フェラーリ元CEOも参加していた中国・紅旗のハイパーカー「S9計画」。どうやらイタリアでの開発が頓挫し検察の捜査を受ける。このまま立ち消えになる可能性も　

｜　こうやって多くのハイパーカー計画が霧のように消えてゆく　｜

しかしこの紅旗S9だけは国家的プロジェクトであったために「安泰」だと思われたが

さて、中国の自動車メーカー、第一汽車は「紅旗」なる中国最高級ブランドを有していますが、この紅旗はその威信をかけた1,400馬力のハイパーカー「S9」を2019年に発表しています。

ただ、その発表時には「ピュアエレクトリックハイパーカー」としてリリースされたものの、のちにV8ツインターボ＋PHEVへとパワートレーンが変更されるなど開発に手間取っていることが報じられ、現在に至るまで一向に生産そして発売がなされない状態です。

一時は「イタリア生産」となる予定であったが

なお、こういった開発の難しさもあってか、紅旗はイタリアにてこのS9の開発と製造を行う計画を立ち上げ、親会社である第一汽車とエミリア・ロマーニャ地方のエンジニアリング設計会社、シルク（SILK）との合弁にて「SILK-FAW」を設立することに。

なぜエミリア・ロマーニャ地方なのかというと、ここはフェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、そしてパガーニそのほか新興スーパーカー/ハイパーカーメーカーが存在し、そのため（スーパーカー/ハイパーカーに対応した）サプライヤーや人材を確保しやすいこと。

そしてこのSILK-FAWでは元フェラーリCEOであるアメデオ・フェリーザ氏、さらにはBMWやランボルギーニの役員を獲得するなど豪華な布陣にて開発にのぞみ、さらに車両デザインにはワルター・デ・シルヴァ氏を起用しています。

ただし実際に開発拠点は設立されず

なお、このSILK-FAWの設立の報道があったのが2021年なのですが、その後しばらく音沙汰がなく、しかし直近にて報じられたのが「この合弁が解消された」というニュース。

2021年には実際に合弁会社が登記され、同年にはエミリア・ロマーニャ州の地元当局と、「高性能スーパーカーの生産施設と研究センターを建設すること」で合意していたものの、つい先日SILK-FAW」がエミリア・ロマーニャ州当局に書簡を送り、合意からの離脱を通告したことが明らかになっており、実際にエミリア・ロマーニャ州はSilk-FAWの決定を認めているという文書を発行しているとも報じられています。

さらにはイタリアの検察がSILK-FAWを調査しており、先週には税務署がイタリアの調達機関であるインビタリア（Invitalia）の役員を訪問したことも報道されていて、どうやらSILK-FAWの計画に資金が追いついておらず、（2022年8月5日に予定されていた）施設の建設用地の取得がなされないままに終わっていたもよう。

そして調査の対象となっているのは、このSILK-FAWが工場建設のため、エミリア・ロマーニャ州に3800万ユーロの公的資金の提供を求めていたためで、にもかかわらずプロジェクトが進んでいないことから詐欺の可能性が疑われているものと推測されます。

現時点ではこのS9計画がこのまま消えて無くなるのか、それとも中国側に引き取られ、紅旗が自力で開発と製造を行うのかどうかはわからないものの、すでに「V8エンジン＋3つのエレクトリックモーター」によって1,400馬力を発生するというコンセプトは目新しいものではなくなってしまっていて、もし実現したとしてもその存在感を発揮できずに終わってしまうのかもしれません。

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参照：Reuters