>VW(フォルクスワーゲン/Volkswagen)

学生がコンセプトカーを考案→VW公式が絶賛、デザイン最高責任者が動き「実際にスケールモデルが製作」される。ぜひ市販化も期待したい

インターンが考案したフォルクスワーゲンのコンセプトカー「ID.DIN T14」

Image:andymindtofficial(Instagram)

| インターン生が描いた幻のEVスーパーカー「ID.DIN T14」が実物スケールモデル化 |

ドアミラー代わりのカメラは「ライカ製」

フォルクスワーゲン(VW)といえば、ゴルフやポロ、SUVのティグアンといった、実用的で堅実なファミリーカーを作るメーカーというイメージが強いかもしれません。

グループ内にはポルシェやランボルギーニ、ブガッティといった名だたるスーパーカーブランドを抱えているものの、VWブランド単体としては、1990年代後半に発表された幻の「W12(ナルド)」プロトタイプを最後に、市販スーパーカー市場へ参入した歴史はなく、しかし2026年6月、そんなVWの未来を揺るがすような1台のハイパースポーツコンセプトが突如として世界を驚かせることに。

その名は『VW ID.DIN T14』。なんと、VWのデザイン部門に在籍する一人のインターン生が研修プロジェクトとして描き上げたEVスーパーカーのスタディ(習作)で、しかしあまりの出来栄えの素晴らしさに、フォルクスワーゲングループ全体のデザイン最高責任者であるアンドレス・ミント氏が自身の公式Instagramで大絶賛し、図面からリアルな実物スケールモデルまで製作されるという異例の事態に発展したことで話題を呼んでいます。

市販化の予定こそないものの、次世代の若きクリエイターが「数学的アプローチ」と「レーシング直系の機能美」を融合させて生み出した、凶悪なまでに美しい謎のスーパーカーについてここで見てみましょう。

この記事の要約(30秒チェック)

  • インターンの奇跡: デザインインターン生のファビアン・ライツ氏が研修プログラムの一環として「ID.DIN T14」を製作。
  • デザインボスが絶賛: VWグループのデザイン統括トップ、アンドレス・ミント氏が公式SNSで公開し、「大胆で強烈なキャラクター」と太鼓判。
  • 異例の立体化: 通常のスケッチや3Dレンダリングに留まらず、VW公式が実物の「スケールモデル(立体模型)」を製作。
  • 映画の主役級ルックス: ル・マン24時間レースのプロトタイプカーと、映画『バットマン』のバットモービルを融合させたような、ダークでアグレッシブなスタイリング。
  • ライカ製カメラミラー: サイドミラーを廃止し、フェンダーからポップアップする「Leica(ライカ)」製カメラシステムを想定。

デザインボスの心を動かした「エモーショナルに頼らない数学的デザイン」

このプロジェクトを自身のSNSで紹介したアンドレス・ミント氏は、この「ID.DIN T14」を単に「格好いい絵」として評価したわけではなく、ミント氏はデザイナーのファビアン・ライツ(Fabian Reitz)氏が感情的・アート的な表現に逃げることなく、「精密さ、構造、そして機能性」をデザインの出発点にするという極めてロジカルなアプローチをとった点を高く評価し、実際にミント氏は投稿の中で次のように述べています。

「ファビアンは、精密さ、構造、そして機能性が、いかにして独特の自動車デザインスタディの出発点になり得るかを探求しました。その結果、明確なプロポーション、極限まで削ぎ落とされた面構成、そして力強いグラフィックキャラクターを持つ、大胆なコンセプトが誕生したのです。これらは技術的な図面やグリッド、機能的なディテールの視覚的世界からインスピレーションを得ています」

近年、中国メーカーの台頭やEVシフトの中において、VWの一部の市販車デザインは「保守的で個性に欠ける」と批評家から指摘されることも少なくはないという現実も。

そんな中、今回のインターンシッププロジェクトは、人間のピュアな創造性と次世代のデザイナーたちが「ID.」シリーズという電動化ラインナップの未来をどれほどエキサイティングに捉えているかを示す、生きた証明となったわけですね。

「VW ID.DIN T14」エクステリア&想定スペック

本車両は市販を前提としない純粋な「デザインスタディ(意匠研究)」ですが、そのディテールにはリアルなレーシングテクノロジーと、未来のテクノロジーが緻密に織り込まれています。

