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売上「半減」のマセラティ。親会社は「マーケティング」手法を非難するもボクはその原因はもっと「奥深い」ところにあると考える。なぜこういった状況に陥ったのか

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| マセラティ不振の原因は「その方向性を明確にできなかった」トップ、そして親会社の人事にあると考える |

この数年でマセラティの方向性が右往左往したため、その方向性が顧客に明確に伝わっていない状態なのかもしれない

さて、マセラティの親会社、ステランティスにてCEOを務めるカルロス・タバレス氏がマセラティの不調について「売上が低迷しているのなら、それはマーケティングの問題だ」という非難を行っていますが、実際のところ(主力である)北米市場において今年1月から6月の間にわずか6,500台しか販売できておらず、これは前年比で50%の減少です。

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ステランティスCEOが傘下のマセラティを異例の非難。「販売台数が半分以下になったのは適切に製品の魅力をアピールせず、顧客管理を怠ったからである」

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マセラティの問題は「本当にマーケティング」なのか?

ただしマセラティの販売減少については「単にマーケティングの問題ではない」という指摘も多く、実際のところマセラティはこれまでにも比較的多くの宣伝広告費を投じています。

まず歴史を振り返ると、マセラティは顧客獲得のために惜しみなく支出しており、2014年には「Now, We Strike」と題した(ギブリ拡販のための)スポット広告を行うべくスーパーボウルの広告枠に1,100万ドルを投じ、さらに500 万ドルの広告費が同時に(他の媒体にも)投じられ、この機会のみで合計1,600万ドルが費やされています。※当時マセラティは”フィアット・クライスラー”に属していたが、同グループは2010年から2015年の間、全ブランドのスーパーボウル広告に約9000万ドルを投じている

一方、その後PSA(プジョー・シトロエン)との合併によって”ステランティス”となったのち、このスーパーボウルへの費用投下を減少させ、2024年に至っては「一切費用をかけていない」のも事実ではあるものの、これはスーパーボウル自体がもはや自動車の広告媒体として魅力的ではなくなったためで、実際に(お膝元の)フォードとGMもスーパーボウルにかけた広告費が「ゼロ」。

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ただ、マセラティが広告にお金をかけなくなったかというとそうではなく、マセラティは2017年にアクセンチュア社(当時、オムニコムや電通などの大手に次ぐ、世界で6番目に大きな広告代理店であった)と契約し、その後アクセンチュアは同業のドロガ5を買収し、このドロガ5が社名を変更して「グローバルクリエイティブエージェンシー」となり、マセラティの今後のすべての広告スポットを担当することとなったわけですね。

そしてこの体制のもと、マセラティはMC20やグレカーレなどの新型車両を宣伝する広告やマーケティングキャンペーンを数十件展開していて、さらには2021年にサッカー界のスーパースター、デビッド・ベッカムを「ブランドグローバルアンバサダー」に任命するなど巨額を投じた行動も取っています。

ベッカムがブランドの顔となったことで、マセラティはこのスーパースターを前面に出した広告スポットを数十件制作したわけですが(いずれもかなりお金がかかっている)、加えて「フオーリ・セリエ DB エッセンシャルズ」なるベッカム仕様をMC20とグレカーレに設定することに。

マセラティがデビッド・ベッカムとのコラボによる新シリーズ「フオーリ・セリエ DB エッセンシャルズ」発表!MC20とグレカーレにて選択が可能に
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宣伝広告費を投じれば「クルマが売れる」?

つまるところマセラティは「宣伝広告にかなりの費用」を投じていて、「プロモーションを怠っているわけではなく」、(マセラティから発表がないので)具体的な数字は入手困難ではあるものの、広告関連の調査会社、ADエイジによれば「2021年にマセラティは販売した車両1台あたり推定77ドル(現在の為替レートにて11,000円くらい)を広告に費やした」。※ただしレクサスはその12倍程度、1台あたり956ドル(14万円くらい)を宣伝広告費として計上している

参考までに、マセラティと同郷のフェラーリは(いわゆる)広告にほとんどお金をかけないことで知られており、2023年の年次報告書では以下のように述べています。

「当社の顧客は、当社のブランドや技術とともに、当社のビジネスのバックボーンです。当社は、一般的な広告を通じて当社のブランドや車を宣伝することはありません。当社の主要なブランドマーケティングおよびプロモーション活動には、2つの主要な目標があります。より一般的には、F1レースは、従来の広告活動に頼ることなく、当社のブランドと技術を世界中の視聴者に宣伝および販売することを可能にします。」

それでもフェラーリの納車台数は2024年に入ってから増加し続け、同社は今年第2四半期に3,484台の車を納車し、これは昨年より2.7%の増加率(フェラーリは成長率をコントロールしており、この数字は増産を一定範囲内に抑えての数字である)。

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こういった例を見ると、「広告費を投じればそれでいい」というわけではなく、「正しい客層に、正しい情報(魅力)を届ける必要」があり、たとえばマセラティのクルマは非常に高額なので、デビッド・ベッカムを起用して認知度を拡大し、そしてその広告を見た普通の人が「マセラティを買おう」とはならないのだと思われます(その金額的に、ポンと買えるものではない)。

逆に普及価格帯のクルマであり、「移動手段」として購入されるブランドの車であれば、認知機会を拡大することが売上の拡大に直結することも考えられますが、マセラティの場合はそうではなく、よってマセラティが行うべきは「マセラティを購入する経済力を持つ人々に対し、(ポルシェでもフェラーリでもベントレーでもなく)マセラティを購入するための理由を伝え、実際に購入するという行動を起こしてもらう」ことじゃないかとも考えるわけですね。

いったいマセラティの何が問題なのか

実際のところ、「マセラティを購入すべき理由」「マセラティでないとダメな理由」を現在のマセラティから見出すことはことは難しく、スタイリング、豪華さ、パフォーマンス、持続可能性すべてにおいてマセラティのクルマが「他社製品で代替可能な」存在となってしまったことが問題ではないかとぼくは考えていて(これはマセラティだけの問題ではなく、ジャガーも同様である)、マーケティング以前に「商品企画」そのものに問題があったのではないかとも考えられます。

なお、この要因としては「マセラティの体制が安定しなかったこと」にもあると考えられ、この数年、マセラティは「セクシーなGTブランド」「電動スポーツカーブランド」など様々な方向性へとそのブランディングをたびたび変化させており、よって製品のコンセプト自体もきっちり定まらなかったんじゃないかと思われ(アルフィエーリについても状況が二転三転している)、こういった曖昧さや混乱が顧客に伝わってしまったのかもしれません。

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この逆の例としては(同じステランティス傘下の)アルファロメオがあり、それまでの(セルジオ・マルキオンヘ氏を失った後の)同社は明確な方向性を打ち出せず、しかしジャン・フィリップ・インパラート氏がCEOに就任したのち、様々な方面において明確なコンセプトそして考え方が打ち出され、明確な「買う理由」が存在するブランドへと変貌を遂げつつあるようにも思います(同氏は明確にそれまでのアルファロメオの弱点を指摘してみせた)。

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現在マセラティは(ステランティスが否定するものの)身売りの話も出ており、存続の危機も囁かれる状況ではありますが、アルファロメオ、そしてほかの(再生した)自動車ブランドの例を見る限り、マセラティが息を吹き返すにはトップとデザイナーをごっそり入れ替えるしかないのかもしれません。

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参照:Motor1

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