>ポルシェ(Porsche)

あの色をもう一度──好みの色を自在に再現できるポルシェの「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」プログラムとは?

あの色をもう一度──好みの色を自在に再現できるポルシェの「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」プログラムとは?

| ポルシェはそのオーナーのために「専用のカラーを調合してくれる」サービスを展開している |

個人の「思い出」をポルシェのボディカラーに

実家の倉庫を整理をしていると、祖母の古いワンピースや叔父のスーツケース、曾祖父の眼鏡など、思い出の品が次々と出てくることがあるかもしれません。

そしてふと、青春時代を思い出させるアイテムに目が留まることもあるかもしれません。

たとえばそう、あのジーンズ。

30年前には流行していたものの、今では10代の若者の目にはちょっと刺激が強すぎる「ストーンウォッシュ(また流行の兆しもあるけれど)」とか。

その瞬間、ぼくらの頭の中に電球が灯り、「あの色ペイントしたポルシェに乗れたならば」と考えることだってあるかもしれません。

ポルシェの「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」とは?

そこで出番となるのがポルシェが用意するカラーオーダーシステム「ペイント・トゥ・サンプル・プラス(Paint to Sample Plus)」。

【限定モデル】カナダを称える特別なポルシェ911 GT3 RSが登場。ペイントも内装もカナダ愛が満載
【限定モデル】カナダを称える特別なポルシェ911 GT3 RSが登場。ペイントも内装もカナダ愛が満載

Image:Porsche | カナダを讃える特別仕様のポルシェ911 GT3 RSが登場 | 限定1第、チャリティイベントのために製作される ポルシェは数々の特別仕様車をリリースしていますが、その多 ...

続きを見る

このプログラムでは、オーナーが自ら指定した任意の色──お気に入りのマニュキュアやリップ、バッグ、それこそ古びたジーンズの色まで──を再現して自分だけの1台を作り上げることが可能となり、ポルシェの「ソンダーヴァーンシュ(Sonderwunsch=特別注文)」部門や「ポルシェ・クラシック」などを通じて、クラシックカーであっても新車であってもオーダーが可能です(ただし、その代わりに相当な出費を覚悟しなければならない)。

世界に1台だけ|内外装がレッドとピンクのポルシェ911 S/T”ハイカスタム”が登場。ボディカラーはイチゴを意味する「フレーズ(イチゴ)」
世界に1台だけ|内外装がレッドとピンクのポルシェ911 S/T”ハイカスタム”が登場。ボディカラーはイチゴを意味する「フレーズ(イチゴ)」

Image:Porsche Zentrum Hegau-Bodensee(Instagram) | このこだわりを実現してしまうポルシェは「さすが」である | 【一台限定】ポルシェ911 S/T「フレ ...

続きを見る

51758634074_a978390f3b_o

Image:Porsche

「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」はどれくらい高額なのか?

より一般的な「ペイント・トゥ・サンプル」だと、すでに存在するカラーパレットの中からカラーを選ぶため、これは比較的安価(日本円でおよそ190万円〜)なサービスです。

しかし、さらに一歩踏み込んだ「プラス」となると話は変わり、例えば、30年前の色あせたジーンズを持参して「この色に塗ってほしい」と依頼した場合、(それが可能とはなるものの)費用はなんと日本円で約400万円〜となり、他の自動車メーカーの新車を購入することができる価格にものぼってしまうわけですね。

ポルシェ
ポルシェのオプション装着金額は「5年で倍」。特に重要な位置を占めるボディカラー「ペイント・トゥ・サンプル(PTS)」「PTS プラス」とは

| ポルシェはさらに「オプション装着率を向上させてゆく」方針を採用している | た歯科に最近は「色とりどりのポルシェ」が増えてきた さて、近年のポルシェが力を入れているのが「オプションプログラムの提供 ...

続きを見る

なぜ「ペイント・トゥ・サンプル」はそんなに高いのか?

