| ランボルギーニ・ミウラにはまだまだ「知られざる個体」が潜んでいるのかも |
このミウラは日本でおよそ30年過ごした後にヨーロッパへ
さて、ランボルギーニ・ミウラがスーパーカーの新しいベンチマークを確立したことに誰も異論はないと思いますが、ミウラを語る上で外せないのが「イオタ(Jota)」の存在。
このイオタはミウラと外観が似ているためにミウラの派生モデルだと捉えられることが多く、しかし本来の「イオタ」は1台のみが新規に製作され、ミウラとはメカニズム的な関連性が殆どないクルマです。
ランボルギーニ・イオタとは何だったのか
このランボルギーニ・イオタは、ランボルギーニのテストドライバーであったボブ・ウォレスがFIAの定めるツーリングカー・GTカー競技規定の附則J項に適合するように製作したレーシングカーであり、この附則(アペンディックス)J項の「J」をスペイン語風に発音したものにアルファベットを当てて「Jota(イオタ)」と命名しています。
このイオタの製造目的は「ミウラの改良のため」だったそうですが、それはあくまでも表向きであり、(ランボルギーニの)社是としてモータースポーツ活動を行ってはならぬとされていたことに抵触しないようにミウラ風の外観を持たせ、色々と名目をつけながら「こっそりレーシングカーを開発していた」というのが実際であったと言われます(ボブ・ウォレスの直接のコメントは、ジャンパオロ・ダラーラ、マルチェロ・ガンディーニ、パオロ・スタンツァーニとは異なってあまり残ってない)。
ただ、このイオタは顧客へと売却された後、1972年にクラッシュそして全焼したために車両が残っておらず(エンジンは別のミウラに移植されている)、よってもともとのイオタは「すでにこの世に存在しない」ということに。
ただ、このイオタの存在はランボルギーニの顧客の間で広く知られていて、「イオタが欲しい」という人々があとをたたず、自身の持つミウラをランボルギーニに持ち込んでイオタ仕様にしたり、新しくイオタ仕様のミウラを製造してもらったりという例が十数台あるそうですが、これらは一般に(仕様によって)「SVR」「SVJ」と呼ばれることが多いようです(オーナーが自ら”イオタ”の名称を付与している例もあるが、ランボルギーニとしてはイオタの名を使用していないようだ)。
そして今回オークションに登場するのはシャシーナンバー4280の「イオタ仕様」ですが、もともとは1969年10月23日にミウラSとして生産されています。
まずはチェリー王ステファノ・ファッブリに納車され、その後ミツワ自動車を通じて日本のオーナーへと届けられていて、その後には神戸、千葉、福岡のオーナーの手に渡り、1980年代にはSVスペックのエンジン(#30633)へと換装された後、2006年から2013年にかけ、日本にてイオタ仕様へと改造がなされることに。
その際にボディカラーはこのオレンジ(アランチョ・ミウラのようなカラー)へと変更され、その後2014年にオークションにかけられてスウェーデンのオーナーの元へ、そしてその後には現在のオーナーが住むイギリスへと移っています。
このミウラ「イオタ仕様」はかなりオリジナルのイオタに近い
このイオタ仕様のミウラは日本でスペシャリストによって改装されただけあって他の個体に比較するとかなりオリジナルのイオタに近く、もちろんヘッドライトは固定式に変更され、フロントバンパーの構造もミウラ的(ただしリップは取り付けられていない)。
給油口も本来の位置から移動済み。
ホイールはレーシングカー同様のセンターロックを採用しています。
「リベット」もまたオリジナルのイオタを意識した仕様ですね。
リアフェンダーは大きく拡大され・・・。
テールランプはミウラSVから。
そして驚くべきはインテリアで、カーペットが剥がされ、ダッシュボードも完全に作り変えられています。
センタートンネルもイオタ仕様となっており・・・。
こちらもリベット打ち。
ドアパネルも非常に簡素な仕上げとなり・・・。
シートもイオタ仕様。
実際のイオタのスイッチパネルがどんなものかはわからないのですが、おそらくはこれもイオタを再現しているのだと思われます。
このミウラにつき、2019年11月にランボルギーニ・バーミンガムで油脂類の交換を行い、2022年11月に同センターにて整備を受け、その総費用は7,500ポンドを超えた、と紹介されています(ランボルギーニ・バーミンガムからの請求書とビデオコンディションレポートが保管されている)。
ランボルギーニによって公式にイオタスペックへと改装されたわけではなく、よって改造車扱いになるとは思いますが、限りなくイオタに近い仕様を持つだけあって、歴史的な価値は非常に高いと考えて良さそうですね。
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