| ポルシェ718ケイマンGTS4.0だと、1101万円のクルマを買うのに550万円も罰金が必要に |
さて、このところ何かと締め付けが厳しいハイパフォーマンスカーですが、フランスにおいて「環境に優しくないクルマを購入する人には多額の罰金を課す」法案が可決されそうだという報道。
もしこの法案が通れば、kmあたりのCO2排出量が225gのクルマを購入した場合、2021年には4万ユーロ(約500万円)、2022年にはこれが引き上げられて5万ユーロ(625万円)もの罰金をユーザーが支払うことになり、しかし唯一の救済措置は「罰金は車両価格の半分まで」に定められるということ。
ランボルギーニとフェラーリは全滅
なお、この225gがどんなものかということですが、基本的にスーパースポーツはもう全滅。
ランボルギーニだとウルスが325g、ウラカンEVOが332g、アヴェンタドールSが499gという数字で、フェラーリだとF8トリブートが292g、812スーパーファストが366gという数字(ローマとSF90ストラダーレはホモロゲーション取得中なので数字が出ていない)。
つまりフェラーリとランボルギーニについては、この法案が可決されるともれなく罰金対象となってしまい(SF90ストラダーレが唯一、これを逃れられる可能性がある)、つまり販売が激減してしまう可能性もありそうです。
ちょっと気になるのは「中古車」購入時で、これについても罰金対象となってしまうと中古市場も大きく崩れる可能性があり、この法案はスーパーカーメーカーにとって歓迎されざるものということになりますね。
なお、現在これの導入が報じられるのはフランスのみではあるものの、これがもし他のEU諸国に広がってしまうと「もうスーパースポーツを作れない」ということになり、フォルクスワーゲンが「ランボルギーニやシロンを売却する」という報道が出るのも無理はないかも、という感じです。
ポルシェは半数がアウト
そしてポルシェだと、4気筒エンジンを積む718ケイマンは186~180gなのでセーフ、しかし6気筒エンジンを積む718ケイマンGTS 4.0は246gなのでアウト。
つまり1101万円のクルマを購入するのに、2021年だと500万円、2022年だと(上限の車両価格の50%で)550万円もの罰金を支払うということになり、「そんなバカなっ・・・!」という感じ。
なおマカンは「GTS」の218gまでがセーフですが、それより上になるともう罰金対象。
911だとベースモデルの911カレラで215g、911カレラSだと227gなので基準値オーバー(なぜか911カレラSカブリオレは221gに収まっている)。
パナメーラ、カイエンだとベースモデルあたりまではOKですが「GTS」になると罰金対象です。
実際のところポルシェの売れ筋は上位グレードが多くを占めるとも言われるので、この様子だと1/3~半数程度が罰金の影響を受けるということになりそうです。
そしてポルシェのほか、ロールスロイス、アストンマーティン、ベントレーといったブランドのほか、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディにとっても「壊滅の危機」に陥るほどのインパクトを与えそう。
なんだかんだでハイブリッドを作らざるを得ない
これまではCAFE規制によって、自動車メーカーの「平均CO2排出量」が規制されており、自動車メーカーとしては「CO2排出量の高いモデルがあったとしても、エレクトリックカーやハイブリッドを投入しておけば、全体の平均値が下がる」ということでなんとか逃げ道があったものの(ポルシェは”タイカン”の投入で猶予を得た)、今回は平均値ではなく「そのクルマ単体」での罰金を消費者が支払うことになり、となるとそのクルマの販売台数は大きく下がることに。
そうなれば自動車メーカーは「そのクルマを作っても無駄」となるため、結果的にエレクトリックカーやハイブリッドカー以外を作ることはできないという事態にもなりそうです。
ちなみにハイブリッドの効果がどれくらいあるのかということですが、ポルシェ・カイエン(ガソリンエンジン)のCO2排出量が210gなのに対し、カイエンEハイブリッドは58g。
参考までにマツダ・ロードスター(1.5リッター)のCO2排出量は138gなので、(プラグイン)ハイブリッドの効果は非常に大きく、各メーカーが電動化を急ぐのも納得ですね。
なお、日本はこういった規制に対しては「後進国」であり、消費者の負担がイキナリ大きくなることはなさそうですが、IT後進国という指摘はさておいて、こういたっときばかりは「排ガス”後進国”で助かった」と思う次第です。