項目コンセプトモデル「ID.DIN T14」の特徴
車両コンセプト次世代の電動ハイパーGT / レーシングスタディ
デザイナーファビアン・ライツ(Fabian Reitz / VWデザインインターン)
フロントデザインロングノーズを思わせる彫刻的な造形と、デジタルな円弧状LEDライトの融合
キャビン( Glashaus )戦闘機やル・マンのプロトタイプ(LMH)を彷彿とさせる、ラップアラウンド型キャノピーウインドウ
サイドミラー非搭載(フロントフェンダーからポップアップするLeica(ライカ)製カメラを想定)
エアロダイナミクスフロントフェンダー上部の大型大型ベント / 超巨大リアディフューザー / エアロカバー付き大径ホイール
スタイリングの特徴スラブサイド(平坦な側面)と極端に低い全高による、ダークで攻撃的なシルエット

ル・マンの機能美と「バットモービル」のような凶悪さの融合

ID.DIN T14をじっくり観察すると、様々なモータースポーツや名車のオマージュが数学的な美しさの中に溶け込んでいることが分かります。

もっとも目を引くのはヘルメットのシールドのようにコックピットをぐるりと囲むウインドスクリーン(ラップアラウンドウインドウ)で、これは現代のル・マン24時間レースを走るハイパーカー(ポルシェ963など)、そしてミッションX、さらにはミッションRからダイレクトに影響を受けたプロポーションです。

ポルシェのコンセプトカー、ミッションRのエクステリア(フロント)

Image:Porsche

一方で、塊感のあるフラットなサイドパネルや、極端に細く絞られたキャビン(グリーンハウス)、そしてリヤセクションはどこか映画『バットマン』に登場するバットモービルや、悪役のペンギンが乗っていそうな「ダークで不気味な魅力を放っていて、またアウディが提示したコンセプトカー「Concept C」や「Nuvolari(ヌヴォラーリ)」の面影を感じるという海外メディアの指摘もあり、VWグループの血統をしっかりと受け継いでいる点も興味深い部分ですね。

空力処理も徹底しており、フロントフェンダーのトップにはホイールハウス内の圧力を抜くための大きなルーバー(ベント)が刻まれ、リアセクションにはレーシングカーそのものと言える無骨な超大型ディフューザーが鎮座しています。

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なぜ今、VWはあえて「インターンの作品」を公式発表したのか?

このニュースの本質は、「インターン生が凄い絵を描いた」ということ以上に、「それをVWのトップがわざわざ公式に立体化し、世界へ発信した」というメーカー側の意図にあり・・・。

  • 電動化(EV)へのエモーショナルな繋ぎ込み:現在、VWは「ID.3」や「ID.4」といったBEV(電気自動車)を展開しているものの、それらは効率や実用性を最優先した結果、どうしても真面目で大人しいデザインになってしまいがち。しかし、パイクスピークのEV最速記録を持つモンスターレーサー「ID.R」の系譜を感じさせるこのようなスーパーカーを提示することで「ID.シリーズは、ここまでエキサイティングになれるポテンシャルを秘めている」というメッセージを世界に送りたかったと考えられる
  • AIデザインに対する「人間の創造性」の誇示:昨今の自動車業界では、AI(人工知能)を使ったデザイン生成がトレンドとなっていて、しかし、あえて人間の若いインターン生がグリッド(方眼)と図面という泥臭くも精密な計算から生み出したこの造形をトップ自らが称賛したことは、VWデザインセンターにおける「人間のクリエイティビティへのリスペクトと、未来の才能の育成」をアピールする強力なブランディングとなっている

結論

フォルクスワーゲン「ID.DIN T14」は明日すぐにディーラーに並ぶような市販化を前提としたモデルではなく、しかし一人の学生の熱狂的なアイデアが、世界最大の自動車メーカーのトップの心を動かし、実物のスケールモデルとして現実にカタチにさせたという事実こそが、このマシンの持つ最大の価値なのかもしれません。

ゴルフGTIやゴルフRといったホットハッチの領域を超え、もしフォルクスワーゲンが本気でピュア電動スーパーカーを作ったら。そんなぼくらきの妄想をここまで高いクオリティで具現化してくれたファビアン氏の才能に拍手を送りたいというのが偽らざる心境でもあり、このID.DIN T14に宿るアグレッシブなデザインのエッセンスが「ぼくらが将来ストリートで目にする次世代のVW車に」1ミリでも受け継がれることを切に願わずにはいられないところです。

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参照:andymindtofficial(Instagram), Motor1

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