
車体底面に取り入れた空気を「逃さない」ようにすることが空力効果を高めるためには重要であるが
そうすると必ず出てくるのが「路面とのヒット」問題
スーパーカーのパフォーマンスを決定づけるエアロダイナミクスにおいて、車体底面の空気流(グラウンド・エフェクト)をいかに制御し、強力なダウンフォースを生み出すかは常に技術者たちにとっての大きな挑戦です。
最も効果的なのはサイドスカートを極限まで地面へ近づけることですが、低すぎれば路面の凹凸やスピードバンプ(段差)に接触してパーツが破損するだけでなく、わずかな隙間から空気が漏れてグリップが一瞬で消失するリスクを抱えます。
しかし今回報じられたフェラーリの最新特許は、このジレンマを「道具箱にある馴染みの工具」から着想を得たアイデアで見事に解決しようとしているもので、その斬新な空力メカニズムについて見てみましょう。
この記事の要約
- フェラーリが車体下部の空気流出を防ぎダウンフォースを劇的に高める「可動式可撓(かとう)性サイドスカート」の特許を出願
- 建築用「型取りゲージ(コンターゲージ)」から着想を得ており、複数の細長いエレメントが路面の凹凸や段差(スピードバンプ)に合わせて曲がり・回転して隙間を密閉
- 従来のカーボン製固形スカートのように破損するリスクを回避し、ドラッグを増やさずに公道やサーキットでのグラウンド・エフェクト効果を最大化

フェラーリ 可動式サイドスカート特許の概要
フェラーリが新たに出願した特許は、カーボンファイバーやアルミニウムといった従来の固定式ハードスカートの代わりに、柔軟に可動する構造を取り入れたグラウンド・エフェクト向上技術です。
この技術の核となっているのが、建築現場や金属加工で形状を写し取るために使われる「型取りゲージ(コンターゲージ)」の原理であり、型取りゲージが対象物の凹凸に合わせてピンが上下するように、フェラーリの特許では車体下部に「複数の細長いエレメント(Oblong elements)」を配置しています。
そしてこのエレメント群が路面のグラウンドラインを追従し、スピードバンプや縁石に乗り上げた際にも破損することなく、空気の流出を防ぐ「密閉状態」を維持し続ける、というわけですね。
特徴・スペック・機構の仕組み
特許図面によると、車体の裏側両サイドには4列に及ぶ帯状の地表追従用エレメントが備えられており、文字通り「車体裏面にコンターゲージが装着されている」状態で、最下部のエレメントは(コンターゲージ同様に)湾曲が可能となっており、路面状態に合わせてフレキシブルに変形します。
現代のスポーツタイヤによるメカニカルグリップには物理的な限界があり、大型リアウイングや可変フラップを追加するアプローチは空気抵抗(ドラッグ)の増加やデザインの美観を損なう要因となりえるものの、それに対し、車体底面のエアフローを閉じ込める本技術は、空気抵抗を増やさずに「純粋な追加グリップ」を手に入れることができる極めて効率的なアプローチです。
今回判明したフェラーリのエアロ特許の主要特徴のまとめは以下の通りで・・・。
| 項目 | 詳細・技術仕様 |
| 特許出願元 | フェラーリ(Ferrari) |
| 技術コンセプト | 型取りゲージ(コンターゲージ)着想の可動式グラウンドスカート |
| 構成要素 | 車体左右に配置された4列の細長エレメント(Oblong elements) |
| 動作機構 | 路面の突起や縁石に合わせて回転・屈曲するフレキシブル構造 |
| 主なメリット | サイドスカート破損の防止、路面変化時におけるダウンフォースの維持 |
| 空力効果 | ドラッグ(空気抵抗)を最小限に抑えたまま地表吸着効果を最大化 |
なお、この特許の概要としては「空力効果を最大化するには車両裏側を通る空気の流れを最適化したく、車体底面に入った空気を側面へと逃げないようにしたいが、そうすると定速走行時における段差問題が発生し、それに対処するために柔軟な素材と構造を取り入れる」ということなのだと思われます。
Image:Life in the FAST LANE.
競合比較・市場での位置付け
車体底面の負圧を利用して強力なダウンフォースを生み出すアプローチは、過去から現在に至るまでモータースポーツやハイパーカーで様々な試みがなされており・・・。。
| システム / メーカー | 吸気・グラウンドエフェクトの手法 | 特徴と課題 |
| 固定式カーボンスカート | 地面スレスレに固定パネルを配置 | 縁石や段差で即座に破損。路面との隙間からエアが漏れる弱点 |
| ファン・サクション機構(マクマートリー等) | 強力な電動ファンで車底の空気を直接吸い出す | 絶大なダウンフォースを生むが、重量・消費電力・ファン破損のリスク |
| フェラーリ 可撓性スカート | 路面形状に追従する可動式多層エレメント | ファン不要で構造がシンプル。公道走行での実用性と耐破損性を両立 |
平坦で滑らかなサーキット専用マシンであれば従来の硬質スカートでも対応可能ではありますが、ワインディングや公道を走るロードカーにおいては、路面の追従性と破損回避が不可欠となり、フェラーリの提案は、市販のハイパフォーマンスカーに最も適した現実的な解であるとも言えそうですね。
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補足情報
今回の特許からは、フェラーリが描く将来のロードカーへの技術応用が見えてくるかのようであり・・・。
- 公道モデルへの搭載可能性が高い:サーキット専用車やF1などのレースカーは規定や路面状態の良さからこうした複雑な追従機構を必要としない(あるいは導入できない)ケースが多く、よって山道(キャニオンロード)や市街地を走る最高峰ロードカー(次世代スペチアーレ等)への搭載を第一に想定していると考えられる
- ファン・サクション技術との併用可能性:ファンで車底の空気を強制排出するグラウンドエフェクト車と組み合わせることで、ファンの吸引力を逃がさない「完璧なサイドシール」としても機能するポテンシャルを秘めている※ここ最近で「ファン」はキワモノではなく現実的な技術として認識されまじめている

結論
フェラーリが出願した「型取りゲージ」着想の可動式サイドスカート特許は、地面との密閉性を保ちながらパーツの破損を防ぐという、長年空力エンジニアを悩ませてきた課題に対する実用的なソリューション。
美しいスタイリングを崩さず、ドラッグを増やさずに極上のコーナーリンググリップを手に入れるであろうこの技術が、将来の市販ハイパーカーに導入される日がやってくるのかもしれません。
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参照:CARBUZZ













