| マツダがプレミアムカーメーカーへと移行しようとしているのは間違いない。問題は成功するかどうかだ |
IT mediaにて、マツダ副社長、藤原清志氏に対する非常に興味深いインタビューが掲載に。
ここ最近のマツダは「いいクルマを発表しながらも、価格が高い」「マツダなのにこの価格?」「え?値引きゼロ?マツダなのに?」といった話が聞かれ、案の定「販売が苦しい」「利益がヤバい」という報道も。
そこで今回のインタビューではそういった状況について、IT mediaがズバリ直球にてマツダ副社長にインタビューを行っているわけですね。
マツダのクルマが「高くなった」本当の理由はこれだ
まずはマツダのクルマが高くなった件について。
マツダはここ最近大きく値上げをしたばかりか値引きを行わなくなり、文中の表現を借りれば「マツダは身の程知らずにクルマの値段を高くして、ユーザーに総スカンを食らった結果、クルマが売れなくてもう終わり 」。
インタビュワーはマツダの社長に対し、これについてどう思うかを直撃していますが、「なるほどな」と思う回答が返ってきています。
かんたんに言うと、値上げしたかったわけではなく、CASE対応によってやむなくマツダ車全体での価格が上がってしまったということ。
CASEとは「コネクテッド、自動運転、シェアリング・ サービス、電動化」を指しますが、これに対応しようと思うと、車両価格が20万円くらい上がってしまう、とのこと。
ただ、そういった部分で車両価格が上がってしまたっとしても消費者に直接の利益がない以上は納得できないので、消費者に分かる形でクルマの価値を上げた、と語っています。
つまり「この性能・機能だったら、この価格でも納得できる(仕方ない)」と消費者に感じて欲しいと思い、MAZDA3やCX-30のような「新世代商品(第7世代)」では静粛性向上、オーディオ音質の向上、インテリアの質感向上を行い、高いなりの(高さが理解できる)クルマづくりを行っている、ということですね。
ただ、消費者にとっては、まだまだその価格高騰分を帳消しにできるほどの「良さ」が体感できないレベルにある(クルマ、ユーザー双方とも)、もしくは新世代マツダに乗ったことがない人が価格だけを見て「高い」と言っているのかもしれません。
つまりは消費者が求める「価格上昇の対価」をマツダが提供できていない、理解させることができていないということなのかもしれず、そもそも現代のクルマはマツダに限らず「消費者が不要と思う機能」を盛り込んだがために価格が高くなってしまっている、とも考えられます。
マツダ車は売れていないのか
そして記事ではマツダの利益について言及。
実際のところ売上高、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期純利益、売上高営業利益率といった指標すべてが悪化していますが、その内容をひとつひとつ見ると「そんなに悪くない」とのこと。
どういうことかというと、売上高=販売が減っているほどに利益(額)は減っていなくて、むしろ効率が上がっている模様。
販売台数が減ったのと同じ比率で売上高が減っているわけではなく、売上高は「(販売台数減少ほど)そんなに減っておらず」、つまり1台あたりの販売単価が向上している、ということを意味します。
加えて、販売台数に比べると、営業利益は「販売台数の半分の比率しか減っていない」こともわかり、つまりこれは1台あたりの利益が倍になったと考えられます。
これは単純に車両そのものの利益が高くなったというわけではなく、値引きが減ったので手元に残るお金が増えたということも意味します。
要は「販売台数は減ったが、販売効率=会社の中身は健全になった」ということですね。
ただし、それでも利益が減ってしまったのは事実であり、これは「為替差損」も大きいと記事ではコメント。
ただ、為替リスクを想定できなかったこと、対策を事前に講じられなかったことは経営判断のミスとも言えるので、これは擁護できないところかもしれません(しかもそんなに大きく為替は動いてない)。
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マツダはこれからどうなるのか
マツダの販売効率は上がったとはいえど、「効率」でメシは食えず、絶対的な利益を増やす必要があるのは事実。
そして利益のもととなる「台数」が予定よりも伸びなかった時点で収入は減っていて、ここをなんとかせねばマツダの成長はない、と言えそう。
自動車業界において、効率重視で業績を回復した例としては「日産」がありますが、これはお金のかかるニューモデルを開発せず、開発や販売にかかるコストを切りまくった(というかカルロス・ゴーンの)という手法であり、その反動として「売るものがなく」、現在はジリ貧といった状況。
マツダの場合は「お金」よりも「クルマ」が好きな会社だと認識しているので、日産のようにはならないと考えていますが、マツダの考える「消費者にとってのメリット」が当事者である消費者に受け入れられなかったのはかなり危ないんじゃないかと思います。
ただ、前年度のように、販売台数が伸びなかったときに”禁じ手”の値引きを使って販売を伸ばそうとしたことに比較すると、マツダは今年度は値引きを極力行わず、その結果販売台数が減ったとしても商品力で勝負しようとしており、そこは大きく評価できるところ。
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加えて(トヨタとの提携による)現地生産や新世代商品の開発など、ここ最近のマツダは「信念」を持って未来のために行動しているように見え、目先の利益のためには信念を曲げるようなことはしないという強い意志も感じられます。
よって、いかに苦しくとも、このまま信念に従った製品を開発し、その内容を正しく消費者に伝え、「高くても買ってもらえる」クルマづくりをしてゆけば、かならずや道は開ける、とも考えています(しかしながら、フォルクスワーゲンですら未だプレミアムカーメーカーに上級移行できないままなので、それは容易なことではない)。
VIA:IT media