色の再現には、非常に繊細かつ時間のかかる作業が必要です。

ポルシェでは、車体や外装パーツに使われるアルミ、プラスチック、カーボンファイバーなど、異なる素材すべてにおいて完全に同一の色に見えるよう、色の成分や塗装技術を微調整しています。

さらに、実際に車に塗装する前に、複数のサンプルパネルを製作し、日光や人工照明下での見え方を厳しくチェックしており、合格しない場合は最初からやり直すことになり、これらのプロセスを総合すると「数年」という時間が必要であると言われています。

ポルシェ・マカン
ポルシェは年間12色もの「新色」をボディカラーに採用!ただし考案から採用までは耐候テストに2年以上、そしてインスピレーションは「家具業界から」

| ボディカラーを考える仕事は楽しそうだが、楽ではなさそうだ | 採用される「3年後」を見越してボディカラーを開発せねばならない この10年ほど自動車の人気ボディカラーというと「ホワイト、ブラック、シ ...

続きを見る

53473325656_2fd6d2f54a_b

Image:Porsche

お気に入りのジーンズの色、再現できる?

顧客が色のサンプル(ジーンズ、バッグ、ネイルカラーなど)を提供すると、まずポルシェは技術的な再現が可能かどうかを評価する「実現可能性調査」を行いますが、色の構成が複雑であればあるほど、この工程にかかる時間は長くなり、平均で9か月ほどかかるとされています。

ポルシェのボディカラー
ポルシェは過去に「本物の魚の鱗」を使用したボディカラーを採用していた!現代のデザイナーが「過去のカラーを復活させる苦労」を語る

| 昔は可能だったことも、現代では「規制」によって再現できない例もある | さらに以前とはクルマに使用される素材も変わり、塗料の「乗り」の変わってきた さて、ポルシェは比較的ボディカラーに強いこだわり ...

続きを見る

より完全なカラーの再現のために

最終的な色が完成するまでには何度も試作・調整・試験が繰り返され、ポルシェの厳格な基準をクリアしなければならず、納得のゆくまで続けられ、途中で妥協することは一切ありません。

塗装前には「層の厚さ」まで定義され、それに基づき実車に試し塗装を施したうえで顧客に提示されますが、色味に納得がいかなければ、この時点でポルシェ側が再開発費用を負担する場合もあるのだそう。

2
ポルシェ911GT3 RSのリザードグリーンはこうやって開発された!「ニューモデルのボディカラーは先代モデルと似たものであってはならない」

| ポルシェはボディカラーに特段のこだわりがあるようだ |  https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49908590947/in/dateposted ...

続きを見る

Image:Porsche

世界に一台だけのポルシェを

こうして「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」を通じ、そのポルシェは「指定されたカラー」で命を得ることになり、このプロセスは時間もお金もかかるものの、「世界に一台」という自分だけの特別な911を手にする喜びは何物にも代えがたいのかもしれません。

51805154411_15959d6915_o

Image:Porsche

近年では、1990年代の「マリタイム・ブルー」や「ルビースター」、「ミントグリーン」など、往年の人気色の復刻もブームとなっており、ペイント・トゥ・サンプルによって、新車にこれらのレトロな色を施すことも可能になっていて、納車までの期間は約3か月延びますが、それだけの価値があると認識しているからこそ、多くのオーナーが「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」を選ぶのでしょうね。

ポルシェ「ペイント・トゥ・サンプル」プログラムに新色10色追加。グリーンを中心にカラフルな特注塗装が追加される。そのオプション金額とは
ポルシェ「ペイント・トゥ・サンプル」プログラムに新色10色追加。グリーンを中心にカラフルな特注塗装が追加される。そのオプション金額とは

Image:Porsche | ポルシェの人気オプション「ペイント・トゥ・サンプル」に新たな10色が登場 | やはりこれからは「グリーン」が来るのかも ポルシェのカスタムペイントプログラム「ペイント・ ...

