおいて完全に同一の色に見えるよう、色の成分や塗装技術を微調整しています。
さらに、実際に車に塗装する前に、複数のサンプルパネルを製作し、日光や人工照明下での見え方を厳しくチェックしており、合格しない場合は最初からやり直すことになり、これらのプロセスを総合すると「数年」という時間が必要であると言われています。
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お気に入りのジーンズの色、再現できる?
顧客が色のサンプル(ジーンズ、バッグ、ネイルカラーなど)を提供すると、まずポルシェは技術的な再現が可能かどうかを評価する「実現可能性調査」を行いますが、色の構成が複雑であればあるほど、この工程にかかる時間は長くなり、平均で9か月ほどかかるとされています。
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より完全なカラーの再現のために
最終的な色が完成するまでには何度も試作・調整・試験が繰り返され、ポルシェの厳格な基準をクリアしなければならず、納得のゆくまで続けられ、途中で妥協することは一切ありません。
塗装前には「層の厚さ」まで定義され、それに基づき実車に試し塗装を施したうえで顧客に提示されますが、色味に納得がいかなければ、この時点でポルシェ側が再開発費用を負担する場合もあるのだそう。
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Image:Porsche
世界に一台だけのポルシェを
こうして「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」を通じ、そのポルシェは「指定されたカラー」で命を得ることになり、このプロセスは時間もお金もかかるものの、「世界に一台」という自分だけの特別な911を手にする喜びは何物にも代えがたいのかもしれません。
Image:Porsche
近年では、1990年代の「マリタイム・ブルー」や「ルビースター」、「ミントグリーン」など、往年の人気色の復刻もブームとなっており、ペイント・トゥ・サンプルによって、新車にこれらのレトロな色を施すことも可能になっていて、納車までの期間は約3か月延びますが、それだけの価値があると認識しているからこそ、多くのオーナーが「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」を選ぶのでしょうね。
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ちなみにですが、718、911、タイカン向けには130色以上、パナメーラ、マカン、カイエン用には50色以上のオプションが用意されており、ポルシェの公式サイトではカラーシミュレーションも可能。新車を買う予定がなくても、色選びだけでも十分に楽しめます。
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古びたジーンズでも、口紅の色でも──そのオーナーだけの記憶や感性が、ポルシェの塗装に命を吹き込むこととなり、真の意味での「カスタマイズ」を体験したいなら、「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」は究極の選択肢だと言えそうですね。
なお、ポルシェがここまで「色」にこだわるのは「そのオーナーの夢」を実現したいからだとされ、そして夢を視覚的に表す最も有効な手段が「ボディカラー」だから。
ただ、ポルシェはボディカラーのみにこだわらず、様々な手法にてオーナーの夢を形として届けようとしており、それが「エクスクルーシブ マヌファクトゥア」「エクスクルーシブ マヌファクトゥア ソンダーヴァーシュ」というわけですね。
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参照:CARBUZZ