続きを見る

ちなみにですが、718、911、タイカン向けには130色以上、パナメーラ、マカン、カイエン用には50色以上のオプションが用意されており、ポルシェの公式サイトではカラーシミュレーションも可能。新車を買う予定がなくても、色選びだけでも十分に楽しめます。

新型ポルシェ911の価格とコンフィグレーターが公開、カレラGTSだと車両価格2254万円に対しフルオプションだと総額3398万円まで上昇することが明らかに
新型ポルシェ911の価格とコンフィグレーターが公開、カレラGTSだと車両価格2254万円に対しフルオプションだと総額3398万円まで上昇することが明らかに

| しかしこのオプション金額もフェラーリに比較すると「可愛いもの」である | 意外とポルシェのオプション価格は(車両価格に比較して)値上がりしていない さて、ポルシェジャパンが早速新型(992.2)9 ...

続きを見る

古びたジーンズでも、口紅の色でも──そのオーナーだけの記憶や感性が、ポルシェの塗装に命を吹き込むこととなり、真の意味での「カスタマイズ」を体験したいなら、「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」は究極の選択肢だと言えそうですね。

なお、ポルシェがここまで「色」にこだわるのは「そのオーナーの夢」を実現したいからだとされ、そして夢を視覚的に表す最も有効な手段が「ボディカラー」だから。

ただ、ポルシェはボディカラーのみにこだわらず、様々な手法にてオーナーの夢を形として届けようとしており、それが「エクスクルーシブ マヌファクトゥア」「エクスクルーシブ マヌファクトゥア ソンダーヴァーシュ」というわけですね。

L1016380

ポルシェが個人オーナーのために「当時存在しなかった」993スピードスターをワンオフにて製作。993ターボ、993RSのほか最新要素も取り入れる
ポルシェが個人オーナーのために「当時存在しなかった」993スピードスターをワンオフにて製作。993ターボ、993RSのほか最新要素も取り入れる

Image:Porsche | この993スピードスター「LT」には細部に至るまでオーナー、そしてポルシェの愛情と情熱が込められている | 当時は一般的ではなかった「ブラックアクセント」、最新の「クワ ...

続きを見る

合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿

ポルシェは常に「顧客の夢を形にする」クルマを作ってきた。最初の特別注文は「リヤワイパーをつけてほしい」、それがいまの「エクスクルーシブ・マニュファクチャー」にまで発展
ポルシェは常に「顧客の夢を形にする」クルマを作ってきた。最初の特別注文は「リヤワイパーをつけてほしい」、それがいまの「エクスクルーシブ・マニュファクチャー」にまで発展

Image:Porsche | ポルシェは常に顧客の意見を聞き、それが忠誠心の高いファン層を構築することに | 実際のところ、これまでには多彩なワンオフモデルが製造されている さて、ポルシェは業界屈指 ...

続きを見る

ポルシェはその75年の歩みについて「夢」「カラー」を重視。「夢を現実に変える人は、世界をより豊かで、大胆で、色彩豊かな場所にするのです」
ポルシェはその75年の歩みについて「夢」「カラー」を重視。「夢を現実に変える人は、世界をより豊かで、大胆で、色彩豊かな場所にするのです」

| そう言われると、次にポルシェを買うときにはカラフルなボディカラーを選びたくなる | ポルシェが多様なカラーを設定するのは「クルマを売るためではなく、感情を生み出すため」 さて、ポルシェはここ最近「 ...

続きを見る

【世界に1台だけ】ポルシェが“公道を走れるレーシングカー”963 RSPを発表、室内には「カップホルダー」も
【世界に1台だけ】ポルシェが“公道を走れるレーシングカー”963 RSPを発表、室内には「カップホルダー」も

Image:Porsche | ル・マン24時間レースの参戦パートナー、「ペンスキー」会長のためのワンオフプロジェクト | この関係性がなければ検討すらされることがない計画であっただろう 2025年の ...

続きを見る

参照:CARBUZZ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

->ポルシェ(Porsche)
-, , , , , , ,